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目次
書籍情報
ごみ収集の知られざる世界
藤井誠一郎
立教大学コミュニティ福祉学部准教授。
政策科学博士。同志社大学総合政策科学研究科嘱託講師、大東文化大学法学部准教授を経て、現職。
専門は、地方自治、行政学、行政苦情救済。
筑摩書房
- はじめに
- 第1章 「あなたが出したごみがどうなるか」知ってますか
- 清掃事業の全体像
- 「ごみ」はどう集められ、どう処理されているのか
- ごみが出される現場で起こっていること
- 清掃車にもいろいろある!
- ごみ収集作業員は先生にもなる
- 家庭以外でも出るごみにも注意が必要
- 第2章 ごみ収集にかかわる仕事はいろいろありすぎる
- 女性だけの収集チームもある
- 清掃車から流れるメロディ
- 職業差別を乗り越えた先進的な屎尿収集
- 環境をビジネスにした人
- リサイクルの裏には人がいる
- 第3章 ごみと地域は表裏一体
- 北の大地、雪の中でのごみ収集
- ごみ収集で考えた多文化共生
- 粗大ごみは宝の山愛知県豊田市のリユース工房の取り組み
- 首長がごみ収集?その先にあるものとは?
- 繁華街美化モデルの他地域への展開―神田鍛冶町二丁目の挑戦
- 祭りのあとのごみ
- 第4章 一緒に考えるごみと持続可能性
- 最終処分場を意識したごみ減量
- どうすれば水平リサイクルができるのか
- 第5章 これからのごみの話をしよう
- 知られざる事業系廃棄物の収集の実態
- 清掃事業におけるDX
- 不測の事態へいかに対応するか
- おわりに
- 東洋経済オンライン「ごみ収集の現場から」での初出について
書籍紹介
この書籍は、私たちが日常的に発生させるごみがどのように管理され、処理されるのか、その過程を通じて浮かび上がる社会問題や環境問題、そしてそれらに取り組む人々の努力と工夫を深く掘り下げています。
ごみ収集のプロセス
藤井誠一郎氏は、大東文化大学の准教授であり、自身でごみ収集の現場に立つことで得た体験と観察を基にこの本を執筆しました。ごみ収集という日常的な行為が、実はどれほど複雑で多様なプロセスを経ているのか、その背景にはどんな課題や技術、そして人間の知恵と努力があるのかを、リアルなフィールドワークから読み解いています。
ごみの最終処分地まで追う
ごみの分別や収集方法、さらには最終処分地まで、ごみの一生を追っていくことで、私たちが通常見過ごしてしまうような細部にまで光を当てます。例えば、ごみ収集車の一日や、ごみ焼却プラントの運営、リサイクルシステムの実情など、読者はこれまで考えたこともなかった視点から日本のごみ問題を理解することができます。
社会を知る
『ごみ収集の知られざる世界』は、単なるごみ処理のガイドではなく、都市生活や消費社会の影の部分を照らし出す社会学的な洞察です。環境問題に興味がある人にとってはもちろん、社会の構造や地域の特性について深く考えさせられる一冊でもあります。
ごみを捨てた後のことを考えたことがあるか?
この本を通じて、私たちが無意識に捨てるごみが、どれほど多くの手を介して処理され、最終的にどんな形で社会に還元されているのかを知ることは、生活を見直すきっかけともなります。藤井誠一郎氏のフィールドワークと分析は、私たちに「ごみ」とは何か、そしてそれをどう扱うべきかについて、新たな視点を提供してくれます。
試し読み
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
ごみ収集の現場
ほとんどのごみは、自治体のルールに基づきしっかりと分別され、指定された曜日と時間に排出されていますが、中にはそうでないごみも見受けられます。可燃ごみの収集の際には、必ずと言っていいほどゴミ袋の中に瓶、缶などの資源ごみが混入しています。
ごみを掴んだ瞬間に音がしたり、妙な重たさを感じたりするので分かりますが、その際には、不燃ごみを取り出さざるを得ません。それらを清掃車に積み込むと、清掃工場の焼却プラントを損傷する可能性があります。
また、ゴミ袋をしっかりと結んでいないため、収集作業で掴んだ瞬間にほどけてしまい、ごみがあたりに散乱するケースがあります。手で直接ゴミを触れないように、清掃車に積んでいるベニヤ板を用いて集めます。
しっかりと分別してごみを出しているが、カラス除けのネットをしていないため、カラスに突かれてゴミが散乱しているケースもあります。この場合にも、かき集める必要があります。
ペットボトルの収集では、飲み残しがある場合があり、収集時に清掃労働者に負担がかかることが多々あります。
リサイクルボックスの収集人はルートセールススタッフ
自動販売機付近のリサイクルボックスに排出される瓶・缶・ペットボトルは産業廃棄物として扱われるため、その設置者が責任を持って処分する必要があります。しかし、実際には設置者ではなく、自動販売機に飲料を補充するルートセールスタッフが業務の一環で排出された瓶・缶・ペットボトルを収集しています。
最近の自動販売機では、どの商品が何本売れたかや在庫状況をオンラインで確認することができます。このデータを分析して補充数を決めたり、ニーズに合わせた品揃えをするため、ルートスタッフの端末には補充すべき種類の飲料と本数が表示されます。
自動販売機への補充が終わると、付近に設置されているリサイクルボックスに排出された瓶・缶・ペットボトルを収集します。リサイクルボックスから空き容器の入ったビニール袋を取り出し、新しいビニール袋を設置するまでが仕事となっています。
収集した空き容器の袋はルートカーの屋根に積み上げ、前から順に並べてネットをかぶせるといった手間もあります。このような作業を約15か所で繰り返します。
営業所に戻ると、ルートカーに積み込んだ空き容器の袋をコンテナに移し替え、そのコンテナはさいたま市にあるリサイクル・プラザJBの中間処理施設へと運ばれ、選別されます。その後、リサイクルを経て再度ペットボトルへと生まれ変わります。
収集する際に明らかに問題なのは、紙ごみや美容容器、スプレー缶、飲み残しのペットボトルが一緒に捨ててあることです。ガムやタバコの吸い殻もあります。リサイクルボックスはゴミ箱ではありません。