※サイト管理人が興味をもった部分を紹介します。
はじめに
取材現場の肌感覚とかけ離れた新聞批判もあります。新聞の歩みをすべて否定する気はありません。そこから価値のあるものを抽出して新しいジャーナリズムを構築する材料とするのは、凋落する新聞界に身を置いた者の責務ではないかと思い、筆を執りました。
目次
書籍情報
タイトル
朝日新聞政治部
著者
鮫島浩
ジャーナリスト。
朝日新聞社に入社し政治部を担当してきました。「吉田調書」で解任され2021年に退社して、ウェブメディア「SAMEJIMATIMES」で連日記事を公開しています。
出版
KODANSHA
社会部とは違う「調査報道」を生み出せ!
2005年末に政治部、経済部、社会部の記者を集めた特報チームを新設することとなりました。政治部の私を含めた3人は社会部へ異動した形です。
社会部は警戒していました。調査報道に取り組んできた自負があり、「政治部が社会部の領域を争うとしている」と疑っていたのです。特報チームが発足されるまでのあいだ放置され、地方版を編集する窓のない小部屋をあてがわれました。
特報チームの中で調査報道を知っているのは、週刊文春から移籍してきた松田史郎記者だけだったのです。松田記者と話し合い、社会部の調査報道とは別の報道をつくることでメンバーが意気投合しました。
特報チームはノルマがなく、記事を1本も書かなくても新聞製作に影響がなかったのです。
「日本で最も自由な新聞記者になろう!」そう決めて、
①警察や検察を含む当局は回らない
②たれ込みは扱わない
とに大原則を定めました。
私たちには時間があるのです。
原発事故が突き付けた政治部の限界
私は国会内にある与野党の記者クラブへ向かいました。取材体制をどうするか相談する必要があったからです。歴史に残る大災害になると確信したのは、大津波による濁流が家々を飲み込んでいく映像を記者クラブで目の当たりにした時になります。呆然とするよりほかありません。
さらに日が暮れると、福島第一原発で原子力災害対策措置法第15条1項2号に該当する事象が発生し、原子力緊急事態宣言が発せられました。
「停止した原子炉を冷やすための電力について対応が必要な状況です。くれぐれも落ち着いて対応してほしい」と19時45分の記者会見での枝野官房長官の報道にイヤな予感がしました。
菅総理とは毎日のように電話し、リアルタイムで何を考えているかを理解しているつもりでした。原発事故発生後は電話しても応答がなかったのです。15日の未明、うたた寝をしていたときに着信音で目が覚めました。
「細野です。事態はかなり深刻です。ご家族だけでも非難されたほうがよい状況です」電話それで切れてしまいました。
そんなあやふやな報道をすれば、世間を混乱させるだけです。事実を詰める必要があるが、電話はもう繋がりませんでした。枝野官房長官の記者会見で繰り返し報道されている内容を、そのまま新聞に報じました。
政治発表をそのまま垂れ流すのはジャーナリズムではないとの批判が殺到したのです。もっともだと思いました。情報の垂れ流しをしたかったわけではありません。情報を伝えるための「裏付け」をとることができなかったのです。
「池上コラム問題」はなぜ起きたか
安倍首相とコンタクトがとれると自負していた木村社長は、2015年に辞任に追い込まれることになります。
事態が急変したのは、ジャーナリストの池上彰が朝日新聞8月29日朝刊に掲載予定のコラム「池上彰の新聞ななめ読み」に、慰安婦問題をめぐる「吉田証言」を虚偽と範出して過去の記事を取り消した対応は遅きに失したと批判する原稿を寄せました。このゲラに激怒した木村社長が激怒し、週刊文春のウェブサイトで」報じられたのが「池上コラム」問題です。
「吉田証言」「吉田調書」「池上コラム」と世論から批判を浴びて、木村社長の退任は避けられない情勢になりました。
記者個人の「言論の自由」はないのか?
新聞記事への批判を始めると、フォロワー数がぐんぐん伸びました。
「編集局長室が君のツイッターに怒っている」
「読者から会社に苦情が来ている」
「社内から文句が出ている」
そんな自制を促されましたが、職務外活動ですと受け流しています。
ある日、局長補佐から呼び出されて、社内外から寄せられた一覧を示しました。要するに、同僚の記事は批判するなという趣旨なのでしょう。
私たちは言論機関を標榜する新聞社です。公務員や会社員を取材して内部告発を受け、不正を追及しています。何より「言論の自由」を声高に訴えているのです。「池上コラム」の掲載拒否を反省していないのではないかと思っています。
感想
サイト管理人
記者目線での書籍です。
報道現場と世論の反応が面白いと思いました。
批判に対しての世間の反応が爆発的なのだと感じる一方で、朝日新聞の顧客層を守らなければならない側と、ジャーナリストとして自由に表現したい側とで問題があったみたいです。
第3者から見れば、どちらも思うように報道したらいいのでは?と思います。ギスギスした関係を記事にするのでも、つぶやくのでもいいかもしれません。
新聞記者のノンフィクションが読める、貴重な書籍なのではないでしょうか?
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