ビジネス書「成しとげる力」

※読書推薦人が興味をもった部分を紹介します。

はじめに

 日本電産を創業したのは、28歳のときです。人もいなければ、金もない、設備はもとより、技術も知名度もない、まさにゼロからのスタートでした。

 資金不足、人材不足、オイルショック、リーマンショックと、どん底に突き落とされました。しかし、気概と執念だけは誰にも負けません。その思いはけっして揺らぐことはありませんでした。

書籍情報

タイトル

成しとげる力

著者

永守重信

 28歳で従業員3名の日本電産株式会社を設立しました。その後M&A戦略を展開し、世界1のモーターメーカーに育て上げた人物です。

 学校法人永守学園理事長に就任し、グローバルに通用する即戦力人材の輩出に情熱を燃やしています。

出版

サンマーク出版

一番を目指せ!力はあとからついてくる

夢は、1番になること

 こどもの事から「一番になること」しか考えていませんでした。銭湯にいったときも靴を入れるのは決まって、一番の下駄箱です。

 会社を創業したときに掲げたのも、「世界一のモーターメーカーを目指す」という夢でした。

  • 10年後には、京都の一番良い場所に会社を置く
  • 20年後には、自社ビルを建てる
  • 30年後には、京都でいちばん高いビルを建てる
  • 50年後には、売上高1兆円をめざす

 このとき、明言したとおりに、夢をかなえてきました。

 だから、会社の創業以来、従業員に「一番をめざせ」と繰り返し語り、自らをも鼓舞し続けてきたのです。

いまは「1番」がひとり勝ちする時代

  • 今は1番が「ひとり勝ち」する時代
  • 2番でもいいかと考えたらダメ
  • 人の真似はイヤだとこだわるな
  • 独自の強みを入れる
  • どこが売りなのか分析をする
  • 競争が少ないジャンルを狙うのも1つの戦略

 今では、シェア1位が全体の6割以上の利益をもっていってしまいます。3位でようやく収支トントンというのが現実です。

 2番でもいいと考えていたら、あっという間に3番以下に成り下がってしまうでしょう。

 オリンピックの金メダルと銀メダルにも同様のことがいえます。金メダルと銀メダルでは、天と地ほどの差があります。

 これが社会の厳しい現実です。

 「人の真似はイヤだ」とこだわり、1から始めたのでは時間がかかり時代に取り残されてしまいます。けれど、独自の強みを注入できなければ世界一の地位を得ることはできません。

 どこが売りなのか、お客様がどこに魅力をかんじているのかを徹底的に分析することが大切です。

 変化のスピードはどんどん速くなっていて、人の後ろからついていっても成功はおぼつきません。競争が少ないジャンルを狙うのも1つの戦略でしょう。

己の実力を知ろう

  • 小さい成功体験を重ねる
  • 自分の実力を正しく認識する

 どんなにちいさくてもよいから成功体験を重ねることです。それによって自身がつき、更なる成功につながります。

 私は山登りが好きで、よく山に登っています。負けず嫌いなものですから、速いペースで上り、どんどん他の登山者を追い抜いていきます。
 八合目あたりで体力を使い果たし、足が一歩も動かなくなってしまうことがありました。すると、団体を引き連れているガイドさんが言うのです。
「ペースを守らないと、あの人のようになりますので、気をつけましょう」と。

 自分の実力をただくし認識することも大切なのです。

「できる」と100回となえよ

  • 「できる」と何度も呼びかけていると、できるような気がしてくる
  • 明るい言葉を使えば、明るい未来が見えてくる

 「今の製品より重さは半分でパワーは倍。加えて消費電力が半分で賄えるものが作れますか」と無理難題を押し付けて、あきらめさせようとする会社がでてくるのです。
 それでも、わたしは「ありがとうございます」といって仕事を引き受けてきました。

 会社に戻り、「どうすればできるだろうか」を知恵を絞りながら考えていたものです。

 試行錯誤のすえ、重さは20%減、消費電力も15%減にまでこぎつけることができました。恐る恐る試作品をもっていくと、感心され、すぐに注文をくれたのです。

 注文を会社に持ち帰った時は、「できる、できる、できる」と仲間に呼びかけて、何度も繰り返していきました。何度もいっていると、できるような気がしてくるのは不思議なものです。

 世の中、「だめだ。できない」という否定から物事を考える人がどれほど多いことでしょう。
 蕁麻疹が出て、病院に運ばれたことがあります。弱気になっていた私に「どんなときでも『ファイン』と答えなさい」と医師に言われました。常に明るい言葉を使い続ければ、どんな逆境のなかにでも明るい兆しを見つけることができるものです。

「すぐやる」習慣が、命運を大きく分ける

  • すぐやる
  • 必ずやる
  • 出来るまでやる

 あらゆる製品に共通していえることは、組みあわせの実験を重ねていくことにあります。組み合わせのたった1つの正解にたどりつくためには、いかに短時間で実験を繰り返すかが勝負を大きくわけるのです。

 アメリカにビジネスを広げたときの話です。大手メーカのスリーエム(3M)は、カセットデュプリケータという部品の小型化を模索しているという情報がありました。それに用いる小型モータのサンプルを持参したところ、
「どこまで小さくできますか」と聞いてきました。
「3割小さくします」と即答したのです。
 帰国した後、必死に努力し、サンプルを完成させることができたのです。サンプルはスリーエムの部長に評価され、日本電産の評価は急上昇しました。
 あきらめずに、トップメーカーを攻略してみせたのです。

機微をつかめ!人の心はこう動く

人との関係はどれだけ時間をともにしたかで決まる

  • 関係の深さは、一緒にいた時間で決まる

 何度もあって、話す。家庭のことなど仕事以外のプライベートのことも話題にします。「このひととなら一緒にやっていけるな」という気持ちがしだいに強くなっていくのです。

 なんでも腹を割って話すことができる相手は、創業期から何十年もつきあってきた部下です。絶大な信頼を置いています。
 こうした人たちをいまでは心から尊敬しています。感謝もしています。

チャレンジした人が評価される「加点主義」を貫く

  • チャレンジしていくことが大切
  • 言われたとおりにやっているだけではダメ
  • 失敗を恐れずに挑戦する
  • 失敗から学び次に活かす

 「減点主義」はとりません。

 スタート時点の評価をゼロとして、さまざまな課題に意欲的に挑戦することで、点数をプラスしていきます。

 上司から指示されたことだけをやっていたら、いつまでたっても評価はゼロです。

 減点主義のシステムだと、積極的に仕事に取り組んで失敗するより、何もしない方が点数が高くなってしまいます。大過なく過ごしたものが出世する世の中はおかしいではありませんか。

 チャレンジする数が多ければ多いほど、失敗の数も多くなります

 世間では、私の勝率は13章2敗ぐらいだとおもわれているかもしれませんが、実際のとこと8勝7敗といったところです。

 大切なのは、失敗を恐れずにどんどん挑戦することなのです。

 失敗した原因をしっかりと見つめ返して、くり返さなければいいのです。成功への道はそこから開かれます。

地位や肩書きでは人は動かせない

  • 訴える力の原点は、実績
  • 肩書きだけでは人は動かない
  • 失敗や挫折、夢を語る人物にひとは惹かれる
  • 夢を語ってこそ、心でつながる同志が集まる

 訴える力の原点にあるのは、その人がもつ実績です。いくら、こことに響くような言葉を並べたところで、実績がなければ、誰も支持してくれません。

 肩書きだけでは人はうごかないものなのです。肩書きだけの上司は部下を従わせようとし、部下は心の中ではバカにしていることがほとんどではないでしょうか。
 上司のいないところで、部下のいないところで、悪口を言っていませんか。

 苦しい状況に置かれても明るく、前向きに人々を引っ張っていくことができる、そんな人にひとは惹かれます。

 失敗や挫折などを語り、これからの夢を見ている人に惹かれるのです。挫折の苦しみを味わった声は、訴えるものがあります。聞いているひとも、腑に落ちるものがあるのです。

 心と心がつながるような仲間であれば、苦難のときこそ力を尽くしてくれます。20人に1人、30人に1人かもしれません。そのような者たりを探していきたいものです。
 そのためには、人を導いていく立場にある者が、部下に夢を語っていくことが大切です。それに賛同する同志が集まってこそ、成功への道が拓けるのです。

変化をとらえよ!大きく見て、小さく歩め

世の中を見る「鳥の眼」と「虫の眼」をもて

  • 先の未来を見据えていることが大切
  • 今の時代の変化を見逃すことがないように

 「鳥の眼」とは、はるか上空から地上を見下ろして、全体の様子を一望する目の事です。

 「虫の眼」とは、どんな小さな変化も見逃さないのが虫の眼です。

 どんな事業でもピークアウトは必ず訪れます。いつまでもしがみつけば会社に未来はありません。中長期的な視点を持って、次の一手を打つことが求められます。そのときに必要なのが「鳥の眼」です。時代の流れを読み、5年後、10年後を未来をとらえて下さい。

 1983年当時、ハードディスクのモーターは小型化を求められており、技術面や生産面に途方もない労力とノウハウが必要とされるものでした。他者が参入をためらうなか、パソコンの薄型化などの傾向を先読みしていたので、思い切って参入を決めたのです。
 予想は的中し、HDD用モーターは需要を拡大して、日本電産はこの分野のトップとなりました。

千の種をまいて三つの花が咲けばよい

  • 成功するものは、チャレンジする数が多い
  • 100の挑戦で1つ2つの成功しかない
  • 得意なジャンルからチャレンジする
  • 成功者の陰には、失敗したものが大勢いる

 ここに至る道はけっして平坦なものではありませんでした。

 100挑戦して、成功するのは1つか2つしかありません。

 会社の運命を変えるような大成功に限っては、1000のトライで3つほどしかないのです。それだけ、種をまかなければ、花の木は育たないということです。

 私の場合は、多品種の種をまきますが、モーターに関するもの、という一貫性だけは失わないように心掛けてきました。

 世の中は、成功者ばかりに注目が集まりますが、その陰には、数知れない失敗者の屍が横たわっているものです。

 成功を手にする者は、挑戦の分母が桁違いに多いということを胸に刻んでほしいのです。

時代の変化に対処せよ

  • 一度決めた根本部分は変えてはいけない(経営理念や基本精神)
  • グローバル競争の情報を取り入れ、新しいものにバージョンアップしていく
  • 怠けやおごりの意識は変えなければならない
  • 小さな問題も見逃さないようにしよう
  • 5Sで小さな問題を起こらないようにしいよう

 変えてはいけないものは、木で言えば根っこの部分です。会社であれば基本精神や理念です。

 どんどん変えなければならないものは、枝葉の部分です。グローバル競争が展開されていて、それを機敏に嗅ぎ取り、バージョンアップしなければなりません。あとは、「マンネリ・あきらめ・怠惰・妥協・おごり・油断」といった怠けの部分です。

 経営において基本中の基本となるのが、「現場・現物・現実」の3現を正しく把握することです。ここで必要なのは「虫の眼」です。小さな問題を見逃して集積してしまうと、大きな問題になります

 小さな問題を拾い上げるのは「6S」です。整理、整頓、清潔、清掃、作法、(躾)でチェックし、意識改革を行います。

 一流の会社は、工場内が整理されていて、清潔な印象があります。社員の身だしなみも完璧です。ゴミのようなものが、床に落ちていません。

大きな課題も「千切り」すれば必ずできる

  • 大きな問題を刻んで考える
  • 目標は具体的な行動に落とし込む

 困難な問題を、刻むように小さく課題を抽出し、一つひとつ根気よく考えれば、必ず解決方法が見つかります。

 工場の入り口より大きい重機でも、分解して場内に持ち込んだあとに組み立てればよいのです。

 目標をたてると、「コミュニケーションの向上」「知識を身につける」などの漠然とした表現になりがりです。それでは、日々、どの程度の進捗状況なのかチェックすることができません。

 「毎月1回、社内面談をする」などの具体的な行動に落とし込み、目標の道筋をたてる必要があります。

人を育てよ!時代は大きく変わる

これからはEQの高さが求められる

  • EQは人間としての能力
  • EQはAIに置き換わらない
  • 成功体験と、苦しみを乗り越えることで成長する

 EQとは、人間としての総合的な知性と感性の豊かさを指します。

 IQは、もって生まれたものが大部分ですが、EQは努力次第でとてつもない差がつきます。自分の進む方向をしっかりと見据えていれば、誰もが一番になれる時代です。

 EQはAIに置き換われない部分でもあります。

 EQを高めるために大切なことは、成功体験をもつことです。それから、苦しみを乗り越えることです。高いハードルを越えたときにこそ、心からの喜びが味わえます。

 必死に努力を重ねることで、人としての器は大きくなっていきます。それには、時間がかかるものです。

すべてが「じぶんごと」になると、人生が変わる

  • 「自分は悪くない」と逃げるのはやめよう
  • 失敗の原因は全て自分にあると考えよう
  • 逃げなければ、打開策を手に入れられる

 人は泣き言や言い訳をいって、困難から逃げようとしてしまいます。逃げてしまえば、解決策からも遠ざかることになるでしょう。努力をやめなければ、打開策はその手につかめるのです。

 「泣かない・逃げない・やめない」貫く精神力を身につけましょう。

 どんな失敗も、「自分は悪くない」と逃げることなく、「じぶんごと」して受けとめて向き合うことで、努力と引き換えに楽を得ることができるのです。

企業や社会が求めている人材

  • 今の学生たちは、自分で考えることを教わっていない
  • 企業や社会が求めるのは、3Pを備えた人材
  • 国際ビジネスをするなら、雑談力は必須

 自らの力で課題を見つけ、解決の道筋を探り、それを実践する力を身につけた存在を企業は求めています。

 ところが、日本の教育は、課題解決能力を磨く授業をしていません。塾に通い、偏差値の高い大学に入り、ようやく大学に入るのに、社会に通用する武器を身につけられないのです。

 学生たちはただ試験に備えて、それを一方的に聞いているだけなのです。これでは、「指示待ち」の人材になってしまいます。

 最近の新入社員は、熱量が伝わってこない者が多いと感じます。社会的な常識も欠けている者もいるのです。入社後に1から教え込まなければ、戦力なりません。

 求められるのは、3Pです。日本人が弱い部分です。

  • Proactive 自分で考えて行動する
  • Professional 自分の専門能力を向上させる
  • Productive 生産性を上げる

 国際ビジネスをするなら、雑談力はひつようです。日本人ほどおもしろくない国民はいないという声を聞きます。仕事の話しかできない、面白みがないとのことです。
 ひとの心をつかみ、人間関係を円滑にするためには、雑談力は必要なのです。

 相手が興味を持っている話から入るのがよいとおもいます。事前に相手のことを知っておく必要があるでしょう。アメリカでは、10分に1回は笑いをとらなければならない文化があります。日ごろから、面白いネタにアンテナを張っておく必要があるでしょう。

最後に

 時代は大きくかわりました。学歴やキャリアというだけで重宝されない時代です。

 自らの心に火を灯す者が求められています。

 だから、若い人には、まず「一番」になれるものを早く見つけてほしいと思います。どんな人にも才能と実力は備わっているはずです。

 そこで、大きな困難にであっても、あきらめずに立ち向かって欲しいと思います。

 ともに、明るい未来を築きませんか?

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