小説「嚙みあわない会話と、ある過去について」を読んで

 ニュートンの定期便が来ないので、急ピッチで、辻村深月先生の小説を読みました。なかなか感慨深い作品なので、まさに「心に響く一冊」になりえると思います。

書籍情報

タイトル

嚙みあわない会話と、ある過去について

著者:辻村深月(つじむら・みづき)

1980年2月29日生まれ。山梨県出身。千葉大学教育学部卒業。2004年に『冷たい校舎のときは止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。『ナツグ』で第32回吉川英治文学新人賞、『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞を受賞。2018年には、『かがみの孤城』が第15回本屋大賞で第1位に選ばれた。その他の著作に、『ぼくのメジャースプーン』『スロウハイツの神様』『ハケンアニメ!』『朝が来る』『傲慢と善良』『琥珀の夏』などがある。

そでより抜粋

出版

講談社文庫

ストーリー

ナベちゃんのヨメ

 ナベちゃんは世話焼きな性格をしている。学生時代は練習で残っているメンバーに差し入れを入れたり、恋愛相談によく載ってくれていた。女の子と距離が近かったが、モテるわけではなく彼女もいなかった。
 そんなナベちゃんが結婚するという。なんでもその嫁がヤバいらしい。
 嫁さんは「かなり気にする人」みたいだ。

 周りは、ナベちゃんには違う人がいいのではないか。そんなことを話題にはじめる。

 それでも、ナベちゃんは幸せなのではないか?
 ナベちゃんは今、嫁に必要とされている。私も周りの女性もナベちゃんを選ばない。
 ひとの嫁を嗤う権利は私たちににはない。

パッとしない子

 国民的アイドルの高輪佑25歳は、教師として通っている学校の元生徒だった。当時の印象としては、パッとしない子だった。
 今では、司会業に絵、多彩な才能をテレビで発揮している。
 娘も、生徒も、みんな「たすくん」のファンである。

 そんなアイドルが、母校に帰ってきて取材をする。懐かしの学校を訪れて、ルーツを探るような番組の収録である。「20分くれない?」とマネージャーに懇願し、話す機会をくれた佑。話があったのは佑の方だったようだ。

 家族や生徒に、佑の昔の印象を聞かれたときに答えた内容が、ファンレターを通して佑に伝わっていた。尾ひれがついて。

 「先生は僕たち兄弟のことを、いつも疎ましく思っていたよね。」「世の中には尊敬しなくていい大人もいるんだと。教えてくれた初めてのひとです。」「家族ぐるみで嫌いだった。」と、凄く恨んでいたことを話す佑。そんな思いでいたことを知らなかった。ごめんなさいと謝るも、今後テレビや広告、全てにおいて僕をみないでくれといわれる。

 話す機会が終わると、いつものアイドルに戻り愛想を振いまいて、帰っていった。

ママ・はは

 須賀田竜之介くんのお母さんは、いわゆる意識高い系のひと。教科書の選定や、体操着をその場で洗わせて汚れを落とさせる提案をするような母親。子どもには、ゲームをやらせず、お菓子を食べさせないようだ。

 ママ友がいうには「そういうお母さんはそのうちいなくなるよ。」という。聞くと、真面目な教育熱心な「昔の」母親をもっていたそうだ。ある日を境目に、「今のママ」になったいう。ママとは仲が良さそうな雰囲気を出している。

 「まあ、大丈夫じゃない?そういうお母さんはきっと、そのうちいなくなるよ。」

軽くホラーなお話です。

早穂とゆかり

 日比野ゆかりは、子供のころは霊感少女だったり、空気が読めずに、周りから距離を置かれていた。今は個人塾を経営するカリスマ的存在になっている。

 湯本早穂は、SONGのライターをしている。そして、ゆかりの取材をすることになった。

 「バカにしていたこと、覚えてないのでしょうね。」子どものころにされた、イジメと感じたことを告白するゆかり。居心地の悪さを感じつつも、取材を続けなければならない状況を造られる早穂。極めつけに、取材した内容を記事にすることをNGにされ、仕返しされる。

感想

 ひとによって、幸せの形が違がうこともあります。誤解や噂が大きくなることもあります。子どもの教育の正解は何でしょう。いじめた側は覚えておらず、いじめられた側はいつまでも覚えています。こんな、ことがあるかもしれません。自分の過去は大丈夫ですか?そんな恐怖の問いかけについて真剣に考えてみました。

 細かいことまでみれば、大丈夫ではないです。嫌なことしてしまったなと思ったことはかなりあります。1つ思い出すと、止まらなくなるので書きません。

 被害にあったことも覚えてます。えこひいきをする体育会系の教師にされたことや、よくわからんがキモい呼ばわりされたこと、「俺あいつ嫌いなんだよ」と教師が他の生徒に言いふらしていたこともありました。少なからず子どものころに、人間関係で嫌な思いをすることはあります。

 そんなこと思いながら、佑とゆかりは大人になってもイタい人だな…と思いました。

 イジメは100%イジメた方が悪いのです。大人になっても変わりません。辞めましょう。なんのメリットもないと思います。

 ネットがこれだけ普及している世の中で、佑とゆかりは、人生を棒に振るかもしれない行動を起こしました。自分も不愉快極まりなく感じたお店の評価を、食べログのようなサイトで「最低」をつけたことがあります。

 地元記者にケンカを売るなんて、自殺行為です。塾の経営者とのことですが、「良い記事」書けそうではないですか。それを機に早穂は出世できるかもしれません。

 たすくんも、アイドルグループで流行っているメンバー脱退や解散をするはめになるかもしれません。自分が商品であるにもかかわらず、「自分をみるな」なんて正気の沙汰ではありません。仕事をなんだとおもっているんでしょう。

 そんなくだらないことを、もんもんと考えて辻村深月先生の術中にはまってしまいました。

 ずっと他人について考えることは無理です。傾聴スキルは医者のスペシャリストのスキルです。そんなものをずっと身につけていることはできません。イジメたとしても、自分のことを許すことは大切です。

 よほどのクズでない限り、顔ニュートンと強い印象は残っているので、イジメた側も覚えています。私を過去にイジメたひとに聞いてみたことがあります。しっかり覚えてました。(別に恨んでなどいません)普通に話ができました。

 この物語は、フィクションです。そのことを頭に入れたうえで、
この小説を読み、他人の思っていることに関して考えてみるのもいいかもしれません。

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