アメリカ大統領とは何か/著者:西山隆行

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書籍情報

タイトル

アメリカ大統領とは何か

最高権力者の本当の姿

発刊 2024年9月13日

ISBN 978-4-582-86066-5

総ページ数 255p

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出版社リンク 平凡社

著者

西山隆行

法学博士。成蹊大学法学部教授。
専門は比較政治、アメリカ政治。

出版

平凡社

もくじ

  • 「大統領は何もしていない!」と言う前に
  • 第1章 大統領の権限とその発展
    • 1 構造的な仕組み
      • トランプの大統領令とバイデンの大統領令
      • 大統領の権限はどのくらい?
      •  行政面では圧倒的な権力を持つ
      • 三権分立と連邦制が権限を抑制
    • 2 歴代大統領の事例
      • ワシントンとジェファソンの自制心
      • 例外だったジャクソンとリンカン
      • 革新主義時代とシオドア・ローズヴェルト
      • 使命外交を重視したウッドロー・ウィルソン
      • フランクリン・ローズヴェルトとニューディール、第二次世界大戦
    • 3 大統領権力が直面するジレンマと克服方法
      • 歴史的な文脈を知るということ
      • 連邦議会と裁判所からの権限拡大の歯止め
      • 政界勢力を説得する力が求められる
    • 【コラム】 ファーストレディ
  • 第2章 連邦議会と行政部門との関わり
    • 1 大統領と連邦議会との関係
      • 権力の抑制と均衡を図る三権分立
      • 連邦議会に提出する大統領の「三大教書」
    • 2 分割政府
      • 大統領制と議院内閣制
      • 分割政府の下で政治は停滞するか?
      • 政治的混乱は統一政府の時代にも生じることがある
      • 連邦政府の一時閉鎖
      • 通商政策に関する決定も制限される
      • 軍事安全保障面でも連邦議会が足枷になりつつある 
      • 大統領令の効果は限定的
      • 行政協定は破棄される可能性もある
    • 3 行政部門
      • 行政権も制約されることがある
      • 大統領の人事権
      • どのような人をスタッフに任用するか 
      • 大統領の個性が反映される政権チーム
      • 「集団浅慮」が生じるおそれ
      • 大統領に不測の事態が起きたら…
    • 【コラム】 重要性が増しつつある「副大統領」
  • 第3章 50州が決定権を持つ連邦制
    • 1 連邦制と州政府
      • アメリカ合衆国は主権国家の集まりとして成立
      • 州の多様性と国家としての共通性とのバランス
      • 奴隷制・死刑制度・銃規制
      • 「福祉磁石論」と「底辺への競争」
    • 2 大統領選挙と連邦制
      • 大統領が決まるまで
    • 3 連邦政府と州政府の権限
      • 州政府からの反発を最小限に抑える
      • 州政府に権限を委譲すると…..
    • 4 連邦政府 vs.州政府
      • 「ワクチンを打つべきか?」「マスクを着けるべきか?」
      • 中絶問題
      • 環境規制
      • 移民問題 
    • 【コラム】州ごとに異なる投票権
  • 第4章 政治的に大きな役割を果たす裁判所
    • 1 政治部門としての裁判所
      • 連邦最高裁判所判事の指名問題
      • 裁判所を積極的に“活用”する少数派
      • 大統領も法の制約を受ける
    • 2 連邦最高裁判所
      • 州裁判所と連邦最高裁判所
      • 判事の数を増やそうとした「コート・パッキング案」 
      • 連邦最高裁判所主席判事(最高裁判所長官)
      • アメリカ法曹協会による評価 
      • 承認手続きが政治問題化する「ボーキング」
      • 2016年と2020年の任命手続きが残した禍根
      • 下級審の判事も大統領が指名
    • 3 大統領と裁判所の“駆け引き
      • 大統領に対する「裏切り」!?
      • 国民からの支持を重視する判事たち
      • 連邦最高裁判所の戦略的行動
    • 【コラム】 連邦最高裁判所に対する不信感
  • 第5章 選挙・世論・メディア
    • 1「再選」を目指して行動する大統領や議員たち
      • 中間選挙は「大統領に対する中間評価」ではない
      • 常時選挙戦状態下にあることを意識する近年の大統領
    • 2 政治資源としての世論
      • 世論と民主政治
      • リップマン命題は正しいか?
      • 報道官とスピーチライター
      • 世論を踏まえて政策の見せ方、論じ方を変える
      • 地域別の世論や各集団の意向を意識
    • 3 メディア対策
      • メディアをうまく利用する
      • 短時間でインパクトを残すテレビ
      • 中立性よりも独自色を狙うオピニオン番組
      • 支持者にしかメッセージは届かない 
      • フェイク・ニュースにどう対応するか
      • オバマとトランプ、それぞれのメディア戦略
    • 【コラム】 フェアネス・ドクトリン?
  • 第6章 政党と利益集団
    • 1 政党との関係
      • 大統領は党からの無条件の支持を得られるわけではない
      • 党首も党議拘束もない政党
      • 分断傾向下では党との密な関係が肝
    • 2 二大政党の基本的性格
      • 利益集団の集合体としての二大政党
      • リベラルな民主党
      • 保守の共和党
      • 利益集団と政党の関わりの変化
    • 3 利益集団
      • 切っても切れない関係
      • 利益集団と金
      • 適切な情報を入手できるメリット
      • ロビイストとの適切な関わりが重要
      • アメリカ政府と強いつながりを持つイスラエル・ロビー
      • イスラエル・ロビーと福音派
      • 外交政策に大きな影響を及ぼすユダヤ系議員 
      • 状況に応じて利益集団との関わりを変える
    • 【コラム】 全米ライフル協会(NRA)
  • 第7章 国民や国家を守るための対外政策
    • 1 外交・安全保障政策
      • 危機における意思決定
      • 役割が低下しつつある外交エリート
      • 最重要の機密情報にはアクセスできない
      • その判断が適切か否かを評価するのは難しい
    • 2 中間層のための外交と米中関係
      • 内政重視傾向にある世論
      • 自由貿易への懐疑
      • 米中対立、覇権競争という幻想に縛られないことが大事
    • 3 世界の中のアメリカ
      • 外交上の遺産のためには何をしたらよいか
      • アメリカによる覇権秩序の揺らぎ?
      • アメリカ的信条に基づく理念と原則を世界に広める
      • 理念に基づく外交より現実主義
      • 理念外交の限界、権威主義国の台頭
      • 多国間主義外交という幻想
      • 国際機関との関わり
    • 【コラム】 米中関係の変化と先端技術
  • 第8章 偉大な大統領とは?
    • 1 大統領の「偉大さ」を決めるもの
      • リンカンは本当に偉大な大統領だったのか
      • 大統領のランキング
      • 大統領の生まれ育った環境は影響するか?
      • 力量がある人が大統領になれるわけではない?
    • 2 大統領のリーダーシップ
      • 国民は大統領にリーダーシップを求める
      • そもそもリーダーシップとは何か
      • 分断状態下はリーダーシップを評価するのは困難
    • 3 分断を乗り越えるための重要項目
      • マイノリティを取り込む/Z世代に期待できるか
      • 疫病・戦争・テロなどの国家的危機
    • 【コラム】 大統領の「嘘」
  • 2025年1月の新大統領就任に向けて
  • 参考文献
  • 歴代アメリカ大統領一覧

書籍紹介

 この書籍は、表面上では世界で最も強大な権力を持つとされているアメリカ大統領の実像を解き明かします。

ドナルド・トランプについて

 アメリカ大統領がどのようにしてその地位に就き、その役割が社会や政治にどのような影響を及ぼすかを詳細に説明しています。特に、ドナルド・トランプの2017年の大統領就任から始まり、歴代の大統領が直面した政治的な挑戦や成功、失敗を比較しながら、アメリカ大統領の権力の限界や実際の運用について論じています。トランプの「アウトサイダー」としての立ち位置や、彼が大統領令を通じて行った政策の推進と議会との対立などが具体的に取り上げられています。

政治システムを解説

 書籍は大統領制の構造を理解する手助けをし、アメリカの政治システム全体を理解するための基礎を提供します。オバマ政権からバイデン政権まで、各大統領の政権運営がどのように異なり、どのような共通点があるのかについても考察します。これにより、読者は大統領一人が全ての政策を決定するわけではなく、議会や州政府、さらには司法との相互作用の中で権力を発揮しているという現実を理解することができます。

試し読み

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

大統領令の効果は限定的

 三権分立により、連邦議会、大統領、裁判所が独裁できないようにしているのが、合衆国憲法の特徴です。連邦議会と大統領の協力が見込めず、国民が変革を求めるような状況では、大統領令を出すよりほかありません。

 しかし、アメリカの大統領令は法律を代替するものではなく、政策執行の優先順位を変える目的で行われます。あくまでも立法部が作った法律の内容を実施するのが基本であり、法律上の根拠がないものを大統領令では行うことができません。

 有名な大統領令としては、積極的差別是正措置についてケネディが発令したものが挙げられます。実はこれは高頻度で実施される命令です。

2025年1月の新大統領就任に向けて

 アメリカは、連邦制を採用するとともに、多民族国家でもあります。大統領は長らく、多元性を統合する存在だと説明されてきました。

 その大統領を選ぶ選挙の結果、民主政治に対する疑念が強まったり、政治や社会の分断が進む可能性が極めて高い状態にあるのが今のアメリカです。このような状態では誰がアメリカ大統領になっても大変でしょう。

 分割政府になると、混乱をにさらなる拍車をかけて、大統領が困難をむかえます。2025年1月20日の正午に就任する大統領の政権運営について考える上で、本書が有益な情報を提供することができれば幸いです。

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