※ 毎朝、5分以内で読める書籍の紹介記事を公開します。
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
目次
まえがき
「からくり」とは仕組み、原理のことです。江戸時代に数多く作られた精巧な仕掛けや人形のことをいったりもします。西欧ではこうした人形のことをオートマトンと呼ぶようになり、今では自動で回帰処理をするシステムのことをオートマトンというのです。
何かを知りたいと好奇心を持った結果、「からくり」は進化しました。
本書の目的は、進化を巡る謎解きのストーリーとその成果を読者に楽しんでいただくこと、科学のファンを世の中に増やすことです。
書籍情報
進化のからくり
現代のダーウィンたちの物語
第1刷 2020年2月13日
発行者 渡瀬昌彦
発行 (株)講談社
ISBN9784065187210
総ページ数 264p
千葉聡
東北大学 東北アジア研究センター 基礎研究部門 地域生態系研究分野 教授。
生命の多様さの謎の探求と生命価値を維持するために研究を続けています。
講談社 ブルーバックス
ひとりぼっちのジェレミー
Image by Matthias Piegeler from Pixabay
「孤独な左巻きのカタツムリが、愛と遺伝学のため、お相手を探しています」
恋人を募集しているのは、ジェレミーと名付けられた直径3センチほどの茶色のカタツムリです。食用になるエスカルゴの一種、ヒメリンゴマイマイでした。
ヒメリンゴマイマイは普通右巻きですが、100万匹に1匹の確率で左巻きが見つかります。ジェレミーはそんなレアなカタツムリなのです。
しかし、ジェレミーはすべて左右逆転しています。誰とも交尾ができず、子どもができません。左巻きの系統が確立できれば、それを使って殻の巻き方が決まる遺伝的な仕組みを解明できるのです。
テレビ、SNSなどの手段を使って恋人を募集し、一躍話題になりました。そして2週間後に、もう1匹のヒメリンゴマイマイが届けられたのです。レフティーと名付けられ、様子を観察したがツガイにはなりません。もう1匹トメウと名付けられたヒメリンゴマイマイも届きましたが、うまくいきません。
6か月が経った頃、主要メディアが恋のゆくえを報道しました。
「ジェレミーは振られてしまいました。そのかわり、トメウとレフティがカップルとなり、その結果170匹の子どもが生まれたのです。生まれた子供たちはすべて右巻で生まれています。」
ジェレミーを応援する人にとっては、落胆するニュースだったでしょう。
トメウ、レフティたちの母親の持つ遺伝子を反映するため、生まれた子どもたちの次の世代で多くの左巻が得られるようです。
ギレスピー教授の講義
UnsplashのGabriel Aguirreが撮影した写真
「ダーウィンは19世紀、ガラパゴス諸島の生物の観測から、進化のヒントを得ました」
「同時期に進化の考えにたどりついたのは、アルフレッド・ウォレスです。東南アジアのマレー諸島からヒントを得ています」
「島はアイデアの源です。ガラパゴス諸島とマレー諸島ではタイプが違います。火山島と、大陸の一部が分離してできた島です。そこで起きる進化も性質が違います」
「島では移住率と絶滅率のバランスで種数が決まります。滅多に移住が起きない島には、種数が減るのです。その代わりに種分化が進みます」
「ダーウィンの島では、ひとつの祖先種から、姿形や生き方を異にするたくさんの種が分かれて進化します。この現象を適応放散と呼ぶのです」
仕事と遊び
ポスドクーアンガスが私の研究室の一員になりました。
小笠原の調査地図を眺めて空白の地域を見つけて、アンガスは闘志に火をつけいた。フィールドワークに期待をしていませんでしたが、彼は中米の熱帯雨林で豊富なフィールドワークを経験していることがわかったのです。
「東崎という場所は、まだ誰も調査したことがない」こんなことを言わなければと後悔しました。
危険だから調べてないと主張してみたが、ダメだったのです。
明け方前に宿を出た私たちは3時間かけて島の脊梁山脈を超え、東崎の付け根に達していました。草木に崖という道を進み『ロード・オブ・ザ・リング』のような非現実的な光景です。岩場を軽快に進むアンガスを追って、必死な思いで前進していきました。滑落の危険があり、一定の時間が経過すると彼は冷静に撤退を選択しました。
撤退後、3日間からだを休めた我々は、再挑戦しました。撤退した場所まで1時間ほどで辿りつき、さらに奥へと進んでいきます。体に絡みつくような凶器とかした藪の中を歩き、どれくらいの時間がたっただろうか、突然閉塞感が消えて開放的になり、ついに目的地に着いたのです。
未発見地では驚きの連続です。百年前に発見されて以来、一度もみつかったことのないカドエンザガイ、絶滅したと信じられていたヨシワラヤマキサゴを見つけました。他にも外来種のせいで姿を消したとされていた種が群れています。そこはまさにロストワールドでした。
フィールドワークは、アンガスにとって楽しみを得るバケーションだと思いました。調査を楽しむ者の元に発見は訪れるのです。
仕事なのだから楽しんではいけないと心に蓋をすることはないかもしれません。楽しんでよいし、楽しむべきなのです。
感想
サイト管理人
物語もあり、生物学的なニッチな情報もありで、めちゃめちゃ面白かったです。
貝とカタツムリに寄りすぎな気もしないでもありませんが、科学や好奇心の大切さを知るのには十分だと思います。
人間模様と科学の不思議を合わせたら、こんなにも面白いものができるようです。
自分の興味があるものをイキイキと書いている気がします。講義で貝の生態系について授業されたら、本人のやる気とは裏腹に物凄く退屈だと思うのですが、本という媒介を通せば我々にも伝わることがありました。
夏休みの課題図書がつまらないものなのだとしたら、自由作品でこれを読書感想文の土台にするのもありです。科学的なことも書けるので、何枚か余裕で書けるでしょう。
下にリンクを貼っておきますので、本書の購入を検討してみて下さい。
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