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目次
書籍情報
★かんがえるタネ★
牛乳から世界がかわる_酪農家になりたい君へ
小林国之
北海道大学大学院農学研究院准教授。
農業・農村振興に関する社会経済的研究として、新たな農村新興のためのネットワーク組織や共同組合などの非営利組織、酪農・生乳流通や色を巡る問題を追究している。
農山漁村文化協会
- 酪農漫画
- 酪農という仕事
- 一杯の牛乳から世界が見える
- 日本の酪農の歴史
- 乳牛の飼い方
- 乳牛の生活サイクル
- 生乳の流通はすごい!
- 排泄物は生産物
- 酪農家になるには
- 座学編
- 牛は人間が食べられない「草」を食べて生きている_日本の酪農のお話
- 草を食べる牛、それを飼う酪農という仕事
- 日本の酪農は、エサを輸入に頼っている
- 都会の牛と田舎の牛は役割が違う
- 脂肪分の高い牛乳を搾るためのエサって?
- COLUMN こんなに違う! 世界の酪農
- 牛が食べる飼料と、エサと育てる飼料はどこからきている?_自給と輸入のお話
- 輸入の飼料代が安かったから成立していたけれど
- 輸入に頼ることが、食料自給率の低さの要因に?
- 飼料自給率を計算に入れない「食料国産率」が登場
- 牛乳は国産だけど、エサはほとんど輸入
- 「国産」ってなんだろう?
- お金さえ払えば、海外から肥料や飼料は買えるのだろうか?
- 輸入する国に求められる「ふるまい」って?
- 日本で「酪農を営む」とは、世界の貿易のあり方を考えると
- バターは不足、でも牛乳は余るのはなぜ?_加工と流通のお話
- お母さん牛は毎日、乳を出す
- 弱い立場の酪農家が「共同販売」をつくるまで
- 日本は生乳を「牛乳」で飲む割合が高い!
- バターと飲用乳で価格が違う⁉
- 「協同の力」でできること
- 牛乳が余る、でも乳価は上がることもある
- 酪農家は減ったが約20年をかけて増産
- 政策でも価格や需要は上下する
- 生乳の市場構造_国内の生産量と輸入のバランス
- 生クリームの市場拡大の影で、バター原料の優先順位が下がる
- COLUMN こんなに伸びる! 世界の乳・乳製品の動向
- 牛のゲップはほんとうに環境を破壊しているのか?_酪農と環境のお話
- もともと牛は「ふん尿」のために飼われていた!
- 牛の数を増やしたことで、地球に負担をかけている
- 牛のゲップが地球温暖化の一因に⁉
- 牛のルーメン(第1胃)の不思議な世界
- 大気中の寿命が短いメタンの性質を、どう活かす?
- 環境破壊する動物から、貢献する動物としての牛へ
- 貴重な資源、ふん尿のさまざまな利用方法
- 「自然放牧」って自然にも牛にも優しいの?
- 放牧は良いことが多いように見えるけれど
- 穀物は牛が食べるべきか、人間が食べるべきか?
- 環境破壊の対策としての「フードテック」
- そもそも、動物を食べる必要はあるのか?
- COLUMN ふん尿処理の手法
- 牛で牛を飼うことは「牛に優しくない」のか?_アニマルウェルフェアのお話
- 酪農の経済性・合理性をどう考えるか
- 「工業的な畜産」の行き着くところ
- 動物福祉を理解する前に、キリスト教的な世界観をおさらい
- 動物を食べる必要はあるのか?の問いふたたび
- 生態系からの視点と、動物の権利=アニマルライツ
- 欧米のアニマルウェルフェア基準と「5つの自由」
- 牛にとって優しい飼い方とは
- リジェネラティブ農業の現実に必要なものとは?_酪農・土・地球の未来のお話
- 農業は地球に悪い影響を与える産業?
- リジェネラティブ農業とは
- 土と微生物と動物_生産性を上げて近代農法のセオリー
- 雑草は養分を取り合う敵ではなく、仲間だった
- 土の中に炭素を貯蓄する菌根菌
- 土の循環に不可欠な、家畜という存在
- 土壌を豊かにすることが、持続性のある農業に繋がる
- 「土壌の世界の住人」を中心に農業を考える
- COLUMN 「酪農を知れば、世界がわかる」とはどういうことか?
- 牛は人間が食べられない「草」を食べて生きている_日本の酪農のお話
- 実践編
- 酪農家になりたい! 夢を叶えるために北大へ進学
- ベイリッチランドファーム
- フリーストール牛舎で、乳牛の良さを最大限に引き出す
- ロボット搾乳機を使うことで、牛のストレス軽減にも
- 家族経営の良さとワークライフバランス
- 石田牧場
- 「酪農ヘルパー」を経て新規就農へ
- 循環型農業の理想形としての「放牧酪農」
- 日本一周して「農家が風景を守っている」ことに気づく
- 酪農に正解はない・だから「枝幸らしい酪農」を追求する
- ノースプレインファーム
- 海外の酪農を学んで知った日本との決定的な違い
- 牛1頭で家族が食べていける酪農って?
- 生乳にもっと付加価値を! チーズ作りを始める
- JAけねべつ(計根別農業協同組合)
- 農家の困りごとを一手に引き受けるのが農協の仕事
- 牛飼いになるための研修・就農を徹底サポート
- 農家は協調性が大切、そのチャレンジを応援します!
- ベイリッチランドファーム
- 取材を終えて見えてきた、「酪農家」への道!
- 酪農家になりたい! 夢を叶えるために北大へ進学
- あとがき_「わかるとかわる」。酪農家になりたい君へ
書籍紹介
酪農家を志す若者だけでなく、食や農業、環境問題に興味がある全ての人に向けて書かれています。小林国之氏は、酪農の現場から見える「牛乳」の背景にある多くのテーマを解説します。
- 酪農の現状と未来: 日本の酪農業がどのように運営されているか、またどのような課題と向き合っているかを詳述します。
- 環境と酪農: 牛のゲップが温暖化にどのように関わるか、またその対策としてのリジェネラティブ農業についても触れています。
- アニマルウェルフェア: 酪農における動物福祉についての考察も含まれます。
魅力的なポイント
「モー太郎」のマンガが挿入されており、難しい内容も分かりやすく伝えています。これは、読者に親しみやすさを提供し、理解を助ける工夫です。
北海道の酪農家を取材した内容が含まれており、実際の酪農家の生活や仕事ぶりを体験談として読むことができます。これにより、酪農家になるための道筋や、酪農業の現実を生々しく感じることができます。
牛乳やバターの生産から消費までを追うことで、食と環境の深い関係性を理解できます。特に、牛乳が余ってもバター不足が起こる理由や、酪農と地球温暖化の関係など、日常生活に密着した問題を掘り下げています。
食や農、環境問題に対する理解を深めるための重要な一冊です。小林国之氏の知識と経験に基づく洞察は、酪農だけでなく、私たちが日々口にする食べ物がどのように作られ、提供されるのかを考えさせます。この本を読むことで、世界の見方が変わるかもしれません。酪農や食に興味がある方は、ぜひ手に取ってみてください。
試し読み
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
食料自給率が低いとは?
食料自給率の重要性が指摘されることが多く、特に日本ではその低さが問題視されています。食料自給率の計算方法には金額ベースやカロリーベースなどがあり、その中でもカロリーベースがよく用いられます。
カロリーベースで計算すると自給率が低くなる要因はいくつかあります。まず、日本食に欠かせない納豆や豆腐、味噌、醤油などの原料となる大豆や、小麦の自給率が非常に低いことが挙げられます。また、カロリーの高い食用油も多くが輸入に頼っています。
さらに、日本の酪農業は輸入飼料に依存しており、養豚や養鶏などの畜産も同様です。この飼料の割合を考慮した自給率は、牛肉11%、豚肉6%、卵13%、牛乳・乳製品27%と非常に低い水準にあります。
これらの要因から、酪農業者は資材価格の高騰や円安により経営的に厳しい状況に追い込まれることがあります。
バターと飲用乳では価格が違う
さまざまな用途に使用される生乳ですが、用途別に取引価格が異なります。
飲用向けの乳価が最も高く、バターやチーズなどの輸入が可能な用途については、輸入品との価格競争力を保つために乳価が低く設定されています。これは、乳業メーカーが購入先を海外に奪われないようにするためです。
飲用乳は季節によって需要が左右されるため、価格の高い飲用乳ばかりを出荷するわけにはいきません。「生乳共販」団体が交渉した乳業メーカーとの価格で、酪農家は飲用乳として出荷できない生乳を売ることになっています。
チーズ作り
ノースプレインファームの「牛1頭で成り立つ酪農」の牛乳は、メディアでも紹介され、売上を伸ばしていきました。しかし、付加価値が足りず、チーズ作りに挑戦しました。
実際にフランスの山の中にある牧場に見学に行ったとき、山の中で少数の牛を飼い、その生乳をチーズにして売るという酪農が立派に成立していました。
チーズの製造は1991年から始まり、その後はバターやソフトクリームなどの乳製品も手掛けるようになりました。事業が広がり、現在は40人のスタッフと搾乳牛50頭まで規模を拡大しています。
牛乳や乳製品を自分たちで作ることができれば、大規模な牛の飼育に多額の投資をしなくても、酪農を続けることができます。多くの若い人が小規模ながらも魅力的な酪農を始めてくれるようになれば、酪農の世界はもっと面白くなると考えています。