ビジネスと人権/著者:伊藤和子

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書籍情報

タイトル

ビジネスと人権

人を大切にしない会社を変える

発刊 2025年2月20日

ISBN 978-4-00-432052-4

総ページ数 240p

書評サイト 読書メーター好書好日

出版社リンク 岩波書店

著者

伊藤和子

2006年、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウの創設に関わり、以後事務局長を務める。2021年より副理事長。
ミモザの森法律事務所所属弁護士、慶應義塾大学大学院法務研究科非常勤講師、国際人権法学会理事、ジェンダー法学会理事、核兵器廃絶日本NGO連絡会共同代表、WFFジャパン評議員。

出版

岩波書店

もくじ

  • はじめに
  • 第1章 なぜビジネスと人権なのか
    • 人権とは何か
    • ビジネスと人権の諸問題
    • 「ビジネスと人権」に関する意識の高まり
  • 第2章 ビジネスと人権に関する指導原則とは何か
    • 指導原則誕生までの道のり
    • 国家の「保護」する義務(第一の柱)
    • 企業の責任(第二の柱)
    • 救済へのアクセス(第三の柱)
    • 指導原則の実施に向けての動きと課題
  • 第3章 指導原則の世界での実施 ソフトローからハードローへ
    • 各国による指導原則の実施
    • 企業による指導原則の実施
    • ハードロー化の潮流とその背景
    • ハードロー化への道
    • 欧州デュー・ディリジェンス指令(CSDDD)とその影響力
  • 第4章 日本企業が直面する人権課題
    • グローバル・サプライチェーン問題
    • 日本国内で起きている人権侵害
    • 特に憂慮される課題や悪影響
    • なぜ、実効性ある取り組みができないのか
  • 第5章 企業は何をすべきか
    • 人権の取り組みで留意するべきこと
    • 人権デュー・ディリジェンスの取り組み
    • 救済へのアクセスの取り組み
  • 終章 社会は変えられる
    • ビジネスと人権がアジェンダになった
    • 国は制度や仕組み変える役割を果たすべき
    • 私たち自身の未来を変えるために
  • あとがき

書籍紹介

 現代社会における企業活動と人権の関係性に焦点を当てたもので、私たちが普段何気なく接しているビジネスの裏側に潜む深刻な問題を丁寧に解き明かしています。

 著者の伊藤和子さんは、弁護士として長年人権問題に取り組んできた方で、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウの創設にも関わり、現在は副理事長を務めていらっしゃいます。彼女の豊富な経験と知識がこの本に詰まっており、企業が人権を尊重する責任や、国家が人権を守る義務について、具体的な事例とともに分かりやすく説明されています。

 人を人とも思わない形で搾取や侵害が行われている現実が、国内外の企業活動の中で起こっているという指摘です。例えば、グローバルなサプライチェーンの中で見過ごされがちな労働者の苦しみや、日本国内で静かに進む人権侵害の実態が明らかにされています。それでも、伊藤さんは悲観的なだけではなく、私たち一人ひとりがこの問題を知り、行動することで社会を変えられるという希望も示してくれます。

 専門的な内容を扱いながらも、新書という形式で読みやすくまとめられているので、ビジネスや人権について初めて学ぶ方にもおすすめです。企業の責任や私たち消費者の役割について考えさせられるだけでなく、自分たちの未来を守るために何ができるのかを問いかけてくる一冊です。

試し読み

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

特に憂慮される課題

 東南アジア地域から日本に来て製造業、建設業、農業などの現場で働く技能実習生に対し、現代奴隷と言われる状況があります。高い手数料、最低賃金法違反、残業代不払い、深夜残業の強要、性加害、労災隠し、強制帰国等が横行しているようです。

 2023年、職場から「失踪」した技能実習生は、過去最多の9700人に上り、人権侵害や搾取などを受けて追い詰められた技能実習生もいます。望まない妊娠も多発しており、国連人権機関から相次いで是正勧告を受けました。

 バリューチェーンの頂点にいる大企業のサプライヤー工場での技能実習生問題に関する相談件数は2017年の時点で多く寄せらていました。四国の山奥の工場で連日夜勤残業をさせられた実習生が、窓から脱走し、組合に保護されるという事案も起きてしまったのです。

 メディアの餌食になったブランドとして、セシルマクビー、今治タオル、ワコールの実態として特集番組が報道されています。下請け会社の工場で、ミャンマーあるいはベトナムの技能生たちが、在留資格の強制変更や残業代の未払いを訴え、その後実習生たちに残業代の分割を約束するも、その企業は自己破産に追い込まれたという内容です。

 外国人技能実習生に限らず、サプライチェーン上の労働環境は問題があります。建設労働の場合は、何層もの下請け構造ができてしまっているのが問題です。働く場所として危険過ぎる環境という現場が、余りにも多すぎます。

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