市民的抵抗

※ 毎朝、5分ほどで読める書籍の紹介記事を公開します。

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

はじめに

 歴史上の例が示すのは、暴力が真に権力を争う唯一の方法だからです。

 フランス革命、アルジェリア革命、ベトナム戦争、ソ連・アフガン戦争、そのた多くの事例は、軍事的に劣る勢力による武装反乱が、強力な国家を打ち負かしています。

 暴力が利益になることがよくあるのです。

 インド、ポーランド、ハンガリー、トルコ、ブラジル、タイ、フィリピン、アメリカで過去10年間で独裁政治への揺り戻しが起こっています。中国、イラン、ロシア、サウジアラビアは、政敵と思われる人物を監視しているようです。世界中どこでも、過去数十年と比較して、政府は革命的非暴力運動を打ち負かしています。

 現在の運動の規模は、過去に比べると小さなものになっているようです。非暴力の迷信や批判にもかかわらず、市民的抵抗というアイデアの時代が、再び訪れています。

 本書は、市民的抵抗を観察する者、同僚、学生、活動家、友人、ジャーナリストや一般の人々が、市民的抵抗について答えてくれたものです。

書籍情報

タイトル

市民的抵抗 非暴力が社会を変える

第1刷 2023年1月10日

訳者 小林綾子

発行者 岩堀雅己

発行 (株)白水社

印刷 理想社

ISBN 978-4-560-09469-3

総ページ数 357p

著者

エリカ・チェノウェス

 2007年、米国コロラド大学で国際関係学の博士号を取得。現在、ハーバード・ケネディ・スクール教授。政治的暴力やテロリズムを研究してきたが、非暴力で社会を変えて行くことを目指す市民的抵抗に着目し、多くの学術論文と学術書を執筆しています。

出版

白水社

代表的な非暴力行動とは何か?

Image by Peter H from Pixabay

 研究者ジーン・シャープは、1960年代にオックスフォード大学で博士論文執筆中に、有名な「非暴力行動の百九十八の方法」を特定しました。それぞれ、抗議と説得、非協力、非暴力的介入に分類しています。

抗議と説得非協力非暴力的介入
演説、パレード学生ストライキ(社会的)ゲリラ演劇
パンフレット、新聞ボイコット(経済的)非暴力的妨害
肖像画の提示市民的不服従(政治的)封鎖の無視
歌を歌う、座り込む、行進避難所の設置行政機関への負荷
退室、沈黙怠業投獄の要求

 市民的抵抗の議論において、シャープは作為という行動と不作為という行動を行動を区別しています。

 作為という行動は、非武装の人々が敵対相手がしてほしくない行動をとることです。不作為という行動は、自分たちに期待されている行動を止めることです。

 さらに、政治心理学者カート・ショックは、集合と分散の方法を区別しています。

 集合の方法とは、市民的抵抗において人々が特定の空間に集まるやり方であり、分散の方とは、特定の場所から意図的に距離を取るという戦術です。

効果的な市民的抵抗キャンペーン

UnsplashEhimetalor Akhere Unuabonaが撮影した写真

 普遍的な定式は存在しないようです。国、市民、怒りはそれぞれにユニークなのです。同時に、正擦る抵抗キャンペーンに一貫してありそうな際立つパターンを見出せます。

第一
 どの運土も、その国の人口の10%を動員し、彼らが一番盛り上がっているときに積極的に参加すれば、失敗することはありません。3.5%動員できた運土はほとんどが成功してきたのです。

第二
 抵抗運動の中にはいかに長期間にわたって勢いを生み出し維持できるかという戦略を考えるものがあるのです。

 勢いは、大きさと速度を掛け合わせと言えます。抵抗運動では、参加する人数と速さが関係するようです。

第三
 政権側を強く支持してきた集団や部門を動かすこと、戦術的なイノベーション、そしてとどまる力が必要です。

 独自のチェックリストを発展させて、抵抗運動の参加者が自分たちの進展や力を評価できる6つの項目を挙げるなどの過去の例があります。(ピーター・アッカーマン、ハーディー・メリマン)

市民的抵抗はどうのような意味で危険なのか

Image by BRRT from Pixabay

 現状を根本から変えようとする非暴力運動は、とても危険です。

 法的な制度の範囲を超えて敵に挑み、現状維持への抵抗が無視できないレベルにまで至ると、相手方は大抵、暴力的抑圧で反応しています。

 身体攻撃のリスクはもちろん、評判を落とす、恥をかく、失業する、医療・衣食住・親権を失うリスクもあるのです。

 参加者のリスクに責任を持つ市民的抵抗キャンペーンに訴える方法があります。

 非暴力的抵抗は、差別されている人々にとっては常によりリスクが高いものです。差別は警察による秒力以上に黒人コミュニティのリーダーを脅かすことにかなり積極的でした。

 公民権運動の指導者たちは、地元の企業経営者をターゲットにして、隔離ビジネスをボイコットしたり、軽食カウンターへの座り込みや、「白人専用」の場所に座って隔離にお規範を破ったり、放送局のニュースを招いて規律ある抗議活動や行進を地元や全国的に観てもらったのです。

 経済的支援も受けることができて、人種差別撤廃と統合への全国的な支援を獲得しています。人種的平等を中心的な目標として、民主党の政策に明記させました。

非暴力キャンペーン後

Image by PDPics from Pixabay

 非暴力革命について懸念されることのひとつは、より抑圧的な政府になることや、内戦などに発展することです。

 しかし、非暴力抵抗キャンペーンは民主的な意向をもたらすことが多く、ほとんどは独裁や戦闘を生むことはありません。

 ミャンマーの2007年サフラン革命は、軍事政権のなkで革命者たちに力をつけ、その後数年で彼ら選挙、抑制、均衡、市民権、社会的、経済的、といった広い目的を持つようになりました。

 要するに、非暴力抵抗キャンペーンから生じた社会は、荒れ果てることがはるかに少なく、社会の中で変革された力関係があるということです。

あとがき

 政治的暴力研究と非暴力の市民的抵抗研究を架橋しながら、市民的抵抗の歴史や理論から最新情勢まで網羅し、市民的抵抗を多角的に考察したほかに類を見ない文献です。

 市民的抵抗がまだ新しい分野であり、かつ市民的抵抗が世界各地で発生し続けているため、10年後の議論は違ったものになるでしょう。

 スーダンでは2019年に、市民的抵抗により長期独裁政権が倒れました。しかし、不安定な状態にあるのです。ミャンマーやアフガニスタンでは、クーデターや政変があり、市民の抵抗が続いています。2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻後は、武器を用いた先頭に注目が集まりがちな中、ウクライナ国民やロシア国民が、非暴力のさまざまな方法を駆使してロシア政府に立ち向かう姿も報じられています。中国でも反政府抗議デモがおこなわれるようになっているのです。

 いまや市民的抵抗研究は、国際関係論にも重要な視座を提供する研究のひとつとなっています。

感想

サイト管理人

サイト管理人

 新しい概念のようです。いまの社会を知る上で、勉強になりました。

 人が集まった非暴力の抵抗は、かなり有効なのだそうです。

 固定概念の殻を破って、なるほどと受け止めるまで少し時間がかかった書籍でした。

 「市民的抵抗」、社会問題の変革の際に肝心な観点となりそうです。一度、深く考えてみてはいかがでしょうか。

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