アメリカの悪夢/著者:デイヴィッド・フィンケル

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書籍情報

タイトル

亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズV-1

アメリカの悪夢

発刊 2024年8月8日

ISBN 978-4-7505-1847-3

総ページ数 324p

著者

デイヴィッド・フィンケル

ジャーナリスト。
ワシントン・ポストで23年間、記者として活躍した。

出版

亜紀書房

書籍紹介

 イラク戦争後の帰還兵たちの現実を鋭く描いたノンフィクション作品です。フィンケルは、ピュリッツァー賞受賞のジャーナリストとして知られ、その筆力は並外れたものがあります。本書では、戦場から戻った兵士たちが抱える心の傷、いわゆる「見えない傷」に焦点を当て、戦争の本当の代償を私たちに突きつけます。

戦争の後遺症とは何か

 『アメリカの悪夢』は、戦争が終わった後の兵士たちの生活がどれほど過酷なものかを鮮明に描いています。彼らは戦場で命を懸けて戦いましたが、帰国後に待ち受けていたのは、新たな戦い――PTSD(心的外傷後ストレス障害)との闘いです。フィンケルは、彼らの苦しみや孤独、そして家族との葛藤を丹念に描き出しています。

家族との絆と葛藤

 特筆すべきは、フィンケルが帰還兵だけでなく、その家族にもスポットライトを当てている点です。戦争は、兵士だけでなく、その家族にも深刻な影響を与えます。妻や子供たちは、愛する人の変貌に戸惑い、時にはその変化に耐えきれずに崩壊してしまう家庭もあります。フィンケルは、こうした家族の苦悩を丁寧に描き、読者に戦争の「後遺症」がいかに深刻であるかを伝えます。

「見えない傷」に向き合う

 フィンケルの文章は非常にリアルであり、時に読む者に重い現実を突きつけます。彼は、帰還兵たちが直面する精神的な苦痛や、社会復帰の難しさを冷静かつ詳細に描写しています。戦争の終結が必ずしも平和の到来を意味しないことを、フィンケルは本書を通じて読者に理解させます。

試し読み

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

イラクから生還した者

 時々、両手を合わせて力を込め、絶望的な様子を見せながら、自分の将来に不安を抱くことがあります。妻は楽観的ですが、最近は憂鬱な気持ちに抗おうとすることが多くなっているようです。そんな中、ブレント・カミングズはいつの間にか中年に差し掛かっています。

 戦争がひとつ終われば、また次の戦争が始まる——それがアメリカでの生き方だとブレントは感じています。イラクから戻って以来、彼は断片的な眠りを繰り返す日々を過ごしていました。目を覚まし、悪夢を見ずに朝を迎えられることに安堵するのです。

 13年前、ブレントは何十人もの陸軍兵士と共に荒涼とした地に立っていました。そこに飛んでくるのは、自分たちを襲うロケット弾かもしれませんし、イラクから救い出してくれるヘリコプターかもしれませんでした。

 1年の間に何十人もの兵士が負傷し、母国へ送り返されました。また、14人の仲間が戦死し、生き残った者たちはただヘリコプターを待つばかりでした。やがて広い空に小さな2つの機影が浮かび、瞬く間に近づいてきました。兵士全員がヘリに乗り込み、空高く舞い上がり、故郷へと向かったのです。

トランプに不満

 ブレントがドナルド・トランプについて考えるようになったのは、高校時代、友人のリッチとアイリーンと一緒にニュージャージー州をドライブしていたときのことです。坂の多い田舎道を走る、楽しい時間でした。ドナルド・トランプはラジオにゲストとして時折出演しており、自慢げにワインやステーキ、カジノ、そして数えきれないほどのセックスについて話していました。あの下品な振る舞いをしていた男が、やがて大統領に選ばれるとは誰が想像したでしょうか。

 トランプが大統領になってから、ブレントは苦しみました。彼のツイートには、弱い者いじめ、自己中心的な態度、そして嘘によって誰かを悪者に仕立て上げる下品さがあふれており、ブレントはそれに頭を抱えていたのです。その男が軍の最高司令官にまでなってしまったのです。

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