書籍批評「身近にあふれる『自然災害』が3時間でわかる本」

読書推薦人のためになった度

3.8 out of 5 stars (3.8 / 5)

 大雨、洪水、地震、火山の噴火による災害が、起こった時・起きる前にどう行動したらよいでしょうか。災害について正しい知識を身につけて、来るべき災害に備えましょう。

 簡単に基礎が書かれていて図解できるため、3時間で理解できます。という本でございます。

 読書推薦人では3時間で解読できず、基本ではありましたがそれなりに難しかったので評価は付けられなかったです。

 この書籍は次のような人たちに向けて書かれました。

  • 身の回りにあふれる自然災害について知りたい
  • 自然災害の仕組みをできるだけ、やさしく解りやすく知りたい
  • 自然災害の過去の事例を知りたい
  • 自然災害への対策を知りたい

このページでは、過去の事例以外をかみ砕いて書いていきたいと思います。

書籍情報

タイトル

図解 思わずだれかにはなしたくなる 身近にあふれる「自然災害」が3時間でわかる本

著者

編著 佐巻健男

執筆
大西光代
北川竜彦
小林則彦
佐巻健男

出版

明日香出版社

内容

日本の気象と災害

 気象災害とは、気象が主に原因となって起こる災害のことです。考えることは大きく3つにわけられます。

  1. 直接的な破壊力のある災害
    • 強風、豪雪、感想、低温、高温、ひょう、雷 など
  2. 気象現象に付随する破壊力のある災害
    • 洪水、気圧の低下、高潮、高波
  3. 災害をもたらす現象
    • 大気汚染、乾燥時の大火

日本では、台風、大雪、ひょう、雷害が目立ちます。国土が南北に広く、大気現象の起こり方が地域によって異なるのです。

 日本の大気現象に影響を及ぼす4つの高気圧が存在します。

  • むんむんと厚い「太平洋高気圧」
  • 梅雨の夏に冷たく湿った空気をもたらす「オホーツク海高気圧
  • 冬に冷たく乾いた空気を運ぶ「シベリア高気圧
  • 春と秋におとずれる「移動性高気圧

日本海側に豪雪を降らせたり、秋に豪雨の原因になる高気圧です。日本に四季を感じされる存在でもあります。それぞれの季節に、どんな危険があって、どんな災害に備えたらいいのか順々にみていきましょう。

雨の降り方

気象庁では
「災害が発生する恐れのある雨」を大雨とよびます。
「著しい災害が発生した顕著な大雨の現象」を豪雨とよびます。

 ニュースで天気予報を見る時に、雨量と予報用語を知っておくと便利でしょう。

1時間の雨量(mm)予報用語人の感じ方
10~20やや強い雨ザーザー降り
20~30強い雨どしゃ降り
30~50激しい雨バケツをひっくり返したような
50~80非常に激しい雨滝のようにゴーゴーと降る
80~猛烈な雨息苦しくなるような圧迫感

ゲリラ豪雨と集中豪雨

 災害につながるような大雨は、比較的短時間に狭い範囲で起こります。

 局地的大雨「ゲリラ豪雨」の特徴をみてみましょう

  • 数km~10kmほどの範囲で起こる
  • 急に強く雨が降る
  • 数十分間、降り続く

 集中豪雨の特徴をみてみましょう。

  • 数十km~100kmの範囲で起こる
  • 数時間~半日間、降り続く
  • 梅雨前線や秋雨前線の時期に起こる
  • 停滞前線や台風にともなうことが多い

積乱雲の誕生と成長

 局地的大雨も、集中豪雨も、発達した積乱雲が原因です。

 積乱雲が発達する過程をみてみましょう。

  1. 地上近くに暖かく湿った空気があり、上空に寒気がある
  2. 大気の下のほうが軽く、上の方が重い状態になる
  3. 何かのきっかけで上昇気流が生じると、上昇する流れが速くなる
  4. 湿った空気が上昇し、温度が下がる
  5. 湿った空気が上空で固まり雲になる
  6. 雲内で水蒸気が凝結すると、熱が放出されて周囲の空気が軽くなり、さらに上昇する
  7. 上記の過程をくり返し起こって成長した雲が積乱雲となる

 積乱雲の寿命は1時間程度ですが、同じような場所で次々と積乱雲が生まれるので集中豪雨となります。

線状降水帯

 線状降水帯とは、複数の積乱雲が線状に並ぶ集合体のことです。気象レーダーなどを使って紹介されることが多くなりました。2021年6月17日から、気象庁が発生情報を発表するようになった新しい用語です。厳密な定義はありません。
 重要視されるようになったのは、集中豪雨の$\frac{2}{3}$の事例で確認されたからです。災害予測の難しさと被害の多さから、ますます重要視されることでしょう。

 線状降水帯が発生しやすい環境

  • 大気の下層に、暖かく湿った空気が供給される流れがある
  • 暖かく湿った空気を持ち上げる地形や前線、冷たい空気の塊がある
  • 大気の状態が不安定で、暖かく湿った空気の高度(自由対流高度)が低いこと
  • 積乱雲が次々に誕生し、成長しやすく、風に運ばれ、線状に並ぶのに適していること

 日本でみられる線状降水帯は、成長した積乱雲が下流に流されていき、同じ場所で雨が降り続く「バックビルディング型」です。

台風は日本に向かってくる

 台風とは、大きい空気の渦です。風は半時計回りに吹き込みます。中心部分は遠心力の影響で、風を近づかせないため、無風です。中心部分は、台風の眼とよんでいます。

 雨による災害がみられる台風を雨台風とよんでいます。雨台風はに多いです。
 風による災害がみられる台風を風台風とよんでいます。風台風はに多いです。

 台風の進行方向の右側は強風となります。
 進行方向右側は、危険半円といいます。
 進行方向左側は、可航半円といいます。
 危険半円では、台風の進行方向に働く力台風に吹く風が合わさり強くなります。
 可航半円では、台風の進行方向に働く力と台風に吹く風が反対方向なので、ぶつかり合って弱くなります。

 台風は、太平洋高気圧に沿って北上し、偏西風に乗りかえることで、日本に上陸します。
 8月~9月は、太平洋高気圧が弱まり、偏西風が強まることで、日本列島の上を通ることが多くなるのです。10月ごろになると、南の海上を通り過ぎるていきます。太平洋高気圧と偏西風のバランスによって、台風が日本におとずれるかどうかが決まるといってもいいでしょう。

竜巻

 竜巻は、強い上昇気流が細く渦を巻く激しい風です。地表付近で発生した過流が、積乱雲の強い上向きの空気の流れによって引き延ばされて、回転が速くなった吸い上げるような強風です。
 毎秒50m~100mを超える時もあります。消滅まではおよそ30分程度です。被害を受ける範囲は狭く、正確な予測が難しいとされています。

 竜巻が接近するときの特徴があります。

  • 真っ黒い雲におおわれて、ひょうが降るような激しい雷雨
  • 雲の底から漏斗状の雲が垂れ下がっている
  • 風によって舞い上がっているものが筒状に渦を巻いている
  • 急な気圧変化で、気候気に乗っているようなときの耳の違和感

竜巻注意情報が出た時に意識してみましょう。

竜巻が接近する特徴をみたら、身を守る行動を行ってください

  • 風で飛散するものに注意する
  • カーテンや雨戸を閉めて、ガラス割れに対応する
  • 低い階の窓のない部屋やトイレや浴室、近くの頑丈な建物に避難 など

洪水と浸水

 浸水とは、地表の水量を排水が追いつかなくなって起きる現象でもあります。河川の増水や台風による高潮で、排水ができなくなれば浸水が起きるでしょう。

 洪水は、河川の流量が増えて氾濫すると起こります。日本で被害が大きい災害です。
 積雪が溶けることで起きることもあります。山から坪野までの距離が短いと洪水になりやすいです。梅雨や秋の台風の時期に多く発生しています。春先の雪解けや大雨で起こることもあります。

 台風による雨量は、科学の進歩により精度の高い予想ができますが、集中豪雨や局地的大雨の予想は難しいのが現状です。
 短時間に急激な雨が降ると、市街地の下水道による河川の排水が追いつかなくなることが起こっています。総雨量は多くないのに内水氾濫が起こり、災害になってしまうこともあるのです。

 いざというときのために備えましょう

  • 自治体のハザードマップを確認する 国土交通省のホームページで確認できる
  • 避難経路を実際に歩いてみる
  • 非常用の持ち出し品を準備しておく

土砂崩れ

 土砂崩れもまた、集中豪雨などが原因で起こります。

西暦がけ崩れ(件数)
2015599
20161040
20171028
20182343
20191419
2020979

2016年から、土砂崩れの件数が大幅に増えています。

 総雨量が300㎜を超えると、大規模な土砂崩れが起きやすいことがわかってきました。雨の量が増えると災害になりやすいということです。

 天気予報の「地盤がゆるんでいるところがあるので、土砂災害に警戒してください」の地盤が緩むとは?

  1. 地面の表面が雨水で重くなる
  2. 土粒子のすき間に雨水が入り込む
  3. 水の浮力によって土粒子が浮いてしまう

「水が土の間に入り込み、浮力で浮いてしまっていること」を地盤が緩む。といいます。

 地すべりは、継続的に土塊が流れ込み町村を丸ごと飲む込みます。
 がけ崩れは、規模は小さく、スピードが速く、急こう配のところで発生します。土石流となって河川増を流下して、広範囲に被害を及ぼしたこともあります。

日本海側の積雪

 日本の西シベリアでは、ヒマラヤ山脈と高低差の激しい気圧が、寒気の流れをせき止めて長くとどまります。そうしてできたものが、非常に乾燥したシベリア高気圧です。

 日本のには、海上の空気が大陸より暖かいため、アリューシャン低気圧を形成します。

 高気圧から低気圧に空気が流れていくため、シベリア高気圧の寒気がアリューシャン低気圧に流れていくのです。西高東低の気圧配置と呼ばれています。

 乾燥した風は海水を蒸発させて、雲になります。この雲は、低高度のすじ状の雲なので、降水降雪はありません。この雲が日本の脊梁山脈によって上昇させられると、一気に積乱雲に発達します。冬は地上も冷え切っているので、発達した積乱雲が日本海側に豪雪をもたらします

 ヒマラヤ山脈がなければ、日本海がなければ、脊梁山脈がなければ、日本海側に豪雪をもたらすことはありません。

雪崩

 雪崩とは、斜面上にある雪や氷の全部、または一部が、流れ落ちる現象です。

 表層雪崩の特徴です。

  • 古い積雪の上に積もった数十cm以上の新雪が滑り落ちる
  • 真冬の低温時に起きる
  • 雪崩の死亡者の9割の原因

 全層雪崩の特徴です。

  • 春先や暖冬に起きます
  • 地面上の積雪層全体が滑り落ちる

 雪崩の起きやすい条件を表示します。

  • 冬に急激な気温の変化があると、積雪内部に温度差ができる
  • 暖かい雪粒から冷たい雪粒へ変化し、水蒸気が移動して霜が発生しているとき
  • しもざらめ雪の上に雪が積もる
  • 1月~2月に多い
  • 35度~45度の急斜面

 特に要注意です。

気温が低く、短期間で積雪の上に積雪があったとき!
気温が上がる春先!
雪が積もっている状況で、雨やフェーン現象があった場合!

東北地方の例外被害

 7~8月を中心とした温かい時期に気温が低いと、作物が実のならなくなります。これを冷害とよび、近年の発生頻度は10年に1回程度です。冷害のときの風はやませとよばれています。

 やませの特徴

  • 春から夏にかけてきた日本の太平洋側に吹く北東風
  • オホーツク海付近にあるオホーツク海高気圧から吹きだす
  • 冷たく湿った風
  • 北海道や東北の日本海側は、低温、霧、弱い雨になる
  • オホーツク海高気圧は、年によって変動が大きい
  • 偏西風によって影響を受け、長く冷害が続くこともある

冷害の起こる7~8月は、稲作の時期です。1993年の冷夏では、水稲の被害総額が4690億円に達しました。200以上前であれば、大飢饉をもたらす災害です。
 地球温暖化は、冷害のリスクをも増やします。

熱中症

 体の中では体温を常に一定に保つ機能が働いています。暑いときは発汗や不感蒸泄によって、体温を下げているのです。発汗すれば水分が失われます。水分が失われ、体温の調節が効かなくなるのが熱中症です。

 熱中症には3段階あります。

  1. 軽度:熱失神や熱けいれん
  2. 中程度:熱疲労
  3. 重症:熱射病

 熱中症の死亡者は増加傾向にあります。高齢になるにつれて、熱中症にかかりやすくなるのです。冷房を好まなかったり、トイレの回数が気になり水分をとらなかったりするとリスクが上がります。

 熱中症予防の第一は、暑さを避けることです。

  • 暑い日は外出を避ける
  • 涼しい服装をする
  • 激しい運動を控える
  • 仕事のあいまに休憩をとる、仕事を休む
  • 水分をとる
  • エアコンを適切に使用する

落雷の被害

 積乱雲から直接雷を受けると、約8割の人が死にます。樹木等の人への雷が飛び移る側撃雷の死傷を多いです。

 雷の被害は、火災、機器の損害と広く存在しています。日本での年間被害総額は1000億円~2000億円です。

 雷は6月~8月に集中しています。日本海側では11月~3月に冬季雷があり、通常の雷の100倍ものエネルギーを発する強力なものです。

 雷のしくみをみてみましょう。

  1. 雲のあられ、氷の粒が静電気を作り、貯めていく
  2. あられはマイナスの電気を帯びる
  3. 凍りはプラスの電気を帯びる
  4. 電極のかたよりが大きくなったときに、かたよりを解消しようと電気が流れる
  5. 地面と雲の間で流れた電気が落雷(火花放電)となる

 屋外で雷を避けるには、高い物体から4mほど離れて姿勢を低くすることです。

地震の多い日本

 世界の面積の1%にもならないのに、成果の約1割の地震が発生しています。

 震度6弱以上の地震が、年に2回~3回あります。
 震度6弱未満の地震は、毎日記録されています。

 日本周辺には4つもプレートが存在しています。

  • 北アメリカプレート
  • ユーラシアプレート
  • 太平洋プレート
  • フィリピン海プレート

 海洋プレートに大陸プレートが引きずり込まれて溜まっているエネルギーが、耐えきれなくなり反対方向に反発します。エネルギーの影響を受けて海底がせり上がり、大地震を起こすのです。プレートの境界で起こるので、プレート境界型地震といいます。

 トラフとは、細長く海溝より幅が広い海底のくぼ地のことです。
 南海トラフは、近いうちに巨大地震を起こす可能性が高いといわれています。海洋プレートの沈み込みにより、70年ものエネルギーを蓄積中です。

 内陸の断層が動く自身もあります。内陸活断層型、直下型と呼ばれているものです。

地震とマグニチュード

 「地価の断層運動」と「地面がゆれること」を、どちらも地震とよんでいて区別していません。

  • マグニチュードは、「地価の断層運動」の数値
  • 震度は、ゆれの強さ

 気象庁では、震央から一定の距離に置かれた地震計の針の振れ幅をもとに計算しています。3分で算出できますが、マグニチュード8までしか測れません。(気象庁マグニチュードとよびます)

 規模の大きな地震では、多くの地震計からデータを求めます。これをモーメントマグニチュード(Mw)といいます。計算するのに2日前後かかることもあるので、ニュースなどで後日訂正されることがあるのです。断層の面積とずれの量で計測され、ほぼ断層の面積で決まります。

巨大な地震

 冷たい海洋プレートは大陸プレートの熱を奪うため、ひずみのエネルギーを多く貯めることできます。そのため、エネルギーが放たれたときは、大地震になることが多いのです。

 また、プレートによる地震は津波を発生させることがあります。海底が跳ね上がるので、海水を上下に動かします。見た目は普段の波と変わりません。しかし、海底がせり上がった高さの部分は、陸からでは見えないので注意が必要です。海底のせり上がった高さ分の水量がそのまま津波となって襲ってきます

 海底で起きる、ゆっくり地震があります。ゆっくりとエネルギーが流れるので、ゆれがありません。数日~数年の長期的なスパンで動く地震です。すべる量が多いと、ゆれがないまま津波が発生します。

活断層

 活断層とは最近の期間に地震をくり返し、これからも起こす可能性が高い断層のことです。最近とはいっても、10年~200万年前のことを指します。

 日本列島にある活断層は2千以上です。国は98か所の活断層を選んで、いつごろ動いたのかを調査しています。次に発生する時期を知ることができると思われています。浸食や風化によってあいまいな部分が多く、活断層の調査は困難です。

 千年あたり平均的なずれが1m以上10m未満の、非常に活発な活動度Aの活断層を表示します。

  • 西南日本の中央構造線
  • 中部日本の糸魚川ー静岡構造線、丹那断層、富士川断層
  • 岐阜の阿寺断層、根尾谷断層

緊急地震速報しくみ

 地震はじめ「初期微動」を地震計が感知し、気象庁にデータがおくられます。そして、気象庁から個人に向けて緊急地震速報が発信されるしくみです。
 人の住んでいる地域に人が感じるゆれを感じるときには、前もって地震がくることを知ることができるシステムです。震度5弱以上の地域がありそうなときだけ発信します。

 内陸型の直下型地震では、避難が間に合わない場合がありますが、海洋で発生する地震には有効です。

液状化現象

 液状化現象とは、地震によってゆすられた地面がまるで液体のようにふるまう現象のことです。

 液状化すると、建物や橋などが支えられなくなります。ガス、上下水道、電気などの埋設管が浮上することもあります。
 噴砂もよく一緒に起こります。地面から砂の混じった地下水が噴出する現象です。地面が空度になり、地盤沈下が発生します。

 液状化の起こりやすい条件を記します。

  • 軟らかい砂地の地盤
  • 地下水位が高い場所
  • 海岸近くの埋め立て地や干拓地
  • 昔は川や湖だった場所

谷や沢だった高台の住宅地で、近年液状化の被害が増加しています。

南海トラフ地震の被害想定

  • マグニチュード9.1
  • 震度5強以上
  • 531市町村が被害を受ける 日本の全人口の26%が住んでいる
  • 津波15m~20m
  • 最大波高: 高知県34m、三重・静岡・徳島県25m
  • 死者数:32万3000人
  • 全壊家屋:62万7000棟
  • 経済的被害:53兆~83兆円

首都直下型地震の被害想定

  • 30年以内に70%の確率で起きると予想されている
  • マグニチュード7程度
  • 死者数:最大2.3万人
  • 全壊、消失家屋:最大61万棟
  • 避難者数:最大720万人
  • 食糧不足:最大3400万食
  • 電力・通信・上下枢動・ガス・道路・鉄道・空港に影響
  • 帰宅困難者:最大800万人

津波の怖さ

 地震のときの津波は、沖合から見ると台風のときと同じような盛り上がり方にしか見えません。しかし、海底が隆起した高さ分の水量が隠れています。「様子をみてから避難しよう」は危険です。

 2波目や3波目が最大になるときがあるので、第1波をやり過ごしても安心はできません

 揺れがなくとも大津波になることがあります。ご注意下さい。

日本と火山

 日本の火山帯は、環太平洋火山帯の一部です。太平洋の周辺地域にはたくさんの活火山が分布しています。

 日本列島の帯状につながっている火山をなぞってみましょう。

  • 千鳥列島から北海道へ
  • 北海道の有珠山付近で折れ曲がって東北、関東へ
  • 浅間山付近で折れ曲がって伊豆・小笠原諸島へ
  • もうひとつ、中国地方から九州・南西諸島へ

これらの火山帯をそれぞれ、東日本火山帯西日本火山帯といいます。世界の活火山の約1割は、この火山帯にある活火山です。

火山の噴火

 噴火のしくみです。

  1. 100km~150kmの深さでマグマがつくられる
  2. マグマは浅いところまで上昇してくると、マグマだまりをつくる
  3. マグマだまりからマグマが地上に出てくると噴火となる

 二酸化ケイ素は、岩石をつくる基本成分です。マグマの粘性は温度二酸化ケイ素の含有量で決まります。

  • 高温で二酸化ケイ素が少ない → 流れやすい
  • 低温で二酸化ケイ素が多い → 粘っこい

 マグマの性質をみていきましょう。

  • 玄武岩質マグマ
    • 川のように流れる
    • 冷えて固まると、厚さ数kmの溶岩になる
    • 粘り気が弱いので、気泡はマグマから抜けて出て、火口からおとなしく流れる溶岩流となる
  • 安山岩質マグマ
    • ゆっくり、ノロノロと流れる
    • 冷えて固まると、厚さ数十kmの溶岩になる
    • 粘り気の強いマグマで、気泡を抑えている岩盤が耐え切れなくなると、爆発するように噴火する
  • デイサイト質マグマ、流紋岩質マグマ
    • ほとんど動かない、1日1m程度
    • たいていは火口に盛り上がって、溶岩ドームをつくる

火山災害

 溶岩流は、建造物や田畑を破壊します。
 火山弾は、人身や家屋を直撃します。
 火砕流は、山麓まで高速で流下して町村を全滅させます。
 火山ガスは、中毒死や窒息死に繋がります。
 岩屑なだれ・土石流・土流といった、山体崩壊や降雨などによって引き起こされるものも危険です。
 洪水や津波の二次災害も生ずることがあります。

火山の詳細

 噴出するときのマグマの温度は、約900℃~1200℃です。溶岩の粘質は、噴出するときの温度が高くなるほど小さくなります。
 マグマに含まれる二酸化ケイ素が大きいほど粘質が大きくなり、白っぽい火山岩になります。

火山岩二酸化ケイ素の量
玄武岩少ない
安山岩黒~白中程度
流紋岩多い

 火山はおおまかに分けると3種類あります。

  • 盾状火山
    • 傾斜がゆるく、なだらか
    • 大量の溶岩が噴出して、溶岩台地をつくることもある
    • キラウエア火山など
  • 成層火山
    • 日本に多い
    • 火山弾や火山灰の噴出を交互にくり返す火山もある
    • 山頂は急峻、山腹以下はなだらか
    • 浅間山、桜島、富士山など
  • 溶岩ドーム
    • 粘質の高いマグマが噴火せずに火口から押し出され、盛り上がったドームのような形になる
    • 昭和新山、雲仙普賢岳など
盾状火山←項目→溶岩ドーム
少ない←二酸化ケイ素→多い
黒い←色→白い
高い←温度→低い
小さい←粘度→大きい
うすく広がる←固まり方→盛り上がる
静かに流れる←噴火のしかた→爆発するかの様

 火山爆発指数 / VEI は0~8の9段階で表し、噴射物の量で測ります。

指数火山爆発の頻度
81万年に1度
1000年に1度
6100年に1度
550年に1度
410年に1度

火山灰

 桜島の噴火は日常茶飯事です。普段から噴煙数百m程度の噴火は当たり前に起きています。2009年から火山活動が活発になり、今でも年に噴火している回数は400回ほどです。

桜島の火山灰の特徴

  • マグマの粘性が強く、爆発的になる
  • 火山灰がでる
  • 鹿児島市街地に近い

 火山灰の影響が市街地にも及びます。火山灰は水を含むと固まる性質があり、放っておくと排水溝などが詰まってしまうのです。鹿児島には、除灰車(ロードスイーパー)や降灰置き場が当たり前のようにあり、集灰袋などもコンビニやスーパーで買えるようになっています。
 火山灰は鋭利なガラス質です。吸いこんでしまうと、肺を傷つけてしまいます。目に入っても危ないとされています。

富士山が噴火したら

  • 噴火口
    • 山頂だけでなく、山腹斜面で噴火することも多い
    • 5600年間で規模が大きの派、山腹斜面での噴火であることも多い
  • 溶岩流
    • 噴火したところから、標高の低い方へ流れている
    • 過流の上野原市(山梨県最東端)付近まで流れていくのではないかと予想されている
  • 火山灰
    • 噴火した火山灰は偏西風に運ばれて首都圏方面へ飛んでいく
    • 東京23区では数cmの降灰が予想されている
    • 天然のガラス片と言われており尖っているため、吸い込むと危険
  • 噴石
    • 火口から飛び出る溶岩のこと
    • 小さいものは特に、遠くへ飛ぶことがある
  • 火砕流
    • 火山ガスと火山灰や岩石片が粉対流となって火山斜面を流れる現象
    • 500℃以上
    • 時速100km
    • 火砕流が富士五湖に流入すると水蒸気爆発を引き起こす可能性がある

備え

自宅の備え

  • 自宅の場所の地形や地質を確認する
  • どのような災害が発生しやすいか考える
  • 自治体のハザードマップを参考にする
  • ブロック塀の補強(低層住宅の場合)
  • 家具は固定して、食器棚の扉にロック機能をつける
  • 窓ガラスの内側に厚手のカーテンをつける
  • 枕元に家具や器具が落下しないように配置する
  • 寝室に懐中電灯、メガネ、靴(あるいはスリッパ)、ホイッスルを用意する

避難経路の備え

  • 災害の種類ごとの避難場所や経路の確認をする
  • 実際に歩いて確認する

災害後の生活の備え

 電気・ガス・水道が止まっても、倒壊の危険がなければ自宅で生活することになります。

  • 救援物資が届くまでの間の食料・飲料水は最低限必要
    • 安全な水を確保する。
  • 自家用車には燃料をこまめに補給
  • 簡易ガスコンロやラップは自宅での食事に便利

ハザードマップの活用

 ハザードマップは、法律により作成が義務化されているものです。災害の種類ごとに各市町村が作り、住民に配布しなければなりません。
 ハザードマップで確認できることは、その土地の被害想定、避難場所、災害時の行動指針です。

 ハザードマップにも限界があります。住宅地図とは異なり、個々の建物を読み取るほどの制度はありません。また、必ずしも想定通りの災害がおこるとは考えにくいです。ハザードマップから外れていても、油断しないことです。

 ハザードマップの種類を紹介します。

  • 津波ハザードマップ
    • 津波災害時の避難場所や、災害時の行動指針を確認できる
    • 歴史をさかのぼって津波被害を考えて、津波ハザードマップを読むことが大切
  • 水害ハザードマップ
    • これまでの最大降水量と最大流量をもとに、堤防が決壊したときの氾濫シミュレーションができる
    • 大規模の洪水の想定、毎回の浸水深ではない
  • 土砂災害ハザードマップ
    • 「急傾斜地の崩壊」「土石流」「地すべり」の警戒区域がわかる
  • 火山ハザードマップ
    • 噴火減少と噴火規模がわかる
    • 避難経路がわかる「火山防災マップ」みれる

注意報・警報・特別警報

 防災気象情報は、気象庁が災害の恐れがある気象状況を知らせる警報です。
 避難情報は、市区町村が災害の危機が迫った地域の住民に対して行う「避難指示」などです。

市区町村から出される
警戒レベル
状況
5すでに災害が発生しており、切迫している状況
命が危ない
4高齢者に限らず、全員避難する必要がある状況
3高齢者等避難する必要がある状況
  • 注意報
    • 自然災害が発生する恐れがある場合に、気象庁が発表する
    • 災害に備えた準備をする段階
  • 警報
    • 重要な災害が発生する恐れのある時に警戒を呼び掛ける
    • 必要に応じて、すみやかに非難する段階
  • 特別警報
    • 数十年に1度の大災害のときに発表される
    • ただちに命を守る行動をとる段階

 気象庁が特別会見などをする場合は、危険だということです。

早期注意情報

 警報は、明日・明後日のなどの先のことを判断する材料にはなりません。警報急の現象を予想して発信してるのが、早期注意情報です。

  • 5日先まで予想している
  • 「高」「中」の2段階で発表している
  • 災害が起こると命にかかわるので、可能性が低いものを「中」として発表している

キキクル

 気象庁から市町村単位の警戒レベルが出されると、スマートフォンなどで状況を確認できるというものです。

  • 土砂災害、浸水災害、洪水災害の状況がわかる
  • 5つの色で地図上に危険度を表示できる
  • リアルタイムに確認できる
  • 10分ごとに更新されている

家の補強

 建築基準法が改正された1981年6月よりも前に建てられた住宅は、地震のゆれに弱い可能性があります。耐震診断の受診がおすすめです。

 転倒防止のヒントです。

  • L字金具やベルト式器具などで、家具を壁に固定する
  • ストッパー式器具で、角を壁側に傾斜させる
  • 天井との間のつっぱい棒などで、家具を固定する
  • 引き出しや空き扉には、飛び出し防止器具を取り付ける
  • 本棚などには、滑り止めシートなどを敷く
  • PC機器類は、粘着マットやストラップ式器具で机に固定する

震災後のパニック対策

 パニック心理の変化をみてみましょう。

  1. 自宅にある食料が1日から2日でなくなりそうだと感じる
  2. インスタント食品を買い足せば数日はどうにかなると考える
  3. コンビニやスーパーにインスタント食品はあるが、在庫が少ないのではないかと心配になる
  4. テレビが使えず相談することができないので、現状がわからない
  5. パニックになり、必要のないものまで買ってしまう
  6. 1度パニック買いをすると、次から冷静な判断ができなくなる

 パニック買いをしないために

  • 不安を高め過ぎない
  • 周囲のパニック行動を制止して、パニックのきっかけを防ぐこと
  • リーダーをつくり、統制のとれた行動をする
  • 自分だけ助かろうとしない
  • 正しい情報のみを迅速に伝える

災害後に流行する感染症

 多くの人が暮らすことになる避難所は、狭く閉じられた空間になります。そのため、ノロウイルスやインフルエンザなどが蔓延しやすいのです。睡眠不足や栄養不足が日に日に重なっていき、精神的ストレスをかかえやすくもあります。すると、抵抗力が低下して感染症にかかりやすくなると言えるのです。

 感染予防のために

  • 食事は加熱したものをとる
  • 安心して飲める水だけ引用し、きれいなコップで飲む
  • ごはんの前、トイレの後は手を洗う
  • オムツは特定の場所に捨てる
  • 咳エチケットを守る
  • 熱っぽい、のどの痛み、咳、ケガ、嘔吐、下痢がある場合は、医師・看護師・代表の方に相談する

 特に相談が必要な状況は

  • 咳がひどいとき
  • 黄色い痰が多いとき
  • 息苦しいとき
  • 呼吸が荒いとき
  • ぐったりしているとき
  • 顔色が悪いとき

津波に備える

 津波から逃げるときは、より遠くに逃げるより、より高いところに逃げましょう

 津波標識は、避難するときの目安になります。

  • 「津波注意」標識…津波の危険がある地域を示したもの
  • 「津波避難場所」標識…津波でも安全な高台を示したもの
  • 「津波避難ビル」標識…津波でも安全な建物を示したもの

 津波は危険です。
 地震で発生した津波は、目に見える波の高さがあてになりません。
 オリンピックの短距離選手なみのスピードで迫ってきます。
 繰り返し津波が襲ってきて、1度目が一番大きいとは限らないのです。
 襲ってくる水量がわからないので、過去の経験が全くあてになりません。

 津波警報がでたら、素直に非難しましょう。

緊急速報メールの設定

 気象庁が発信する警報や自治体が配信する避難情報を受信することができます。

  • iPhome
    1. 「設定」>「通知」を選択
    2. 画面の1番下までスクロール
    3. 「緊急速報」を選択肢し、オン・オフを切り替える
  • Android
    1. ステータスバーをおろし、「設定」を選択
    2. 「アプリと通知」>「緊急速報メール」を選択
    3. 「アプリの通知」を選択肢し、オン・オフを切り替える

災害情報のホームページ

環境省のホームページ

気象庁のホームページ

国土地理院のホームページ

国土交通省のホームページ

地震調査研究推進本部事務局のホームページ

総務省消防庁のホームページ

津波ディジタルライブラリィのホームページ

内閣府防災情報のページ

防災科学研究所のホームページ

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