読書「一生役立つ きちんとわかる 栄養学」を解説

 読書推薦人からみて、重要に思えた部分を紹介するページです。

書籍情報

タイトル

一生役立つ きちんとわかる 栄養学

著者

お茶の水女子大学大学院教授 飯田薫子

関東学院大学准教授 寺本あい

出版

西東社

内容

 本書はマンガやグラフを使って紹介し、栄養学の基本をわかりやすく解説するものになっています。ダイエットや筋トレをする前に、読んでみてはいかがでしょうか。

現代人の栄養失調

 栄養失調になりやすい人はこんな人です。

  • 好きな物ばかり食べている
  • ダイエットで偏った食べ方をしている
  • できあいのもので食事をすませる
  • 高齢者で、食事や買い物がおっくうな方など

 特に日本人に多いのが、ミネラルと食物繊維が足りていない方です。ミネラルが足りていないと、脱力感や貧血を起こしやすいです。食物繊維が足りていないと、腸が活動不良を起こします。ビタミンが不足していると、欠乏症になったり、肌荒れを起こすかもしれません。

和牛サーロイン100gのタンパク質

  和牛サーロイン脂身つき100gの栄養素は、水分40g、脂質47.5g、タンパク質11.7g、ミネラル0.5g、炭水化物0.3gです。

 1日分のタンパク質の推奨される摂取量は約20gといわれています。和牛サーロイン脂身つき100gに含まれるたんぱく質は11.7gです。1食で1日分のタンパク質をとることは困難でしょう。

 豚や鶏肉には、もう少しタンパク質が含まれていますが、それだけ摂取しようとすると食が進まなくなるでしょう。どれかひとつではなく、いろいろなお肉を少しずつとっていくことがオススメです。

不飽和脂肪酸は体にいい?

 植物や魚に含まれる不飽和脂肪酸は、種類によって血中コレステロール値を減少させるとあって注目されています。肉の脂身やバターに含まれる飽和脂肪酸は、とり過ぎると動脈硬化を進行させる可能性があるとわかっています。

 実は不飽和脂肪酸もとり過ぎてはいけません。善玉コレステロールの値を下げてしまうことが報告されています。
 飽和脂肪酸の摂取を控えすぎてもいけません。飽和脂肪酸はエネルギー源です。飽和脂肪酸を含む食品からとれる栄養素が不足してしまうことがあります。

 結局、バランスよく摂取することが最も体にいいのです。

ダイエットするなら朝食を食べよう

 朝食を食べなければ代謝が始まらないため、消費エネルギーが減って脂肪がたまりやすくなります。朝食を抜くと体温が高くなる時間が短くなるので、エネルギー消費量が抑えられることもわかりました。朝食を抜くことはダイエットには向きません。

 朝食を抜くデメリットをまとめます。

  • 肝臓の体内時計が、うまくリセットされない
  • 体温が上がらない
  • 血糖値が上がり、肥満や糖尿病のリスクが高くなる
  • 夜食後にエネルギーが消費されない
  • エネルギー消費がおさえられてしまう

 少し前にオートファジーなどの健康法がでまわっていましたが、科学の世界では常識がころころと変わります。今では1日1食をおすすめされている医者や栄養士さんは、ほとんどいないでしょう。リスクが大きすぎます。

 エネルギー消費が抑えられるため、1日1食はある意味で理にかなっていると思います。家で仕事をして、全く動かないという人であれば、オートファジー生活もできるかもしれません。しかし、かなりのリスクを伴うことを知っておいたほうがいいでしょう。

栄養バランスを考える

食卓を彩る方法

 食卓に5色以上をのせて、栄養バランスをとる方法です。

カテゴリ品物
米、パン、乳製品ご飯、うどん、牛乳、ヨーグルト、白菜、大根、バナナ
肉、野菜、果物牛肉、豚肉、ハム、サケ、マグロ、トマト、ニンジン、いちご
野菜、果物小松菜、ほうれん草、ピーマン、ブロッコリー、レタス、キウイ
卵、大豆、野菜卵、納豆、チーズ、かぼちゃ、さつまいも、グレープフルーツ
海藻、きのこわかめ、こんぶ、のり、しいたけ、きくらげ、舞茸、黒ごま、レーズン

 子どもの弁当を考えるときに、重宝する考え方です。毎日考える献立の助けになること間違いありません。

調理法が重複すると、塩分や油のとり過ぎになるので注意しましょう。

一汁三菜で考える

 主食にご飯、主菜に焼き魚、副菜におひたしと納豆、汁物にみそ汁といった献立のことです。

栄養素

炭水化物の特徴

  • 体の主要なエネルギー源になる
  • 脳の活度を支える
  • DNA、RNAなどの構成成分になる

 炭水化物の糖質は、1gで4キロカロリーのエネルギーを生みます。血液中ではブドウ糖、肝臓や筋肉ではグリコーゲンに変わるのです。
 ブドウ糖は、脳の栄養素です。脳には貯蓄できないので、定期的に補給する必要があります。またブドウ糖は、DNA、RNAの生合成の成分として使われます。

炭水化物を多く含む食品のリスト

  • 上白糖
  • 緑豆はるさめ
  • コーンフレーク
  • 精白米
  • 粉末コーヒーミルク
  • さつまいも

とり過ぎると、消費されずに余ったブドウ糖は脂肪として蓄積されます。肥満の原因や生活習慣病の引き金になるので、注意が必要です。

不足すると、筋肉が減少します。脱力感や疲労感も感じやすくなるでしょう。脳や神経系の働きも鈍くなります。

脂質の特徴

  • 効率のよいエネルギー源である
  • 細胞膜やホルモンの主成分になる
  • 脂溶性ビタミンの吸収をたすける

 脂質は1gで9キロカロリーのエネルギーが確保できます。タンパク質や炭水化物の約2倍のエネルギー量です。脂肪を蓄え、体温維持や衝撃緩衝の役割を果たします。
 細胞の表面をおおう細胞膜は、脂質に含まれるコレステロールやリン脂質が主な成分です。ホルモンや消化吸収に関わる胆汁酸の原料になります。
 ビタミンA・D・E・Kなどの脂溶性ビタミンの吸収を助ける働きがあるのも知られています。

資質を多くふくむ食品のリスト

  • バター
  • マカダミアナッツ
  • マヨネーズ
  • 生クリーム
  • 牛バラ肉
  • 油揚げ

とり過ぎると、肥満はもちろんのこと、血液中の資質のバランスがくずれてしまいます。動脈硬化や生活習慣病を引き起こすこともめずらくありません。
 現代人の実際はとり過ぎの人が増えているため、脂質を多く含む食品を食べるときは量に十分に注意しましょう。

タンパク質の特徴

  • 筋肉や臓器になる
  • 酵素やホルモンになる
  • 物質運搬や情報伝達の助けになる

 体内のタンパク質の一部は、分解してアミノ酸になり排泄されます。排泄分は食事から補充する必要があるのです。アミノ酸は筋肉や臓器、血液など体中の組織に存在しています。
 血中酸素の運搬や酵素、ホルモンに関わってくる栄養素なので、足りなくなると生命活動に支障が起きるのも特徴です。

タンパク質を多く含む食品のリスト

  • するめ
  • イワシ
  • マグロ
  • 鶏ささみ
  • 豚肉ヒレ
  • プロセスチーズ
  • 糸引き納豆
  • そば
  • マカロニ、スパゲティ

不足すると、免疫力と思考力と筋力低下と…とにかく良い事がありません。子どもは特に成長障害を起こすこともあるので注意しましょう。

ビタミンって何?

 特徴はこちら

  • 体の組織をつくるのを助ける
  • 免疫機能や体の機能を維持する
  • 不足すると欠乏症を引き起こす

 体内で合成できたとしても、足りていないので食べ物から摂取する必要があります。ビタミンは全部で13種類あり、脂溶性と水溶性に分かれます。

脂溶性ビタミン

  • ビタミンA
    • 皮膚の粘膜、目の機能を正常に保つ働きがある
  • ビタミンD
    • カルシウムの吸収を高めて、骨をつくるのを手伝う
  • ビタミンE
    • 強い抗酸化作用により細胞膜を保護し、血行をよくする
  • ビタミンK
    • 出血したとき血液凝固に関わり、丈夫な骨をつくる

水溶性ビタミン

  • ビタミンB1
    • 糖質の代謝に関わり、神経機能を正常に保つ
  • ビタミンB2
    • 糖質、脂質、タンパク質の代謝に必要不可欠
    • 発育作用もある
  • ナイアシン
    • 糖質、脂質、タンパク質の代謝を促す
  • ビタミンB6
    • タンパク質の代謝をサポート
    • 脳の神経機能の維持に努める
  • ビタミンB12
    • 赤血球の生成や、DNAの合成を助ける作用がある
  • 葉酸
    • 細胞の新生を補助する
    • 正常な造血作用を促す
  • パントテン酸
    • 補酵素コエンザイムAの構成成分
  • ビオチン
    • 糖質、脂質、タンパク質の代謝に関与する
  • ビタミンC
    • 皮膚、血管、筋肉、骨を丈夫にする
    • 酸化防止の効果がある

ミネラルって何?

 特徴はこちら

  • 体内では生成されないため、食事でとる必要がある
  • 不足すると欠乏症になる
  • とり過ぎると過剰症になる
  • 酸素、炭素、水素、窒素以外の元素のこと(無機質)
  • 神経、筋肉、血圧、代謝などの正常に保つ働きがある

 骨や歯の材料になり、体を構成してくれます。代謝を促進し、常に新しい細胞へつくり直してくれるのもミネラルです。血圧をコントロールして、体液をアルカリ性に保つ働きもかねています。神経や筋肉を正常に保ってくれる働きもあります。

多量ミネラル

 ミネラルのうち、体内に存在する量が比較的おおいもののことです。主要ミネラルともいいます。

  • ナトリウム
    • 体内の水分量の調節や筋肉の収縮になどで働く
  • カリウム
    • 心臓や筋肉の機能を維持する
    • 内内の水分量を調整する
  • カルシウム
    • 骨の材料になる
    • 神経鎮静作用がある
    • 筋肉調整作用がある
  • リン
    • 骨の材料になる
    • エネルギー代謝のかわりになる
  • マグネシウム
    • 骨の材料になる
    • 血管収縮を抑えて、血圧を調節する
  • 塩素
    • 体内の水分量をコントロールする
  • 硫黄
    • アミノ酸の構成成分
    • 皮膚や爪、毛などの組織の材料になる

微量ミネラル

 体内に存在する量が少ないミネラルことです。22種類と数多く存在します。

    • 前進に酸素を運搬する赤血球中のヘモグロビンの材料になる
  • 亜鉛
    • 皮膚や体の成長に関わる
    • 免疫機能を維持する
    • 味覚を正常に保つ
    • 鉄の吸収を促進する
    • 酵素の材料になって代謝を助ける
  • マンガン
    • エネルギー代謝に必要
    • 骨を形成する
    • さまざまな酵素の構成成分になる
  • ヨウ素
    • 甲状腺ホルモンの成分
    • エネルギー代謝に関わりがある
    • 発育促進にに影響する
  • セレン
    • 強い抗酸化作用がある
    • 活性酸素の抑制に働く
  • クロム
    • インスリンの働くを助ける
    • 糖質や脂質の代謝に必要
  • モリブデン
    • 補酵素として尿酸の産生を助ける
    • さまざまな酵素の成分になる
  • コバルト
    • ビタミンB12の成分となる
    • 赤血球の生成に関わる

食物繊維の特徴

  • 正常な排便を促す
  • 血糖値の上昇を緩やかにする
  • コレステロールの吸収を抑制する

 不溶性食物繊維をとると腸が刺激されて、ぜんどう運動が盛んになります。ベンノかさも増してスムーズな排泄が行われることで、腸の病気を予防することに繋がるでしょう。

 水溶性食物繊維は、食べたのの粘性を高めます。食べ物がゆっくり移動するため、血糖値の上昇がゆるやかになり、糖尿病のリスクを下げます。コレステロールの吸収を抑制するので、脂質異常などの改善が期待できます。

食物繊維を多く含む食品

  • かんてん
  • ひじき
  • わかめ
  • いんげん豆
  • おから
  • 大麦
  • ごぼう
  • きのこ

症状別、おすすめ食材

風邪

  • ほうれん草
  • にら
  • 鶏ささみ
  • じゃがいも
  • 緑茶
  • ねぎ
  • しょうが

 睡眠不足やストレス、栄養不足が風の原因となります。十分に休み、少量でもよいので栄養バランスのよい食事を心がけるとよいでしょう。
 風邪のときは、免疫にかかわるビタミンC、鼻水やのどが痛いときには粘膜を保護を助けるビタミンAが効果的です。

とりたい栄養
糖質
タンパク質
ビタミンC

避けたいもの
胃腸に負担をかける食事

オススメ料理
中華風がゆ
鍋に水、お酒、鶏ガラスープ、薄くそぎきりにした鶏ささみを入れてひと混ぜする
おかゆを作り、千切りにした大根、にんじん、ショウガを加え、ごま油を少々
最後に香菜の葉をちらせば完成

※イメージ画像

便秘

  • 納豆
  • 玄米
  • しいたけ
  • ビフィズス菌入りヨーグルト
  • わかめ、こんぶ、ひじき
  • アボカド
  • ごぼう
  • 木綿豆腐

 食物繊維及び水分の不足が原因がほとんどだと思います。大腸の機能に異常があるか、便を排泄する能力の低下も考えられます。
 1日20gを目安に、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の両方をバランスよく食べるようにしましょう。不溶性は穀物や豆類に、水溶性は野菜や海藻、果物に多く含まれています。

とりたい栄養
食物繊維
マグネシウム
乳酸菌

避けたいこと
水分不足
油っこい食事
過度な飲酒

花粉症

  • バナナ
  • ヨーグルト
  • にんじん
  • ピーマン
  • マグロ
  • モロヘイヤ
  • しそ

 花粉に対して体の免疫機能が過剰に反応することで、鼻水、目のかゆみといった症状が現れます。
 花粉症の治療は、症状が軽いときに薬を使って抑えるのが効果的です。花粉は「つけない」ことと「取り除く」ことが大切です。体の免疫機能を正常に保つことで症状の緩和が期待できます。

 体の免疫細胞の60%が腸に集まっているといわれており、腸内環境を整えることが免疫機能の改善につながるでしょう。

とりたい栄養
食物繊維
ビタミンB6
ビタミンC

避けたいこと
油っこい食事
過度な飲酒

本書には、他にも役立つ栄養学が載っています

 本書には「疲労・だるさ」「冷え性」「更年期障害」「疲れ目」「ストレス」などの症状に聞く食材など、ほかの症状についても紹介されています。

 食材別にも、どんな栄養や効果を期待できるかが記されており、辞書のように調べられるようになっています。1冊手元において、日々の献立の参考にされてみてはいかがでしょうか。

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