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目次
書籍情報
それはわたしが外国人だから?
日本の入管で起こっていること
発刊 2024年4月15日
ISBN 978-4-909753-17-5
総ページ数 183p
安田菜津紀
フォトジャーナリスト。認定NPO法人 Dialogue for People 副代表。
東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。
ヘウレーカ
- はじめに
- 01 在留資格がないと、公園のなかの川がわたれない?
- リアナさんのお話
- 3つのことばがとびかう家族
- いなくなってしまったお父さん
- とつぜんはじまった「自由に移動ができない」くらし
- 「働いてはダメ」で苦しくなった生活
- 「とにかく帰れ」という法律になってしまう?
- リアナさんの夢と、その3つの理由
- ついに変わってしまった法律
- リアナさんのお話
- 02「日本の子どもたちに英語を教えたい」と夢見ていたのに
- ウィシュマさんのお話
- のびのびと育った三姉妹
- 日本の子どもたちに英語を教えてみたい
- とぎれてしまった家族への連絡
- スリランカに帰れず、つづいた収容
- ようやく見つけた、外に出る希望
- 点滴もされず、入院もできず……
- とつぜんの知らせと母の悲しみ
- 悲しい再会
- 真相を知りたい家族の前に立ちはだかるもの
- ウィシュマさんのお話
- 03 命の危険からのがれてきたのに
- アハメットさんのお話
- 自然にかこまれた農村のくらし
- 禁止されていた民族のことば
- こっそり祝ったクルドの正月
- 安全な場所をもとめて、日本へ
- どうして日本は自分たちを守ってくれないの?
- ふたたび、ひきさかれた家族
- ニュージーランドでむかえた新しい生活
- アハメットさんのお話
- 04 外国人の「管理」「監視」はいつからはじまったの?
- 石日分さんのお話
- 多様な人びとがくらす桜本のハルモニたち
- 「キムチくさい」と言われつづけた子ども時代
- 母のふるさとに帰ろうとしたものの……
- 一方的に「日本人」「外国人」にされた在日コリアンたち
- 石日分さんのお話
- 05 新しい法律のなにが問題? ほんとうに必要なしくみとは?
- 入管法のお話
- 06 いっしょに遊ぼう、ほしい未来をつくろう
- 難民・移民フェスのお話
- おわりに
- 謝辞
- もっと知りたいQ&A
- Q1 入管ってなんですか?
- Q2 入管施設への収容や、送還ってどういうこと?
- Q3 仮放免って、どうやって決められるの?
- Q4 在留資格のない子どもは日本にどれくらいいる?学校には行っている?
- Q5 日本にくらす、在留資格のない子どもたちはどうなるの?
- Q6 学校にかよわなくなると、在留資格がなくなってしまうの?
- Q7 学校にかよえなくても、仕事はできるのでは?
- Q8 ウィシュマさんはどうして収容されうつづけたの?
- Q9 具合がわるいのに、どうしてすぐに病院に行かせてくれないの?
- Q10 日本が好きな人だったのに……
- Q11 入管ではどれくらいの人がなくなっているの?
- Q12 在留資格がないのは「わるいこと」なのでは?
- Q13 ほかの国でも長いあいだ収容されてしまうの?
- Q14 日本にはどれくらいのクルド人の人たちが住んでいるの?
- Q15 世界ではどれくらいの人がふるさとをおわれているの?
- Q16 移民ということばもよくききますが、難民とどうちがうの?
- Q17 日本はどれくらい難民を受け入れているの?
- Q18 なぜ日本は難民に認定される人がすくないの?
- Q19 飛行機で逃げるにはお金がかかるね。お金をもっていても難民なの?
- Q20 避難してきた人たちは、日本でどんなことに困っているの?
- Q21 仕事をしたいから難民申請している人もいるの?
- Q22 どうして日本はクルド人を難民として受け入れないの?
- Q23 日本で難民としてみとめられないなら、ほかの国に行けばいいのでは?
- Q24 難民の受け入れって負担なの?
- Q25 外国人がふえると犯罪がふえるってネットで見たけど、ほんと?
- Q26 「外国人は危ない」っていう偏見が広がると、どんなことが起きるの?
- Q27 日本でのくらしがたいへんなら、帰国すればいいのでは?
書籍紹介
日本社会における外国人差別や偏見は、長い間見過ごされてきた問題の一つです。現実を鋭く描き出し、多くの読者に深い感動と考えるきっかけを提供します。
書籍概要
安田菜津紀さんは、フォトジャーナリストとして多くの社会問題に取り組んできました。本書では、日本で生活する外国人やハーフの人々が日常的に直面する差別や偏見について、彼らの声を直接拾い上げています。インタビューや自身の取材経験を通じて、個々のエピソードを丹念に描き、読者に多様な視点を提供します。
内容の見どころ
- 実際の声に基づくリアリティ 安田さんは、外国人やその家族、ハーフの子供たちに直接取材を行い、彼らの経験をリアルに伝えています。これにより、読者は現実の厳しさを身近に感じることができます。
- 深い洞察と分析 単に事実を伝えるだけでなく、その背後にある社会的、文化的な背景についても詳しく分析しています。なぜ差別が生まれるのか、その根本原因に迫る洞察は非常に考えさせられます。
- 写真の力 フォトジャーナリストとしての経験を活かし、安田さんは言葉だけでなく、写真を通じて問題の深刻さを視覚的にも伝えています。これにより、読者は感情的にも強く訴えかけられます。
心に響くメッセージ
この書籍は、日本社会の一部として受け入れられながらも、多くの困難に直面する外国人やハーフの人々の姿を描いています。それは単なる問題提起にとどまらず、読者一人ひとりに対して「自分に何ができるのか」を問いかけるメッセージでもあります。共生社会の実現に向けて、私たちがどのように行動すべきか、そのヒントがこの本には詰まっています。
最後に
差別や偏見に対する理解を深め、日本社会の多様性を尊重するきっかけを与えてくれる一冊です。安田菜津紀さんの真摯な取材と熱意が詰まったこの本を、ぜひ手に取ってみてください。あなた自身の視点が変わること間違いなしです。
試し読み
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
「働いてはダメ」で苦しくなった生活
仮放免中のリアナさんの両親は働くことができず、教会などからのわずかな支援に頼って生活していました。一食分の冷凍チャーハンを三等分して食べたり、ときには両親が食事を我慢することもありました。おかずはもちろんありません。リアナさんは学校の給食をおかわりして食べていましたが、バスケットボールの運動量に対して栄養が追いつかず、痩せたままで部活動を続けていたのです。
高校進学の際、リアナさんはバスケットボールの推薦で東京の高校に進むことを決めました。県境を越える学校だったため、通学には入管からの許可が必要でした。定期券を買う余裕はなく、片道50分の通学を自転車で往復する日々が始まりました。
リアナさんの家族は三階建ての教会の一角にある部屋に住んでいました。土日もバスケットボールの練習があり、毎日がハードなスケジュールでした。
その後、リアナさんはコーンロウという髪型などの文化差別に直面しながらも、入管法などの困難を克服して、看護師になる夢を叶えました。
点滴もされず、入院もできず
ウィシュマさんは仮放免の申請中でしたが、許可が下りる兆しは一向にありませんでした。その間、入管管理室で隔離されている彼女は、満足に食事を取ることができず、危険な状態に陥っていました。それでも、コロナ禍の影響もあり、外の病院に入院することも、必要な点滴を受けることも許されませんでした。
ウィシュマさんが亡くなったことを知った妹は、支援してくれた弁護士たちと共に、監視カメラの映像を見せて欲しいと訴えました。しかし政府は、入管に収容し続けたことがウィシュマさんの死因であるとは認めていません。
5か月以上が過ぎ、ようやく2時間分のウィシュマさんの生前の映像がご家族に公開されましたが、それは政府関係者とご家族のみが見ることができるという条件付きでした。しかし、ウィシュマさんが弱って「病院に行かせてください」と訴える姿に耐えられず、映像を全て見ることはできなかったようです。
さらなる真実を明らかにするために、日本政府を相手に裁判を起こすことを決めました。その裁判はいまだに続いています。
入管では過去16年間で18人が亡くなっており、暴力や人権侵害が行われることもあります。入管では、具合が悪いふりをして脱出し、重大な犯罪に加わろうとすることもあるため、ウィシュマさんのケースでも「嘘をついているのではないか」と疑う職員がいたことが明らかになっています。
日本は自分たちを守ってくれないの?
日本はそもそも難民をほとんど受け入れていません。国連の機関UNHCRが認めても、日本政府が動かなければ状況は変わりません。
希望を抱いて日本に来たアハメット一家は、追い詰められた末、国連大学の前で泊まり込みの抗議活動を行いました。チラシを配り、署名運動も始めました。約2か月続けたところで、ようやく国連が話し合いの場を持つことを約束しました。
アハメットさんは翌年、入管に向かいました。仮放免中のため、延長手続きを行う必要があったのです。いつものように窓口で手続きを済ませ、家族と一緒に帰るはずでした。しかし、支援者とアハメットさんの妻がいくら待っても、アハメットさんと長男は戻ってきませんでした。
なんと、アハメットさんたちを載せた飛行機が離陸してしまったのです。これまで、難民をこのように堂々と送還する例はありませんでした。弁護士も戸惑いを隠せません。
6年前にも日本に避難してきたクルド人男性が、難民として認められずに帰国したところ、自宅で殺害される事件が起きたばかりです。
ほんとうはどんな法律が必要なのか
日本の法律は、日本国籍を持たない人々を「生活する人」としてしっかりと扱うように変わる必要があるのではないでしょうか。
1993年に制定された「外国人技能実習制度」は、本来、日本で技術を学び、それを母国に持ち帰ってもらうことを目的としていました。しかし、実際には人手不足を解消するための施策として利用されています。アルバイトとして働く場合、最低賃金での労働が可能です。しかし、品出しやレジ打ち、掃除、軽い営業などのマルチタスクができなければ、外国人労働者は低賃金で酷使されることがあります。借金をして日本に来た実習生の中には、職場で暴力を振るわれても我慢するしかない人もいるようです。
外国人をこの社会の一員として共に生きていくためには、技能実習制度が経済のためだけに利用される現状を見直すことが重要です。