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目次
書籍情報
経営中毒
社長はつらい、だから楽しい
発刊 2024年3月12日
ISBN 978-4-569-85642-1
総ページ数 366p
徳谷智史
エッグフォワード株式会社 代表取締役社長。
大手からスタートアップまで、1000社超の企業変革コンサルティングを手掛ける。
個人向けには、2万人を超えるビジネスパーソンの意思決定・キャリアを支援。
PHP研究所
- 読者の皆さんへ
- はじめに 社長はつらい? それとも楽しい?
- 経営が計画通りに進むことはありえない
- 社長の誤算を「疑似体験」する本
- 「困難との向き合い方」に企業経営の要諦が詰まっている
- 「孤独」「孤立」に苦しむリーダーを救いたい
- もしも、あなたが社長じゃなかったら……
- 第1章「資金繰り」は最初に直面する、社長共通の悩み 人徳が問われる「カネのマネジメント」
- 「うわあ、また来たな……」社長にとって給料日は恐怖でしかない
- 社長になると、給料日の間隔が180度変わる
- 売上が入る前に支払いが生じる恐怖
- みるみるうちに資金が「溶けて」いく
- 資金繰りに謀殺されると、会社の成長が止まる
- 「未来を見据えた経営」をしたくてもできない本当の理由
- 先行投資すべきか、せざるべきか
- 社長にとってのP/L、B/S、C/F
- 「キャッシュがない!」が起こる理由
- 借りたお金は、そう簡単に返済できない
- 人は簡単にお金を出したがらない。「出資したくなる社長」になれ!
- 創業初期は投資家から資金調達する
- 上場は投資家への最大の「恩返し」
- エクイティは投資家選びを間違えると痛い目にあう
- 会社が乗っ取られ、創業者が追い出されることも
- 信頼できる投資家を見極めるには?
- ビジネスモデルよりも「社長の本気」を見られている
- 創業初期の会社の価値は、「数値」だけでは決まらない
- 投資家は「未来」を見て、銀行は「過去」を見る
- マクロ環境次第で調達状況が激変することも
- 給料日とは、社長が最も「感謝」をする日
- Column session1 「企業支援のプロ」を自負して起業したが……
- 不器用な私んおコンサル駆け出し時代
- 「会社の看板」が通用しない
- 事業不振、資金の枯渇、人の離脱……。誤算に次ぐ誤算
- 「うわあ、また来たな……」社長にとって給料日は恐怖でしかない
- 第2章 会社は99.9%、「人の問題」で崩壊する 会社の未来を左右する「ヒトのマネジメント」
- ともに働くメンバーは「仲間」でもあり、他人でもある
- スタートアップの多くは、創業から1年前後で人が辞めていく
- なぜ経営メンバーとのケンカが発生するのか
- 一人、また一人と経営メンバーが辞めていく日々
- ビジョンが強くても、お金がなければ人は離れていく
- 「そこまで求めないでほしい」社員の本音
- ストックオプションだけで社員は引き留められない
- ミッションやバリューを腹を割って話す
- 「たった一人の採用」で会社は成長する?それとも傾く?
- 小さい組織だからこそ生じる社員同士の揉め事
- スキルにつられて「価格基準が違う人」を採ると、失敗する
- 「社長は人を見る目がない」は本当か
- 社長の悪口を言う幹部を入れると、組織は崩壊する
- 「肩書き」にこだわる人は要注意
- 前職のツテを使って”した感”を出そうとする人は危険信号
- メンバー構成に「ダイバーシティ」を取り入れるベストタイミング
- 中長期視点では、採用に多様性を持たせる
- 自分と異なる「勝ちパターン」を持つ人を採用する
- エース社員や社長のリソースを、目先の売上のためだけに割いてはいけない
- 「2割の働かないアリ」を戦力にするには
- 労働時間が減っても、社員の不満はなくならない
- 来る社員を拒まず、去る社員を追わず
- 外から優秀な選手を入れると、元からいる選手のモチベーションが下がる
- 社員の退職にどう気持ちの折り合いをつけるか?
- 「活躍できていない、うちでは厳しいかも」という社員にかける言葉
- 退職者がゼロなら良いわけではない なぜ功労者が悪影響を及ぼすのか
- 社長自身の甘えにも原因がある
- 「人が辞める原因は社長にある」という自覚を持て
- 株主から「経営陣のレベルが低い」と言われ、役職変更を余儀なくされる
- 別れは生じるもの。そのなかでどうにかするしかない
- 人の問題と喜びは経営に永遠についてまわる
- Column session2 人の問題を引き起こさないための「給料」の支払い方
- 前職の水準で給料を払うと失敗する
- 創業初期の給料は低く抑えていい
- 給料が払える会社にしていければよいが……
- ともに働くメンバーは「仲間」でもあり、他人でもある
- 第3章 営業vs.エンジニア、中途vs.古参……組織の崩壊はとつぜん起きる 文明の衝突を起こさない「組織のマネジメント」
- 「組織のタコツボ化」が招く混乱
- スタートアップがぶち当たる「社員100人の壁」
- 職場で起こる「文明の衝突」
- 「人の採用」だけでは解決しない
- 組織崩壊を防ぐ「二つの対策」
- 会社が一定規模になったら、「給料のものさし」をつくる
- 制度だけ変えてもうまくいかない
- ツールや調査を入れたがるHR責任者に注意!
- 優秀なHR責任者は社長と「戦う」
- 社長はどこまで現場に介入していいのか
- 人を信用できない社長の本音
- 社長自ら変わろうとする気持ちがあるか
- 現場に口を出しがちな社長に欠けている視点
- 悪い情報が上がってこないのは社長のせい
- 組織の「未達グセ」を変えるには
- 株主から冷たい視線を向けられる
- 「成長しない痛」によく効く薬はあるか?
- KPIの背負わせすぎに注意
- 組織づくりには、社長自身の思想や本気度が表れる
- 目標以上に組織は成長しない。
- 社長がチャレンジングな目標を信じる
- 株主・投資家に対して、「後だしジャンケン」をしない
- 「社長がやりやすい組織」では強くならない
- Column session3 横領、パワハラ、情報漏洩……コンプライアンスを軽視する会社が招く悲劇
- 「え、あの人が……」コンプライアンス違反は予期せずやってくる
- コンプラ違反を責めても問題は解決しない
- さらなる違反を予防するには「線引き」と「貫くこと」が大事
- 「組織のタコツボ化」が招く混乱
- 第4章 最初に考えたプロダクトはなぜうまくいかないのか 0→100を可能にする「事業のマネジメント」
- 「9割失敗する」商品・サービスに欠けている視点
- 満を持してリリースするも……
- 独りよがりにつくらず、ユーザーの反応を見ながらつくる
- スタートアップと大企業の商品開発の「明らかな違い」
- お客様は「課題」を教えてくれない。自力で見つけよ
- プロダクトを試してもらうときに意識すべき三つの要素
- ペルソナを設定するメリット
- ペルソナは一つである必要はない
- 成功するペルソナ
- ユーザーインタビューで「リアルな声」を取り組む
- 五つの判断軸から「寄せていくペルソナ」を決める
- ペルソナに頼りすぎず、ユーザーに試してもらいまくる
- 「選んでもらい、買ってもらう」ための高いハードルを越えるには
- たくさんの付加価値より「一点集中突破」
- 安くたくさん売るか、高くして粗利をとるか
- 価格を決めるアプローチ
- ビジネスモデルから考える
- 競合との差別化要素を明確にする
- 市場が適正価格を決めてくれる
- 「あったらいいな」と「お金を払ってまで使いたい」は天と地の差がある
- 顧客はスイッチングコストをかけてまで変えたくない
- 提供価値があいまいなまま営業やマーケターに頼らない
- 理想形までに10年近くかかることも
- 「マクロ環境」だけを意識しすぎない
- マーケットインでも売れない時は「方向性をズラせ」
- うまくいかなければ「ピボット」する
- 「顧客」「課題」「提供価値」のうち、一つだけを変える
- ピボットは何回してもいい
- 打率より打席数。プライドを捨ててやり続ける
- ビジネスで必ず直面する「パクり」「パクられ」問題
- ビジネスの王道は「TTP」
- 社内のキーマンが転籍先で類似プロダクトを開発⁉
- 「パクり」にどう立ち向かうか?
- じぎょを世に出すという宿命
- Column session4 ビジョンから始めよ 起業家が最初にしなければならないこと
- 伸び悩むスタートアップの特徴
- 起業家の「原体験」がベースになる
- エッグフォワードをなぜ立ち上げたのか?
- 人に自慢できる「原体験」なんて要らない
- 社長とメンバーの間で必ず生まれるギャップ
- 「9割失敗する」商品・サービスに欠けている視点
- 第5章 「事業の売却」から新たな経営がスタートする 失敗しない「スタートアップの出口戦略」
- 社長から見たIPOは「出口」ではない
- IPOやM&Aによってリターンを目指す
- 社長は会社を投げ出せない
- 情報開示からコンプライアンスまで、一筋縄ではいかぬ上場準備
- 資金調達しやすくなり、信頼度も上がる
- 持続的な成長を迫れるプレッシャー
- 上場後に株を売って辞める社員たち
- 創業者は上場したらハッピーか?
- M&Aはさまざまなドラマを生む
- M&Aパターン
- 一部の事業を売却する
- 会社を丸ごと売却する
- 子会社になる
- マッチングサービスのような手段で売却債を見つけることも
- 赤字の会社や事業でも売却できるか
- 「人+事業」で価格交渉する
- M&Aは、社員に大きな負担がかかる
- 環境が良くなることもあれば、悪くなることも
- M&Aパターン
- 「社長の立場を離れたい……」と思ったら
- 会社を畳みたいと思ったら、畳んでも良い
- 「がちがちの鎧」を外す勇気を持つ
- Column session5 「二代目社長が会社をつぶす」には理由がある
- 跡を継いだのに、お飾りの状態に……
- 周囲の意見に耳を傾けず「お山の大将」に
- 素晴らしい二代目は、自己否定しながら、アップデートしている
- 娘婿が次期社長になると、「お手並み拝見」になりやすい
- 二代目社長は「3・3・3」を意識することが大切
- 功労者を切らなければいけないときも
- 社長から見たIPOは「出口」ではない
- 第6章 「24時間悩み、365日決断」難しいがクセになる経営判断 会社の未来を左右する「社長の意思決定」
- とにかく速く、時には柔軟さも必要
- 先延ばしにしても良いことはない
- 社長の朝令暮改は悪いことか
- 外部の「壁打ち役」をつくる
- 昔の決断を悔やんでも仕方ない
- 「撤退」の判断こそ経営の醍醐味だ
- 会社の経営が傾く原因の多くは「撤退の遅れ」
- 意思決定の失敗ケース
- サンクコスト
- 過去の成功体験
- 「撤退のガイドライン」を設定しておく
- 目策の売上だけで判断しては危ない
- やっぱり最後は人を見る
- 答えなき問い。会社はどこまで成長し続けなければならないのか?
- 社長と社員は「成長」でコンフリクトを起こす
- 成長する蓋然性はロジカルに説明できないが
- 目標を決めるのは社長しかできない仕事
- バーンアウト問題とどう向き合うか
- 社長は「鈍感」になっていく
- 社長の意思決定が会社の未来を創る
- Column session6 20%のパフォーマンスを発揮する社長のルーティン
- セルフメンテナンスの第一歩は「時間の使い方」から 社長の1日を追う
- 24時間365日会社のことを考えている
- あえて何も考えない時間をつくる
- なぜ社長はトライアスロンにはまるのか
- とにかく速く、時には柔軟さも必要
- おわりに あなたは孤独な社長ではない
紹介文
経営の世界において成功と挑戦が共存する現実を、リアルでありながらもユーモラスな筆致で描いています。本書はPHP研究所から出版されており、経営者特有の苦悩と喜びを赤裸々に語る一冊です。
経営者であることの「つらさ」とは、常に変化する市場環境の中で迅速な判断を求められるプレッシャーや、従業員との関係、事業の未来を見据えた戦略の立案など、数え切れないほどの責任と期待に直面していることです。しかし、その一方で「楽しい」と感じる瞬間も多々あり、それは自らの決断が直接会社の成長に繋がった時や、困難を乗り越えた達成感、そして何よりも自分のビジョンが形になっていく過程そのものから得られるものです。
この本は、経営者が直面する現実の厳しさとその中で見出す楽しさを、生々しくもユーモラスに描いています。経営という重責を担いながらも、そのプレッシャーを糧に変える術を身につけることは、どの業界においても重要なスキルです。本書には、そのヒントが満載です。
経営者だけでなく、リーダーシップを学ぶすべての人々にとって、価値のある教訓を提供しています。リアルな体験に基づくアドバイスは、勇気とインスピレーションを与えることでしょう。
試し読み
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
みるみる資金が溶けていく
どんな社長も最初から自転車操業的な経営を望んでいるわけではありません。通常、ある程度の資金を工面してから事業を始めるのが一般的です。
しかし、創業初期の企業では、最初から安定して利益が出ることは稀です。予想を下回る売上に直面することが多くあります。
会社が存在するだけで、容赦なく費用がかかります。これらの費用は通常、予想を超えるものです。事業を成長させるためには、人件費や設備、広告にも先行投資が必要で、気づけば調達した資金が急速に減っていきます。
資金を借りることができれば解決策の一つですが、これは容易ではありません。銀行や信用金庫から資金を借りるためには、審査用の詳細な書類を大量に準備する必要があり、資金繰りに困って銀行に相談しに行っても、その打ち合わせが1ヶ月以上先になることも珍しくありません。
「ランウェイ」とは、使える資金が尽きるまでの残された時間を指しますが、資金繰りがうまくいかないと、それがいよいよゼロに近づいてしまいます。
あったらいいな~お金を払ってまで使いたいには天と地の差がある
創業初期には、「あったらいいな」と周囲から言われることが多く、そこから手ごたえを感じる商品やサービスがあります。しかし、これは大きな落とし穴があるのです。
「あったらいいな」と「お金を払ってまで使いたい」の間には、天と地ほどの差があります。単に「あったらいいな」と思われるアイデアに基づいて製品を市場に出してしまうと、売れないことが往々にして起こります。
また、顧客が新しいサービスを使う場合、彼らは既に他の競合サービスを使用しているはずです。そのため、顧客に自社の商品へ切り替えてもらう必要がありますが、この切り替えに関わる時間と費用を「スイッチングコスト」と言います。
スイッチングコストを払ってでもサービスを変更する価値があるかどうか疑問に思われることが多く、「現状維持」の選択がなされがちです。たとえ影響が少ないサービスでも、容易に変更されることはありません。加えて、上司が反対すれば、そのサービスは採用されないでしょう。
どれだけ価値のあるサービスであっても、導入に至る意思決定のプロセスを理解し対策を立てなければ、購入されることはありません。
会社を畳みたいと思ったら
IPOやM&Aに至る起業家はほんの一握りです。多くの社長は起業に励むものの、事業を畳むことを考えているのではないでしょうか。
スタートアップの社長は、しばしば「責任ある立場から一時的に離れたい」と感じることがあるでしょう。
本当に事業を畳みたいなら、それも一つの選択肢です。社長として続けるためには、「孤独に耐えるエネルギー」が必要ですが、そのエネルギーが尽きかけているなら、無理に続ける必要はありません。
畳めない理由として、顧客、従業員、投資家への責任を挙げることが多いですが、実際にはプライドや未練など心情的な要因が大きいことが多いです。もし続けられないと感じるのであれば、事業の畳み方を検討することをお勧めします。
昔の決断を悔やんでも仕方ない
自信を持って意思決定できる社長はいません。人事に関する決断は特に大きな葛藤を伴うものです。
社長であろうとなかろうと、過去の決断を振り返って悔やんだところで何も生まれません。結局は前を向いて、意思決定を活かしていくしかないのです。
厳しい状況に追い込まれるような意思決定の結果であっても、次にどう活かせるかと考えるしかありません。
意思決定したことには固執せず、様子を見ながら軌道修正しましょう。そのサイクルを速く回すことのほうが大切だったりします。
変化が大きく、不確実なスタートアップで成功確率を高めるには、一回の意思決定に囚われず、改善のサイクルをとにかく速くすることを心がけるといいでしょう。