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目次
書籍情報
会社と株主の世界史
中島茂
中島経営法律事務所代表。弁護士。弁理士。
東京理科大学MOT上席特任教授。
日本経団連「行動憲章実行の手続き」改定に関与するなどの経歴を持つ。
日経BP
- まえがき
- 第1章 「会社は法人である」って、どんな意味?
- 「法人」って何?
- それでも、「街に花咲く」法人たち 法人はなぜ必要なのか
- 公証人による「定款」の認証
- 法人、それは国家公認の独占権の「入れ物」として生まれた
- 「法人誕生のエピソード」と現代の株式会社
- 第2章 「定款の壁」を超えて――怪物ウルトラ・ヴィーレスとの戦い
- 分かりにくい定款の意味合い
- 株式会社全体にわたる「定款」の存在感
- 「定款の壁」―会社は目的欄に書かれていない活動はできない!
- 実例にみる定款の壁S社団事件
- 定款の壁は国王の特許政策から生まれた
- 「定款神授説」で神秘性を加味
- そして、怪物「ウルトラヴィーレス」が生まれた
- ウルトラヴィーレスとの戦い―政治献金判決
- 定款の壁が消えたことの影響
- それでも、定款の目的記載は残すべき
- 第3章 法人制度の欠陥―法人は人に危害を加えても責任を負わない?
- 法人が人に危害を加えるとどうなるのか
- 法人の民事責任を正面から問う法律は、例外を除いて存在しない
- 法人の刑事責任――「刑法」は法人には適用されない!
- 法人が法的責任を負わない「歴史的な理由」
- 法人が責任を負わない「現代的な理由」
- 法人制度の欠陥は、なぜ非難されなかったのか――代替制度の功罪
- 使用者責任の問題点 民事の代替制度、その1
- 代表者行為責任民事の代替制度、その2
- 新しい動き法人の不法行為責任を正面からとらえる動きが始まっている
- 法人の刑事責任
- 「法人の法的責任論」のこれからについて
- 第4章 株主有限責任はなぜ認められたのか -有限責任と引き換えに求められる公共性
- すべてを物語る「リミテッド」という呼び方
- 本当は変な「有限責任」
- 東インド会社の出資者たちは「無限責任」を負っていた
- 有限責任は王様の部下に対する思いやりから始まった
- 「南海会社狂騒曲」と「泡沫会社事件」の影響で強まる有限責任への動き —有限責任制への第2ステップ
- そして、有限責任の確立へ―有限責任の第3ステップ
- 有限責任制の実現と公共事業
- 日本における株主有限責任制の採用
- 株主有限責任制の現代的な課題―ホールディングス
- 第5章 株式の譲渡は自由で、証券マーケットは独立したもの -株式を「売る権利」
- 株式譲渡の自由、原則と例外
- なぜ株式譲渡の自由が必要なのか 株式譲渡の自由がなぜ保障されるのか
- 株式譲渡の自由に関する会社法の変遷
- 株主の「会社を見切る権利」の視点で南海会社狂騒曲をみる
- 「証券マーケット」それは「コーヒーハウス」から始まった
- 現代に引き継がれる「コーヒーハウス」の伝統
- 第6章「所有と経営の分離」、だから「コーポレート・ガバナンス」 ―そして、ガバナンスの核心は株主総会
- 所有と経営の分離
- 所有と経営とが一致していた東インド会社、分離している現在の会社法
- 所有と経営の分離、それは規模の拡大から始まった
- 会社法の変革「所有と経営の分離」を公認する代わりに、「委任」が登場
- 株主と取締役とをつなぐ絆は「真の委任関係」
- 受任者が負っている4つの法的義務
- コーポレート・ガバナンスはなぜ必要なのか
- 第7章 変化し続ける「株主総会」
- 「万能主義」から「限定主義」、そして新たなステージへ
- 株主総会の概要
- 株主総会の本質―「信頼感」と「緊張感」
- 株主総会の「不幸な歴史」
- 「株主提案」が増えている! それはなぜか
- 「気候変動対策」が提案されている理由は何か―世界の潮流
- なぜ、株主総会は「万能主義」から「限定主義」に転換したのか
- 第8章 株主と経営者は「株式会社」を変えていけるだろうか
- 株式会社の目的は「人々の役に立つこと」
- 株主も経営者も、「社会的責任」を背負っている
- 株式会社が直面する現代の課題―「人を大切にする時代」への変革
- 株式会社が直面する現代の課題―「気候変動対策」への要請
- サステナビリティとは将来世代を守ること
- 株式会社が変わるための多くの課題
- 経営者は会社を変えていけるか
- 「株主」は、会社を変えていけるか
書籍紹介
ビジネスの歴史と法の絡み合いを深く掘り下げた一冊です。この書籍は、会社法の基本からその発展、そして現代の企業経営に至るまでの軌跡をたどります。
会社法を学ぶ
会社法を学ぶことは、企業経営や投資判断に直結する知識を身につけることに他なりません。歴史的な視点から見ることで、現代のビジネスの問題や法制度がどのように形成されてきたのかが明確になります。ビジネスパーソンにとって必要不可欠な思考力を鍛えるための道具箱と言えます。
経済の歴史
会社と株主の関係を歴史的に追いながら、企業の成長と衰退、株主価値の最大化、そして企業統治の重要性について詳細に論じています。特に注目すべきは、企業の意思決定がどのように株主の利益に結びつくか、そしてそれが社会全体にどのような影響を与えるかという点です。
ビジネスの課題についても
法律を理解するだけでなく、ビジネスの現場で直面するさまざまな課題に対する洞察を提供します。例えば、M&A(企業の合併・買収)や企業の再編、株主総会の重要性など、今日のビジネスシーンで頻繁に見られる現象についても深く触れられています。
法律や経済に詳しくない読者でも理解しやすいように工夫されています。ビジネスにおける成功や失敗の事例を通じて、法律がどのように実務に影響を及ぼすかを具体的に示すことで、読者に多角的な視点を提供します。
ビジネス判断力を磨くための優れた教材であり、企業法務に携わる方だけでなく、経営者や投資家、さらにはビジネスに関心を持つすべての人に読んでもらいたい一冊です。歴史を通じて見る会社法は、単なる規則や制約ではなく、企業活動の原動力であり、社会の進化と共に変化してきたものだと感じさせられます。
試し読み
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
ジョナサンズ、株式取引所となる

※イメージ
コーヒーハウスは、17世紀半ばから18世紀にかけて英国で大流行した交流の場です。水が不衛生で飲めなかったため、ビールかワインを代わりに飲んでいた時代に、アラブから新しい飲み物として「コーヒー」が紹介されました。そんな時代の潮流を受けて、1650年にオックスフォードでコーヒーハウスが誕生しています。
コーヒーハウスは、企業化、政治家、学者、作家、文学者、船長、金融業者、労働者が身分のへだてなく集まることができる社交場でした。膨大な情報が集まる場所です。南海泡沫事件で英国人が得た教訓に、十分な情報が得られる場が必要という認識があったため、コーヒーハウスは賑わいをみせて自由闊達な議論の場となりました。
政府によって規制されることがない、自主独立の場としてコーヒーハウスの独自性と付加価値を高めていたようです。言論統制、情報統制がされないビジネス場でした。
この時代の政府の厳格な法規制の方針に、株式取引の仲買人が強く反発したことから、コーヒーハウス(ジョナサンズ)が株式取引の場となったのです。これが今日のロンドン証券取引所(LSE)となっています。
労働時間に対する関心

日本のビジネスは「働きすぎ」と国際社会から批判されています。海外メディアでは、長時間労働の結果として『karoushi』が国際語になっているほどです。「死ぬまで働く日本の若者」と煽るようなタイトルでニュースにっています。海外から異常視されている部分があることを私たちはほとんど知りません。
労災認定のガイドラインで時間外労働が、2か月~6ヵ月の期間の平均が「80時間」を超えているときは、業務とうつ病などの関連性が強いとして、労働時間と労災の時間を決めています。厚生労働省の発表によれば、事業者のうち37.1%で平均80時間の長時間労働が確認しているようです。
取り戻せない健康を害してまで働く時代は終わりかけており、長く働く体系や同調圧力といった考え方を経営者自身が改める必要があります。会社も良い子であることが求められており、次々に問題のある行動が情報発信されています。
株主は情報に敏感なので、従業員を適切に扱うことを俯瞰してみています。事業部を廃止するにあたっての株主総会では、「異動する従業員たちを温かく迎えてやってほしい」との意見が述べられています。そんな株主の意見が多くなってきました。