※読んだ本の一部を紹介します。
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
はじめに
気候変動の危機の時代において、日本は、世界の経済発展に貢献することができます。大気、水、土壌の汚染、地球温暖化と異常気象が示すのは、世界が「持続可能な資本主義」のモデルを必要としているからです。
日本が目指す「Society 5.0」は、人工知能(AI)やロボット技術など、人々の生活を豊かにする高度な技術革新の上に成り立ちます。
日本は他国にとっても貴重なパートナーです。2022年7月、日本がアメリカと共同で次世代半導体の研究開発センターを開設することが発表されました。サプライチェーンを国際的混乱から守るために不可欠な貢献となるでしょう。
目次
書籍情報
タイトル
危機の地政学
感染爆発、気候変動、テクノロジーの脅威
著者
イアン・ブレマー
ユーラシア・グループのプレジデント及び創業者。
1998年、地政学リスク・コンサルティング会社、ユーラシア・グループをニューヨークに設立しました。毎年発表される「世界10大リスク」でも定評があります。
監修 稲田誠士
翻訳 ユーラシア・グループ日本、新田享子
出版
日本経済新聞出版
新型コロナウイルスから何を学んだか
新型コロナのワクチン開発
従来のワクチンは実際のウイルスの一部のタンパク質を含み、危険な侵入物を特定して抑え込む方法を免疫システムに教えていました。
新型コロナのワクチン2種類には、標的となるタンパク質を自ら作り出す方法を人体に教える「メッセンジャーRNA(mRNA)を利用した技術が使われています。
この技術により、安全で有効なワクチンの開発と大量流通を可能にしたのです。
世界細田の共同市場であるヨーロッパには、世の中を変えるようなハイテク企業、強力な軍隊、有力な銀行、豊富な天然資源、そして世界的な基軸通貨がありません。
しかし、、気候や労働環境に対して、市民を保護する社会保障制度を構築するとなると、ヨーロッパの指導者たちは世界で最も優れた主導力を発揮します。
今回の新型コロナでは、次のパンデミックが起こる前に、国境を越えて協力し合うための良い経験になったのです。
2021年3月、23か国の首脳が、WHOとともに、次の世界的な公衆衛生の危機から全員を守るため、パンデミックの予防と備えに関する国際条約を提案しました。これこそが、パンデミックの事前対策における協力といえるものではないでしょうか。
残念ながら、中国もアメリカもこの条約の制定を求める共同文書には署名していません。米中が不在では、この国際条約は形だけのものでしかないのです。
新型コロナなど我々は求めていませんでしたが、次の危険なウイルスに直面しても、もっと有効に対応しやすくなっており、危険な緊急事態がやってきても立ち向かえるでしょう。
気候変動の地政学的リスク
気候変動のリスク
●水害と水不足
●競争
●難民
●社会不安と衝突
●気候アパルトヘイト
●地球工学の危険性
水不足から、水を含む天然資源確保の競争が起きたとします。その過程で水害に苦しむ難民が多く生まれ、それを受け入れる貧困国が難民の食費を賄わなければならなくなるでしょう。
「気候アパルトヘイト」という言葉は、富裕層が自分たちの富を守るために、貧困層を隔離する障壁を築くことを指しています。
また、人為的な自然環境への介入について意見が分かれているようです。太陽放射を反射させる方法が研究されていますが、地球を冷却するリスクが高いとされています。鉄分を多く含む粉末を散布し、排出された二酸化炭素を吸収してくれるプランクトンを増やすことも可能かもしれませんが、水中の酸素を除去する結果に繋がると懸念されているのです。
自国のことは自分たちでなんとかするというアプローチが浸透してきている今、各国が単独で地球規模の課題に対し、被害が発生する前に答えが出るとは限りません。
米中の危険なライバル関係
AIの開発をめぐって
習国家主席が中国共産党大会で、インターネット、AIを中心に2030年までに中国を世界の産業大国にする国家戦略を発表しました。
トランプ政権は急成長した中国のハイテク企業を弱体化させるため、中国のファーウェイを排除しようと躍起になっていたのが印象的です。
米中以外の政府は、自分たちの国のデジタルインフラを築くのは、中国企業かアメリカ企業かと頭を悩ませていることがほとんどではないでしょうか。
アメリカ企業のほうが国家の介入がないから信用できるという考えと、中国の技術のほうが安価で助成金も期待できるという考えで、大きく分断するかもしれません。
かつてないほど密接にスポンサー国と足並みを揃えることになり、21世紀版の冷戦に突入していくことになるでしょう。
未来に向けての前向きなビジョン
いちばんの問題は、未来の世代が享受できる幸福の種をまこうとする人があまりにも少ないことです。
今後起きる公衆衛生の危機、気候変動、新技術が世界的な脅威になり、人類の存亡は協調にかかっています。
次のパンデミックがくるまでに、様々な危機に備えて対策を講じるグローバルな関係が必要です。
温室効果ガスを低減する拘束力のある協定があれば、各国の必要以上の犠牲を払わなくて済むと思います。
米中政府の最悪のシナリオを避けられれれば、他国や国際機関が重要な役割を果たす余白がまだあるかもしれません。
感想
サイト管理人
環境問題などを焦点にあてたEUよりの地政学?を学ぶことができます。
温暖化ガス削減も、一番排出量の多い米中が協力してくれないと話にならないじゃないか。と、そういうことだと思います。
海洋領域でバチバチに競っている2か国が、協調に向かっていくシナリオが書かれていないので、どんな危機が待っているかということが語られている本だと思った方がよいでしょう。地政学の希望が記述されているような感じではありませんでした。
危機を煽るような文章の後で、「協力しよう」と論じてくる手法の書籍です。ヨーロッパ側が、期待している展開を知りたいなら、読んでみてもよいかもしれません。