ヨーロッパの地政学/著者:ジャン=シルヴェストル・モングルニエ

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書籍情報

タイトル

ヨーロッパの地政学 安全保障の今

発刊 2024年7月5日

ISBN 978-4-560-51065-0

総ページ数 167p

書評サイト 読書メーター人文会

出版社リンク 白水社

著者

ジャン=シルヴェストル・モングルニエ

地政学博士、歴史・地理学教授資格を持つ。
「トーマス・モア研究所」研究主任。

出版

白水社

もくじ

  • 主要略語表
  • 序章
  • 第一章 ヨーロッパの輪郭とアイデンティティ
    • I 地政史学と長い時間
    • II アジアに向かって開かれた大陸
    • III 精神的姿としてのヨーロッパ
  • 第二章 グローバル・アクターとしてのEUの限界
    • I 成立したヨーロッパ―政治的野心と大市場の間
    • II 汎ヨーロッパ連邦であっても、「ヨーロッパ=強国」ではない
    • III 防衛共同体としてのヨーロッパとヨーロッパの防衛とは違う
  • 第三章 挑戦、脅威、応答―パワーのさまざまな尺度
    • I ヨーロッパにのしかかる脅威
    • II ヨーロッパに不利な状況と長期的な傾向
    • III 超人が跋扈する世界における可変翼のヨーロッパ
  • 結論 ヨーロッパよ、あなたはどこへ行くのか
  • 欧州政治共同体の展望
  • 関連年表
  • 訳者あとがき

書籍紹介

 ヨーロッパの安全保障環境を深く掘り下げ、現代のヨーロッパが直面する脅威とその対処法を探求する一冊です。

 ヨーロッパの地政学的背景を理解する上で重要な視点を提供します。モングルニエ氏は、ヨーロッパの歴史的なアイデンティティ、冷戦後の変化、そして現在の安全保障上の課題を詳細に分析しています。特に注目すべきは、EUの限界とそのグローバルな役割についての考察です。EUが単一の強国として機能するかどうか、またその防衛戦略がどのように形成されているかについて、鋭い視点を提供しています。

ヨーロッパの安全保障の現状

  • 多国間主義とNATOの役割
    • モングルニエ氏は、ヨーロッパが一つの主権国家として統一されることは難しいと指摘し、NATOの重要性を強調します。NATOはヨーロッパの安全保障において不可欠な存在であり、特にロシアや中東からの脅威に対抗するための鍵となります。
  • EU内部の安全保障
    • 内部からの脅威も無視できません。テロリズム、サイバー攻撃、そして移民問題がEU各国に新たな安全保障の課題をもたらしています。これらの問題は、EUの連帯と協力の試金石ともなっています。
  • 地政学的変動
    • ウクライナ情勢や中東の不安定さ、そして中国の台頭は、ヨーロッパの安全保障環境を大きく揺るがしています。モングルニエ氏は、これらの外部要因がヨーロッパの政策決定にどのように影響を与えているかを詳述します。

複雑なヨーロッパの安全保障を理解するために

 ヨーロッパが直面する複雑な安全保障環境を理解することができます。モングルニエ氏の分析は、単に現在の状況を描写するだけでなく、ヨーロッパが未来に向けてどのような戦略を取るべきかについても示唆を与えています。この本は、ヨーロッパの政治、歴史、そして安全保障に興味がある読者にとって必読の書と言えるでしょう。

試し読み

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

大陸主義と海の地政学

白色地図専門店より

 第二次大戦後20年間で、ヨーロッパの植民地列強は、多くの領土と海外で獲得した拠点から後退しました。この時代の言語や文化遺産が残り、政治学的意味を持つようになっています。

 フランス領ギアナのクールーではヨーロッパ航空宇宙産業が脈打っています。勢力バランスがアジアに傾きつつあるので、インド洋や太平洋に散らばるフランス領土は、その排他的経済水域(EEZ)の存在と相まって重要であることが想起されます。インド洋では、イギリスの島であるディエゴ・ガルシアが、アメリカの戦略体勢にとって主要な地位を占める軍事基地を受け入れています。

 ヨーロッパの外縁部を描写するとき、グリーンランドのケースに注目できます。200万平方キロメートルを超える面積を持った「緑の大地」は、フランスの4倍の大きさです。デンマークはNATOのメンバーであり、天然資源に恵まれているため、グリーンランドの土地は主要な戦略的切り札となっています。チェーレの町はアメリカ空軍の基地を受け入れ、NATOの迎撃ミサイル防御体制に組み込まれています。

 グリーンランド領海内での炭化水素の埋蔵量のレベルは明確ではありませんが、非常に大きいとされています。そのため、将来の独立を見越して中国がグリーンランドに関心を示し、ヌークとイルリサットの両空港を財政的に掌握しようとした(2018年)ことも理解できます。

 なぜ全米国大統領のドナルド・トランプがこの領土の買収を提案したのかは想像がつくでしょう。

競合する地政学的計画

 もしアメリカがその重荷を下ろしたとすれば、西欧の覇権は終わりを告げることになるでしょう。ヨーロッパの分裂が国際社会に及ぼす影響の大きさは計り知れません。

 ヨーロッパを強国とする曖昧な計画で、NATOを通じた大西洋連帯を置き換えようとするのは危険です。

 NATOとEUの間の歴史的、そして誕生時の絆を忘れてはなりません。長期的な地政学的リスクを否定することはできず、NATOとその加盟国と共に、東の国境地帯の防衛と抑止力を強化し続ける必要があります。

 中国のシルクロード計画(一帯一路)では、ヨーロッパを「アジア大陸の小さな岬」と軽視し、ロシアのウクライナに対する攻撃はEUに対する牽制となっています。これはエマニュエル・マクロンが「ヨーロッパを信じている」と言った言葉を打ち砕くものです。

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