文化財が語る 日本の歴史/編者:會田康範、下山忍、島村圭一

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書籍情報

タイトル

文化財が語る 日本歴史

政治・経済編

発刊 2024年5月10日

ISBN 978-4-639-02925-0

総ページ数 218p

編集者

會田康範

学習院高等科教諭
獨協大学非常勤講師

編集者

下山忍

東北福祉大学教育学部教授
東北大学文学部非常勤講師

編集者

島村圭一

城西大学経済学部非常勤講師
宮代町文化財保護委員会委員長

出版

雄山閣

もくじ

  • はじめに(會田康範)
  • 第1章 古代・中世
    • 【有形文化財 古文書】 古代の石碑は何を語るのか(下山 忍)
    • 【有形文化財 歴史資料】 行基式日本図は国土をどう描いているか(會田康範)
    • 【有形文化財 絵画】 絵巻は中世社会をどのように語るのか(柳澤恵理子)
    • 【有形文化財 古文書】 中世の神社文書は何を語るのか(鍛代敏雄)
    • 【有形文化財 美術工芸品】 どのような思いを込めて刀剣を社寺に奉納したのか(島村圭一)
    • [Column] 高野山奥の院―納骨信仰と20万基の墓石―(下山 忍)
  • 第2章 近世
    • 【記念物 史跡】 近世城郭はどのような役割を担ったのか(石野友康)
    • 【有形文化財 歴史資料】 地方文書はどのようにつくられ残されたのか(島村圭一)
    • [Column] 忍城水攻めと石田堤(島村圭一)
    • [Column] 藩邸から公園へ―公的空間の広がり―(會田康範)
  • 第3章 近現代
    • 【有形文化財 彫刻】 仏像はどうやって守られてきたのか(門脇佳代子)
    • 【未文化財 歴史資料】 演説指南書は人々に何を教えたのか(山下春菜)
    • 【有形文化財 彫刻】 銅像は何を語るのか(下山 忍)
    • 【有形文化財 建造物】 絵画館は近代日本の姿をどう表象したのか(會田康範)
    • 【有形文化財 建造物】 橋は何をつなぐのか(會田康範)
    • 【有形文化財 墳墓・碑】 戦争碑は何を語るのか(下山 忍)
    • [Column] 工作機械を動態保存―日本工業大学工業技術博物館―(島村圭一)
    • [Column] 世界遺産と日本遺産(會田康範)
  • おわりに(會田康範・下山 忍・島村圭一)

書籍紹介

書籍の概要

 本書は、古代から近代に至る日本の政治・経済の発展と変遷を、文化財を通して明らかにする試みです。寺院の建築物や古文書、貨幣など、さまざまな文化財がその時代の背景を物語ります。これらの文化財を詳細に分析し、歴史の一場面を鮮明に浮かび上がらせる内容となっています。

各章の内容

  1. 古代の政治と経済
    古代の日本では、中央集権化が進む中で政治と経済がどのように発展したかを、寺院や古墳などの遺跡を通じて探ります。飛鳥時代から奈良時代にかけての政治体制の変遷や、経済活動の拠点となった市の成立などが詳細に述べられています。
  2. 中世の変革と武士の台頭
    武士の登場によって大きく変わった中世の政治と経済。この章では、武士の経済基盤である荘園や、鎌倉幕府の成立とその経済政策について掘り下げています。武士文化の象徴ともいえる武具や城郭の紹介も見どころです。
  3. 近世の繁栄と幕藩体制
    江戸時代の幕藩体制の下で、どのように政治が行われ、経済が発展したかを探ります。貨幣経済の普及や、商業の発展についての記述は、当時の浮世絵や商品見本などの文化財を通して理解が深まります。
  4. 近代への歩みと改革
    明治維新を経て近代国家へと進む日本。この章では、近代化の過程で行われた政治改革や、経済の西洋化について文化財を用いて解説しています。産業革命を象徴する機械や、近代的な建築物の紹介が含まれています。

書籍の特徴

 本書の最大の特徴は、文化財を通じて歴史を学ぶというアプローチです。単なるテキストではなく、具体的な物証を基にした歴史探究は、読者にとって非常にわかりやすく、興味を引きます。また、多くの図版や写真が掲載されており、視覚的にも楽しめる内容となっています。

歴史や文化財史を知りたい学生・教育者へ

 『文化財が語る 日本歴史 政治・経済編』は、歴史愛好者だけでなく、教育者や学生にもおすすめです。特に、文化財に興味がある方や、日本の政治・経済史に関心がある方にとっては、非常に有益な一冊となるでしょう。また、歴史教育の現場でも活用できる内容が詰まっており、授業の補助教材としても最適です。

試し読み

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

明治以降の刀剣

 江戸幕府の滅亡により、幕藩体制は崩壊し、武士による支配は終焉を迎えました。それに伴い、刀もその役目を終えることとなりました。

 1876年(明治9年)に廃刀令が公布されると、大礼服の着用時や軍人、警察官の制服着用時以外には帯刀が禁止されました。帯刀は洋式のサーベルに限られたため、日本刀などの刀剣の需要は激減し、刀鍛冶は職を失いました。中には、鎌や鍬などの農具を作る野鍛冶に転向する者もいれば、悲観して自刃する者もいました。

 明治の中期以降になると、政府は文明開化の風潮のもと、不振と窮迫にあえぐ伝統的な日本美術や工芸を保護する動きを見せ始めました。

 刀工としては、宮本包則や月山貞一が任命され、明治天皇などの著名人の刀を作刀して生計を立てていたようです。

 1900年には、中央刀剣会が発足し、『刀剣雑誌』が発行されるようになりました。刀剣の歴史を体系化する取り組みが進められ、この時代にも刀剣に関する教養や趣味が社会的に認められていました。

戦後の刀剣

 1945年(昭和20年)、日本はポツダム宣言を受諾し、連合国軍に無条件降伏しました。これにより、刀剣は武器として没収されることとなりました。

 しかし、骨董的価値のある刀剣については審査の上で日本人に保管を許可されることになり、刀剣審査委員会が設立され、売買譲渡が可能となりました。

 1968年には、日本美術刀剣保存協会の付属施設として刀剣博物館が開館しました。この博物館では日本刀の保存・公開を行い、教育普及活動も展開しています。

 現在、刀剣は銃砲刀剣類所持等取締法によって取り締まりの対象となっています。しかし、刀剣は単なる武器ではなく、美術品として大切に保存され、観賞されてきた歴史があり、日本の文化として認められています。最近では「刀剣女子」と呼ばれる若い女性のファンも増えており、一部の愛好者だけでなく、多くの人々に注目されているのは喜ばしいことです。

文書による支配

 豊臣秀吉による兵農分離政策により、武士は城下町に集められ、自らの所領に住むことはなくなりました。これにより、長期間の平和な時代が訪れ、先例重視や文書主義に基づく政策が進展しました。

 このような文書による支配を可能にしたのが、村請制度です。この制度は、村に自治的な機能を持たせ、文書で通知や指示を行い、それを履行させるものです。

 村の代表者は、新田開発、水利事業、測量技術、土木技術、領主との交渉において識字能力が必要とされました。そのため、現在も多くの地方文書が残されています。

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