※ 毎朝、5分以内で読める書籍の紹介記事を公開します。
目次
書籍情報
猫社会学、はじめます
―どうして猫は私たちにとって特別な存在となったのか?
発刊 2024年6月30日
ISBN 978-4-480-86484-0
総ページ数 220p
赤川学
社会学博士。東京大学大学院人文社会系研究科教授。
柄本三代子
斎藤環
筑摩書房
- 序 猫好きの、社会学者による、猫のための社会学
- 第1章 猫はなぜ可愛いのか?
- 「役立つ存在」から「家族の一員」へ
- 「猫の可愛さ」分析のための調査実習
- 七つの「猫の魅力」
- 七つの「魅力」の理論的な関係
- 猫とのあいだでしか「純粋な関係性」は存在しない⁉
- 「猫社会学」の可能性
- 第2章 私たちは猫カフェから何を得ているのか?
- 犬とは異なる出会い方
- 猫カフェの歴史を駆け足で
- 猫カフェとはどんな場所?
- 「猫カフェ」のイメージ
- 猫カフェをどう楽しんでいるのか?
- 「文化」としての猫カフェ
- 猫だけでなく人とも出会える「猫カフェ」
- 第3章 ふつうの猫しかいない「猫島」に人はなぜ訪れるのか?
- 人口54人の小さな離島
- 人気の「猫島」になるまで
- 猫島での体験をネットで「予習」
- ”猫旅”気分の醸成
- 人と猫のあいだに成立するアフォーダンス
- 猫島はなぜ人を移動させるのか?
- 見たいものだけ見えるメガネ
- 猫島と二つの法律
- 「猫はかわいい」のその先へ
- 第4章 猫から見た「サザエさん」 _猫が「家族」の一員になったのはいつか?
- 猫コミックエッセイが想定していること
- 「純粋なペット」から「家族ペット」へ
- 猫の視点から『サザエさん」を分析する
- 「猫のいる場所」「猫による迷惑」「猫と動物医療」
- 猫が人間社会の中へ入っていった高度成長期
- 「家族ペット」につながる猫の描写
- 「猫の家族化」をマンガ作品から読み解く可能性
- 第5章 人と猫は、いかにしてお互いを理解し合っているのか?
- 身近な「自然」で、もっとも具体的な「他者」
- 人間の闇と猫との関係
- 批判理論とはなにか?
- 「コミュニケーションできている」とは?
- 言葉はいらない猫
- 「自己」をもつ猫
- 「猫と広がる社会学」の可能性
- 特別対談 猫が教えてくれた、「ただ、いるだけ」の価値
- 深い喪失感
- 夢に出てきてほしい……
- 猫と「ふたりだけの時間」
- 猫社会学のきっかけ
- 「ただ、いるだけ」の価値
- 社会的孤立と猫
- 猫と人間の関係、これからどうなる?
- あとがき
書籍紹介
猫は私たちの生活に深く根付いた特別な存在です。古代エジプトから現代に至るまで、猫は愛され、崇拝され、時には謎めいた存在として描かれてきました。そんな猫の魅力を社会学的視点から探求する書籍です。
本書の概要
赤川学さんは、社会学者としての鋭い洞察力をもって、猫と人間の関係性を多角的に考察しています。本書では、猫がどのようにして家庭内で重要な存在となり、人々の生活にどのような影響を与えてきたのかを、豊富な事例とともに明らかにしています。
主要なテーマ
- 歴史的背景: 猫がどのようにして人間の友として受け入れられてきたのか、古代から現代までの歴史を紐解きます。特に、猫が疫病の撲滅に寄与したことや、魔女狩りの時代における猫の扱われ方など、興味深いエピソードが紹介されています。
- 社会的役割: 現代社会における猫の位置づけについて考察します。猫カフェの流行や、SNSでの猫動画の人気など、猫がどのようにして現代のデジタル社会で重要な存在となったのかが語られています。
- 心理的影響: 猫が人々に与える心理的な影響についても言及されています。猫の癒し効果や、ストレス軽減の役割など、科学的な視点からも猫の持つ力が解説されています。
特筆すべき点
赤川学さんの筆致は非常に読みやすく、学術的な内容でありながらも、一般読者にも分かりやすいように工夫されています。また、豊富なイラストや写真が随所に散りばめられており、視覚的にも楽しめる一冊です。
おすすめの読者
- 心理学や動物行動学に興味を持つ方
- 猫が大好きな方
- 社会学に興味がある方
- ペットと人間の関係性について深く知りたい方
試し読み
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
猫が飼われる理由
核家族化や少子化が進む日本では、人間以外にも愛情を注ぐ対象が必要です。
猫は、家猫にすれば比較的飼いやすい動物であり、写真や動画にも収めやすい特徴があります。猫には、一方的に愛情を捧げることで、たまに振り向いてもらえたと錯覚することがあります。たとえ猫が人間に自分の匂いを擦り付ける行動であっても、人間側はそれを喜びとして受け入れ、上手に共存しています。
猫は、人生に豊かさをもたらしてくれる魅力的なパートナーです。人が集まるところには、必ずと言っていいほど猫がいます。これまで人間と共に暮らしてきた猫との関係を見つめ、猫と人間の幸福な未来を考えていきたいと思います。
猫だけなく人にも会える「猫カフェ」
猫カフェでは、多くの人が積極的に猫と遊んだり、他の顧客と猫が遊ぶ様子を楽しんでいます。また、猫カフェでの出会いがきっかけで結婚に至ったカップルもおり、他者と交流する場所としても利用されています。
猫カフェは「猫との出会いの場」として重要な役割を果たしており、里親募集型の猫カフェも増加しています。ペットロスを経験したお客さまが、猫カフェで猫を引き取るケースも多く、引き取った猫を最後まで看取ることができたと感謝する方もいます。
猫を介したビジネスとして、今後もより良く発展することを期待しています。
人間の闇と猫との関係
社会が抑圧的になったり、暴力的で閉鎖的な状態になると、人々は他者に対して非常に暴力的になります。1730年代後半にパリの印刷工場で働く職人たちが、劣悪な労働条件に不満を募らせ、親方夫人などがかわいがる猫を殺し、やがて街中の猫を虐殺する事件がありました。
当時の労働階級の人々にとって、目の前の猫はただの動物に過ぎませんでした。しかし、ブルジョアジーにとっては猫は家族同然の存在となっており、これが事件の背景となったのです。
人間が対立や和解を起こす際、その象徴として猫を例えることができます。猫を通じて批判理論の構想を具体化することも可能でしょう。