※サイト管理人が興味をもった部分を紹介します。
はじめに
企業統治のケーススタディとして2019年に開かれたLIXILの株主総会を巡る攻防をとり上げることにしました。
日本の上場企業の中には株式しか保有していない創業家出身者がアット的な力を握り、自分の思うままに経営するケースが散見されます。
創業家出身者が、外から読んできたプロの経営者を追い出そうとし、経営者は泣き寝入りせずに戦って株主総会で勝利を収めるという、日本で初めての展開です。
目次
書籍情報
タイトル
決戦!株主総会
ドキュメント
LIXIL死闘の8カ月
著者
秋場大輔
日本経済新聞社で電機、電力、商社、ゼネコン、銀行、証券など各界を取材しています。
出版
文藝春秋
第1章 霹靂
瀬戸さん、急な話だけれど指名委員会の総意で、あなたには辞めてもらうことになりました。交代の発表は4日後の10月31日です。後は私と山梨さんがやりますから
電話の主はLIXILグループ取締役会議長の潮田洋一郎でした。取り付く島もなく「辞めてもらう」と告げられたのです。
第2章 齟齬
瀬戸と潮田とで考えが違うことは、周囲の経営幹部にも分けるほど明確だったのです。ここにきてクビというのはなぜなのか、瀬戸は原因を考えました。
思いついたのはカーテンウォール事業を手掛けるペルマスティリーザの扱いです。芸術家集団はプロジェクト管理が甘く、コストが売り上げを上回る受注が続出しました。見かけ上は利益を計上しているかのように見せる傾向があり、実際は大きな赤字のケツを支払わなければならなかったのです。
瀬戸は、ペルマはお荷物以外の何物でもないと考えていて、売却の意志を固めました。これに異を唱えたのが、潮田です。ペリマに対して他人には理解しかねる強い思い入れがあり、本人独特の思考と環境によるところが大きかったようです。つまり、ブランド好きでした。
第13章 正義
3月21日に機関投資家4社と伊奈が、潮田と山梨の解任を議案とする臨時株主総会を開催を請求しました。
瀬戸が発表したのは自信を含む8人の取締役が選任され、自分がCEOに復帰して舵取りをするというものです。
各メディアが瀬戸に好意的であったことと、豪ファンド運用会社のプラチナム・アセット・マネジメントが潮田と山梨の解任に賛成すると表明し、「道半ばで、経営首脳陣の抗体に納得できない」とコメントをだすなど、他の株主にも影響を及ぼすような後押しがありました。
第20章 奇跡
2019年6月25日、午前11時LIXILグループの株主総会が始まりました。
コーポレートガバナンスに厳しい海外の機関投資家は株主提案に賛成し、保守的な国内の機関投資家は会社提案に賛成すると考えられていました。
けれど、実際のところ国内機関投資家の多くは正義を貫くことが大事と考え、株主提案に賛同してくれていたのです。
日本の企業会社の悪しき習慣を変えるという大義が少しは果たせたといってもよいでしょう。
2019年には54件の株主提案がありましたが、勝利をおさめたのは瀬戸たちだけです。
8カ月間の戦いで、瀬戸は考えられる手を打ちました。そして、瀬戸に手を差し伸べる人がいたからこその勝利です。
感想
サイト管理人
普通の人には縁のない株主総会という舞台に、株主提案という、もっと縁のない機会の物語です。
保守的な国内の機関投資家ですら、株主提案のがメリットに感じたという事例なのでしょう。
湾曲したガラス張りの芸術的な建築物に、日本人の私が興味を持てるかと言えば持てません。きっと疑問に思っていた人が多かったのでしょう。会社で使うにしろ、住むにしろ、勝手が悪そうに思えます。
結果的に求められていない芸術性が、この書籍でいう「正義」によって正されます。正義が下されるまでの8カ月の間で、起こったことをドラマ形式でドキュメントにまとめました。そんな本です。「倍返しだ!」ではないけれど、日常とは違うノンフィクションのストーリーを楽しめるのではないでしょうか?
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