身の維新/著者:田中聡

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※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

書籍情報

タイトル

身の維新

発刊 2023年12月2日

ISBN 978-4-7505-1820-6

総ページ数 223p

著者

田中聡

「歴史と身体」についての関心を中心としつつ、様々な角度からノンフィクションを著しています。

出版

亜紀書房

もくじ

  • 序 医師たちの幕末維新
  • 第一章 国を治す戦へ
    • 古の医道を求めて
    • すべての医療は皇国から
    • 活きている身の理
  • 第二章 病める国の医師の憂国
    • 医師が国を治すということ
    • 治療としての倒幕
    • 幕府医官の漢蘭対決
    • 薩邸浪士隊、西へ
    • 戦のなかの医師たち
  • 第三章 維新後の医師の闘い
    • 追われゆく医師たち
    • 古医道から国語学へ
    • 漢方医の生存闘争
  • あとがき
  • 参考文献

古の医道

 道三流とは、安土桃山時代に曲直瀬道三が創始した流派で、日本漢方の始まりに位置づけられます。

 独川時代前期の医学といえば、ほとんど道三流でした。金・元時代の「李朱医学」を中心に、より発展した明の医学、最新医学を学んだうえで、日本に合うよう多少アレンジしたものです。

 陰陽五行や、気象の関連などの要素を考えあわせて病名や用薬法を求めていました。

 江戸中期になると、吉益東洞という過激な古方医が登場しました。病院や病名を用いず、患者を観察して病毒処方するといった「随証治療」です。

医師の憂国

 松本良順は「東海、東山、北陸諸道の駅妓に、梅毒検査を行うために、人頭税を課し、その税金より実費を去り、余剰の金を手数料として収入する」ことを提案しました。

 公衆衛生の管理システム整備とその利権化によって政権の安定維持に資するという、洋医ならではの発想があったのです。

 長崎でポンペから医事法制なども学んでおり、近代医療と不可分な政治性をすでに理解していたのです。

 衛生管理にはときに暴力的な側面があります。その実行には権力が背景になくてはなりません。検梅制度にも必要なことを知っていました。すでに良順は医学を、治療術にとどまらない、社会制度におよぶ思想として把握していました。京都で神経衰弱に陥った慶喜に多量のアヘンを与えて一晩で完治させたことで信頼を得た良順が、その編成を任させています。

身から国民の体へ

 医師だけでなく、学校教育や啓蒙活動などによって近代的な身体観は常識となり、誰もがみずからを国民の体になりました。

 感染症対策に重点を置き、健康増進の啓蒙は生産性の社会に役立っています。

 人も国も生存競争を戦っているとされ、体はそのための道具として評価されました。

 近代国民国家の基礎は国民の体にあります。医療はそのために大いに役立ったわけです。

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