※ 毎朝、5分以内で読める書籍の紹介記事を公開します。
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
目次
はじめに
人間には言語が必要です。言語に関しては謎が多く、それぞれの謎が底なし沼のように深くなっています。
言語の在り方と人間の思考という2つの基地を行ったり来たりしながら、言語学、認知心理学、脳神経科学など、異なる学問を俯瞰的見つめて言語研究に迫っていけるのではないでしょうか。
言語の本質の探究の旅に同道していただきたい。
書籍情報
言語の本質
第1刷 2023年5月25日
発行者 安部順一
発行 中央公論新社
本文印刷 三晃印刷
カバー印刷 大熊整美堂
製本 小泉製本
イラスト作成 スタジオびりやに
ISBN 978-4-12-102756-6
総ページ数 277p
今井むつみ
秋田喜美
中公新書
オノマトペの定義
作者: NINO
「ぐつぐつ」「なよっ」「べちょ」「ジュージュー」といったオノマトペがあります。「なよっ」は、人が弱弱しくて頼りない様子を表すものです。「ジュージュー」はその場で作られた環境音を表します。ハンバーグをつくる際に使われた4つのオノマトペで、料理でもしているのかなと想像がついた読者もいるかもしれません。それほどまでに、私たちはオノマトペを熟知しています。
しかし、いざ「オノマトペとは何か」を定義しようとすると、これがかなり難しいのです。何人もの言語学者がこれに取り組んできましたが、なかなか納得する定義には至っていません。
現在、世界のオノマトペを大まかに捉える定義としては、オランダの言語学者マーク・ディンゲマンセによる以下の定義が広く受け入れられています。
オノマトペ:感覚イメージを写し取る、特徴的な形式を持ち、新たに作り出せる語
かなり抽象的な定義です。
言語と経済性
Image by Sarah Richter from Pixabay
言語により、お互いの考えをやりとりします。伝えるには、ある程度は単純であった方がよい面があるのです。あまり複雑な言語は覚えるのが大変です。言語のこのような特徴は、しばしば「経済性」と呼ばれます。
言語には多義性があり、複数の関連する意味を持つ語が大量に存在します。1つの形式に複数の関連する意味が対応していれば、覚える形式が1つで済みます。「あがる」にも移動する意味と「物価が上がる」という言い方が可能であるように、派生の仕方にはある程度のパターンがあるのです。
「手をあげる」という立候補する場合や暴力を振るうことを意味するのも、「ワンワン」で犬を指すのも換喩です。
脳の情報処理と言語
UnsplashのOliver Rowleyが撮影した写真
オノマトペが進化の過程で、人間の分析思考と、想像と遊び心によって概念を拡張してきたのではないかと思います。オノマトペはアイコン性を保ちながらも生産性をもつ素晴らしいものであるとも思っています。
すべてのことばがオノマトペだったら、情報処理は楽なのでしょうか。情報処理の容易さという観点から、ある語をスムーズに想起し、意味処理するためには、意味が近いことば同志を混同せずに区別できることが大事なポイントです。
「ガーガー」「クワックワッ」「グワッグワッ」といったオノマトペで水鳥の種類が聞き分けられるか想像できるでしょうか。似た意味で似た音を持つライバルの単語が多数あると、情報処理の負荷は非常に重くなってしまうのです。音と意味のつながりがない方が、情報処理に有利なこともあるのです。
語彙の密度がたくなると意味と音の関係に恣意性(規則性はあるけれど意味がない性質)が増すというパターンが生まれます。現代の子どもたちの言語習得の両方において、このパターンが見られることは、言語の性質を考察する上で非常に重要です。
あとがき
オノマトペについて徒然に考えていたら、さまざまな問が生まれました。そして言語の本質とは何か、人間の思考の本質とは何かという問いを考える旅になったのです。
感想
サイト管理人
エモい。には恣意性を感じます。簡略化しようとして意味が無くなってしまった言葉の代表かもしれません。
結構難しいことが書かれていますが、腹を括ってよんでみると、割と面白いという不思議な新書でした。
オノマトペの旅に浸ってみてはいかがでしょうか。
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