書籍「ロシア点描」

※サイト管理人が興味をもった部分を紹介します。

はじめに

 日本人のロシアやロシア人に対するイメージも、好ましくないものに転じたかもしれません。だからこそ、ロシア政府、ロシア人について簡単にわかりやすく説いた本書を手に取ってほしいのです。

書籍情報

タイトル

ロシア点描

まちかどから見るプーチン帝国の素顔

著者

小泉悠

東京大学先端科学技術研究センター専任講師。

出版

PHP研究所

ロシア人は突然話しかけてくる

 ロシア人は突然話しかけてきます。特に外国人と触れ合う機会のなかった年配の人は、アジア人が珍しいらしく、地下鉄などで話かけられることが多いようです。

そのターミナルならXXの駅で降りてYY番のバスに乗った方が近いぞ

 と、ニッチな情報を教えてもらうこともあります。

 日本では経験しないタイプの親切であることは間違いないでしょう。

多民族国家ロシア

 多くを占めるのは、白人で正教徒のロシア人です。

 次に多いタタール人は白人ですが、イスラム教徒が多数を占めています。

 サハやトゥバといったシベリアの共和国には、日本人そっくりのアジア系民族も住んでいるのです。

 宗教もチベット仏教であったり、自然崇拝のシャーマニズムであったりします。

 一概にロシア人とはこういうものとはいきません。

 旧ソ連諸国の人々が多数住んでいます。特にアルメニア、キルギス、タジキスタン、ジョージアあたりは自国の産業が乏しいこともあって、多くの出稼ぎ労働者がロシア各地で働いているのです。

クレムリン地下60メートルの秘密施設

 モスクワの市街には、第二次世界大戦前から冷戦期にかけて掘られた地下壕が残っています。

 その中の1つ、モスクワ郊外のクンツェヴォにあるスターリンの別荘とクレムリンまでをつなぐ地下トンネルです。

 トラック2台がすれ違えるほどの広さがあります。工事を担当したのはKGB(国家保安委員会)のNKVD(内務人民委員部)です。

 ドイツの空爆がいつあるかわからないので、すぐにも工事にかからなければなりません。孤児院から子どもたちを追い出し突貫工事で完成させたようです。

 第二次世界大戦後も、モスクワの地下には多くの秘密施設がつくられました。冷戦期も、戦争になればモスクワに核弾頭が降ってくるのは確実だったためです。

 地下施設のいくつかはアミューズメント施設として公開されています。ブンケル42という地下壕は、爆撃機部隊の地下司令部として使われていました。有事の際に避難させられる場所ということで選ばれたようです。

 ブンケル42の地上部はモスクワの市街によくある建物で、地下壕があるとは思えません。ところが中に入ると、地下60メートルまでエレベーターが続いています。電力供給のためのディーゼルエンジンや燃料、食料、循環型空気清浄システムが備わっているのです。600人程度が25日~30日程度自活できます。そして7000平方メートルもある地下施設なので、今は宴会場として使われています。

プーチンが気づいていないこと

※「コウモリ外交」と呼ばれている

 大国同士の関係で巨大な軍事力を持ち、国債政治に及ぼす影響力は無視されるべきではないかもしれません。

 しかし、経済力、科学技術力といった非軍事的な要素の重要性は高くなるばかりです。大国であることにこだわり、国際的に孤立することで経済制裁や外資の逃避を続けば市民は不満に思うでしょう。

 アイデンティティを持つ力はロシア内にも存在します。プーチンはこの力に鈍感であるようです。既に不信感を募らせた市民がいるなかで、最近プーチンは「第5列」という言葉を使って裏切り者扱いをするようになりました。旧ソ連諸国の人々も、モスクワのいうことをなんでも聞くわけではありません。民族が地位を守るのは当たり前のことであって、なんとか立ち回ろうとするものです。

 「大国」としてのロシアを夢みているプーチンですが、近くのものを見落としているのではないでしょうか。

感想

サイト管理人

サイト管理人

文化や生活様式の違いはあるものの、日本人と変わらない生活をする一面がみれて面白かったです。

ロシア政治も、地政学的なもの、大国政治、外交と、簡単にわかりやすく書かれています。

ロシアに対して極端な感情を持っている方へお勧めしたい書籍です。

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