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目次
書籍情報
PR資産としての魅力と可能性
企業ミュージアムへようこそ 下巻
発刊 2024年7月16日
ISBN 978-4-7887-1900-2
総ページ数 151p
電通PRコンサルティング
岡内礼奈
櫻井曉美
井口理
武知茉莉亜
森佑奈
垂水幸子
藤井京子
中憲仁
粟飯原広基
石井裕太
齊藤国浩
林紅
酒井美奈
時事通信出版局
- はじめに
- (アドミュージアム東京 館長/前電通PRコンサルティング 代表取締役社長執行役員 牧口征弘)
- 01 「常に時代の一歩先へ」という企業文化の伝承
- (セイコーミュージアム 銀座)
- 02 ドラマで魅了するガイドの神髄
- (シャープミュージアム)
- 03 創業の精神と目標実現へ向かう姿を伝える
- (グンゼ博物苑)
- 04 未来ビジョンへと導く経営の羅針盤
- (ミツカンミュージアム)
- 05 「飽くなき挑戦」をストーリーで表現
- (マツダミュージアム)
- 06 金融に向き合う空間
- (三井住友銀行 金融/知のLANDSCAPE)
- 07 スポーツの感動と発展への貢献を訴求
- (アシックススポーツミュージアム)
- 08 挑戦体験を繰り返し、日常へ
- (ヤンマーミュージアム)
- 09 パブリック・ディプロマシーの担い手
- (ミキモト真珠島)
- 10 感動創造企業の技と術を未来へ紡ぐ
- (ヤマハ発動機 コミュニケーションプラザ)
- 11 黒部川の産業遺産を後世に語り継ぐ
- (関西電力 黒部川電気記念館)
- 12 航空機利用に次ぐ最大の顧客接点
- (JAL スカイミュージアム)
- 13 “ 清浄” の文化史と“ 正道” の志
- (花王ミュージアム)
- 14 経営の根幹“ 京セラフィロソフィ” の伝承
- (京セラ 稲盛ライブラリー)
- 15 「くすりの楽しさ」で創薬の未来を変革
- (Daiichi Sankyo くすりミュージアム)
- 16 創業者の思い“ 喜びのタネをまく”
- (ダスキンミュージアム)
- 17 漢方の伝統と革新を伝える
- (ツムラ漢方記念館)
- 18 エピローグ 新たな注目を集める企業ミュージアムの価値
- 解説 解説―心の旅をしよう
- (時事通信社解説委員 小林伸年)
書籍紹介
企業ミュージアムの魅力を徹底解説
本書では、企業ミュージアムがいかにして企業のブランド価値を高め、社会とのつながりを深める役割を果たしているかを具体例を交えて解説しています。電通PRコンサルティングの専門家たちが、実際に手がけたプロジェクトの裏側や、その成功に至るまでのプロセスを詳細に紹介しています。読者は、この書籍を通じて企業ミュージアムの持つ可能性と、そこから得られる様々なメリットについて学ぶことができます。
事例紹介と具体的な戦略
『企業ミュージアムへようこそ 下巻』は、多数の企業事例を紹介し、それぞれの企業がどのようにして自社のミュージアムを構築し、活用しているかを具体的に説明しています。例えば、ある企業が自社の歴史を通じてどのようにブランドイメージを強化し、消費者とのエンゲージメントを高めたかといった成功事例が満載です。さらに、ミュージアムの設計から運営に至るまでの具体的な戦略や、PR活動の展開方法についても詳しく述べられています。
PRの新しい形を探求
企業ミュージアムは、企業の価値観や歴史、未来へのビジョンを具現化する場です。本書は、企業ミュージアムを活用した新しいPRの形を探求する一助となるでしょう。読者は、企業のブランディングやマーケティング戦略において、どのようにしてミュージアムが重要な役割を果たすのかを理解することができます。
試し読み
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
未来ビジョンへと導く経営の羅針盤 ミツカンミュージアム
総合から200年を超える歴史を持つミツカングループは、江戸時代後期の1804年に中野又左衛門によって尾張国知多郡半田村で酢屋として創業しました。酒かすを使ってお酢を作り、それが米を使った寿司によく合うことから庶民の間で広まったようです。
MIM(MIZKAN MUSEUM)では、階段下から現代の工場を覗けるようになっており、子どものための体験スペースやクイズも用意されています。
「時の蔵」ゾーンでは、江戸時代から続くミツカンの挑戦の歴史を展示物や映像で楽しむことができます。お酢を運んだ弁才船の物語は迫力ある演出で紹介されています。
最後に、自分の顔写真をラベルにプリントした「味ぽん」を作れるスタジオもあります。1日に約100本の味ぽんがこのスタジオで販売され、結婚式の引き出物にするカップルもいます。
施設のメインターゲットは小学3年生ですが、その親世代も楽しめる内容です。60~70代以外の世代にもアプローチするため、若い子育て世代を意識しています。お酢を使った料理を作るきっかけになることを期待しているようです。
アシックススポーツミュージアム
アシックススポーツミュージアムは、神戸の人工島ポートアイランドに位置するアシックス本社東館の中にあります。スポーツが生み出す感動を伝え、スポーツ文化の未来に貢献する同社の発信拠点でもあり、入館料は無料です。
アスリートの練習や競技の現場に赴き、選手やコーチとのコミュニケーションから課題を見つけ、アイデアを出して製品を作り上げてきました。2階のヒストリーフィールドでは、歴代の契約選手が使用した製品を展示しています。選手の偉業を見ることで、戦後のスポーツ発展とアシックスの事業戦略や製品づくりにおける心がけを学べるでしょう。
1階の展示コーナーでは、シューズの8大機能が掲示されています。フィット性、クッション性、グリップ性、耐久性、屈曲性、軽量性、通気性、安定性を数値化し、着用者ごとに計測して最適なシューズを科学的アプローチで作り上げることができることを示しています。
ミキモト真珠島
三重県の鳥羽湾に浮かぶ「ミキモト真珠島」は、1893年に御木本幸吉が世界で初めて真珠の養殖に成功した場所です。御木本は1929年にこの島を買い取り、整備を続けました。そして1951年に、レジャー施設として一般公開されました。
ミュージアムでは、御木本真珠の歴史を学べるほか、海女の実演を見ることもできます。海女が海底に潜り、アコヤ貝を採取する技術は重要無形民俗文化財に指定されています。昔ながらの白い磯着を着た海女を見ることができるのは、この真珠島だけです。
御木本は真珠の養殖に成功したことで、外交の重要性を認識し、渋沢栄一との交流を持つようになりました。真球に近い真珠はすぐに評判となり、多くの王族や政治家が訪れた記録が残っています。
企業ミュージアムの価値
本書では、上巻と下巻を合わせて33か所の企業ミュージアムを紹介しました。CMなどで接点があるベンダー企業でも、一般の人々がその歴史や技術に触れる機会は多くありません。実際に企業ミュージアムに足を運ぶと、館内を巡るのに数時間かけて企業の努力を目の当たりにすることができます。
美術館での鑑賞とは異なり、社会の発展に貢献してきた道のりには没入感があります。実生活と結びついた学びを得ることができるのです。コンテンツの拡充や体験型展示の工夫は企業にとってもイノベーションを生み出すきっかけとなり、再び注目されています。
デジタル化が至るところで浸透・定着している一方で、このようなリアルな空間でコンテンツを提供する施設も再評価されています。