※ 毎朝、5分ほどで読める書籍の紹介記事を公開します。
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
目次
はじめに
本書は、日本乳癌学会が発行している医師向けの『乳癌診療ガイドライン』に記載されている内容から、患者さんやご家族の皆さんにぜひ知ってほしい内容をわかりやすく解説します。
乳がんの診療においては、検査から治療、経過観察に至るまで、さまざまな段階で多くの選択肢があります。治験や臨床試験の結果から得られる根拠と、ひとりの患者さんにとってより良い医療を目指そうとするものです。
仕事とがん治療との両立は可能か、社会的、経済的な支援にはどのようなものがあるかなどに関しても記載を充実させています。
乳がんに対する理解が深まり、本書をもとに患者さん、ご家族と医療者とのより良い対話が可能になれば幸いです。
書籍情報
患者さんのための乳がん診療ガイドライン
2023年版
第7版、第1刷 2023年1月30日
編者 一般社団法人 日本乳癌学会
発行者 福村直樹
発行 金原出版(株)
DTP 朝日メディアインターナショナル
印刷・製本 シナノ印刷
ISBN 978-4-307-20448
総ページ数 270p
金原出版
仕事は続けられますか
ひとりで悩まず、まずは相談してください。
がんの診断を受けた直後、「治療に専念しなくては」「仕事は無理だろう」と離職してしまう人がいます。しかし、仕事を辞めてしまうと、治療費の支払いなど経済的な不安を抱え込んでしまったり、再就職先が決まらずに苦労する場合があるのです。
乳がんの治療は外来通院が主流になり、治療をしながら働くことができるようになってきました。仕事を辞める判断は即決せずに、担当医と勤務先の休暇制度などを確認して、仕事に対する自分の気持ちを整理しましょう。
ガン治療連携拠点病院に設置されている「がん相談支援センター」では医療ソーシャルワーカーや社会保険労務士など就労に関する専門家が相談を受けています。また、地域の患者会でも相談を受けている場合があるようです。
休みを所得する制度として、年次有給休暇制度があります。就業規則を確認して人事担当者などに聞いてみましょう。企業によっては、私傷病休職制度や積立休暇など独自の休暇を整備している場合があります。
休む仕組み | お金を支える仕組み1 | お金を支える仕組み2 | |
---|---|---|---|
患者 | 年次有給休暇 会社独自の休暇制度 雇用主の配慮 | 傷病手当 高額療養費 医療費控除 医療費貸付制度 基本手当(失業手当) | 障害年金 障害者手帳 生活保護制度 |
家族 | 介護休業・介護休暇制度 社会独自の休暇制度 雇用主の配慮 | 遺族年金 |
企業には「従業員が安全・健康に働くことができるように配慮する義務(安全配慮義務)」が労働契約法で定められており、配慮が必要な事柄は事前に把握しておかなければなりません。
必ずしも病名を伝える必要はありませんが、配慮してほしい事項があれば伝えておくと、職場は対応しやすいでしょう。なるべく、具体的な配慮をしてほしいと伝えることが大切です。
治療がひと段落ついたので仕事を始めたい場合もあると思います。ハローワークはもちろん、がん相談支援センターに相談できるので、活用してください。病院内にハローワークの主張所が設置されている場合もあります。
求人状況は経済動向に大きく左右されますので、採用までに時間がかかる場合もありますが、あきらめずに就職相談窓口に問い合わせてみましょう。
↓傷病手当金改正(令和4年1月1日施行)pdf
手術後のブラジャー
乳がんの手術後の下着とパッドには、術後の胸を保護して衝撃から守る役割があります。左右のバランスをとることでからだに歪みが生じにくくなるのです。
必ずしも乳がん専用のブラジャーを着用する必要はありませんので、からだと気持ちに合う下着を選ぶとよいでしょう。
シリコンパッドは、ボリュームを補いながら、乳房のようなやわらかさで手術創部衝撃から守るクッションになり、左右のバランスを整え、肩や腰にも負担をかけません。
創の痛みや乳房全体の腫れが軽減したら、手術前の下着もつけられます。けれど、ワイヤーが当たる部分や締め付けが気になるときは、ワイヤーがついていないブラジャーや乳がん専用のブラジャーを試してみましょう。
痛みが和らぐまでは前秋のソフトブラジャーや、カップ付きのキャミソールに軽量パッド組み合わせなどが考えられます。
また、からだを動かしてもずれにくい乳房手術後のスポーツブラや、パッドを入れるポケットがついた水着なども市販されているので、返品交換できる店舗で購入すると安心です。
施設によっては、入浴着の使用が禁止されている場合があるのでご確認ください。
自治体によっては胸部補正具の購入にかかった費用の一部を助成する仕組みもあります。
男性乳がん
男性の乳がんに対する治療の考え方は、基本的には乳がんと同じです。
乳がん患者さんの約150人に1人が男性と、男性乳がんは比較的めずらしいものになっています。女性乳がんと比較して遺伝にかかわる乳がんである確率が高いことが知られるようになりました。
また、男性乳がんにもBRCA1/2遺伝子検査は保険適用となっています。
男性乳がんはその発症部位が乳輪乳頭付近となることから、乳房全切除術が選択されます。術後も男性乳がんはデータが十分ではありませんが、女性乳がんのデータを考慮して必要に応じて使用することが妥当と考えられている様です。
転移などの治療についても女性と同様です。がんの侵攻を抑えたり、症状を和らげることでQOLを保ちながら、より長くがんと共存するための治療を行います。
乳がん予防のために心がけたいこと
食生活と乳がん八書うリスクとの関連を明らかにするためには、多くの女性を対象に摂取した食べ物や量を長期間の追跡調査して、どのような関連性があるのかを検討しなければなりません。
2007年に「世界がん研究基金(WCRF)」と「米国がん研究機関(AICR)」が『食物、栄養、身体活動とがん予防:世界的展望』という報告書を出版しています。
世界で最も信頼性の高い報告書です。
この報告書の結果をもとに、乳がん発症リスクとの関連を取り上げて心がけたいことを以下に記します。
- 肥満は乳がん発症リスクを確実に高めます。日常生活で太りすぎないように気をつけましょう。
- アルコール飲料の摂取により、乳がんの発症リスクが高くなることは確実です。
- 大豆食品やイソフラボンの摂取で乳がん発症リスクが低くなる可能性があります。
- イソフラボンをサプリメントで服用した場合に、乳がん発症リスクを下げる効果があることは証明されていません。安全性も証明されていません。
- 乳がん発症リスクを低下させるために健康食品やサプリメントを摂取することは進められません。
- 乳製品の摂取と乳がん発症リスクの関係はよくわかっていません。
- 喫煙は乳がん発症リスクが高くなることは、ほぼ確実です。
- 運動で乳がん発症リスクが低くなるかどうかは結論が出ていません。
- ストレスが乳がん発症リスクを高めるかどうかは結論が出ていません。
- 糖尿病の人は、糖尿病ではない人と比較して乳がんの発症リスクが高いです。
あとがき
『患者さんのための乳がん診療ガイドライン』は2006年の初版発行をスタートに、改定を重ねてきました。
治療を受けていくにあたり必要な情報を、順に項目ごとにまとめて記載しています。
スマートフォンやSNSが一般的になり、広くさまざまなところから情報を入手できるようになりました。しかしながら、インターネットから得られる情報は医療関係の情報と違ったものが多く含まれています。
得た情報が正しいものかどうかを確認する目的のためにも本ガイドラインで補うことができるでしょう。
多くの乳がん患者が、より納得のいく診療を受けられることを期待しています。
感想
サイト管理人
このガイドラインを記した書籍には、このページで書かれていること以外にも大切なことが書かれています。もちろん下手なことは書いておりません。
また、情報の先や政策のURLも載っているため、正確な情報を知りたいときや手当を受けたいときに役に立つと思います。
大腸がん、乳がん、身近に感じる病気でもありますから、知っておきたい情報です。また、乳がんはセンシティブな部分を含みます。周りも受け止めなければならないし、理解しようとすることは必要だと思います。
このガイドブックには救済の手立てが書かれています。周りの誰かの頭の片隅にでも情報があれば、その手立てを借りることができるのです。
探せば、色々な窮地に社会的補償が散らばっていて、悪いことばかりではありません。
最適な治療や知識をつけるために、このガイドブックを活用してみてはいかがでしょうか。
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