文明の本質/著者:ルイス・ダートネル

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書籍情報

タイトル

この身体がつくってきた文明の本質

発刊 2024年8月20日

ISBN 978-4-309-25472-2

総ページ数 386p

書評サイト

出版社リンク 河出書房新社

著者

ルイス・ダートネル

ウェストミンスター大学教授。
宇宙生物学を専門とし、火星における生命の痕跡を探すプロジェクトに関わってきた。サイエンス・ライティングで数々の賞を獲得している。

出版

河出書房新社

もくじ

  • はじめに
  • 第1章 文明をつくるソフトウェア
  • 第2章 家族
  • 第3章 エンデミック 風土病
  • 第4章 エピデミック 流行病
  • 第5章 人口統計
  • 第6章 気分を変える
  • 第7章 コーディング・エラー
  • 第8章 認知バイアス
  • おわりに

書籍紹介

 身体が人間の文明形成にどのように影響を与えてきたかを探求する壮大なプロジェクトの集大成であり、ダートネルの前作『この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた』と『世界の起源』に続く三部作の最終章です。

文明をつくるソフトウェア

 ここでは、人間の身体がどのように進化し、その生物学的特性が文明の発展にどのような影響を与えたかを解説します。身体性が文明のソフトウェアとも言える存在であることを示しています。

家族

 家族という単位が、遺伝子や社会構造を通じて、文明の発展に果たす役割を考察。特に、長子相続制度や家族間の伝統的な役割分担がどのように社会システムを形成したかについて言及。

エンデミックとエピデミック

 風土病や流行病が人間の文明に与えた影響を深掘り。病気が歴史の流れを変え、医療や公衆衛生の発展を促す一方で、人口移動や都市計画にも大きな影響を与えたことを論じます。

人口統計

 人口の増減が文明の発展と衰退にどのように関わるか、そしてそれが政策や文化にどんな影響を及ぼしたかを詳細に分析。

試し読み

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

文明をつくるソフトウェア

 動物にとって、集団で暮らすことには多くの利点があります。伴侶を探すのも集団ではずっと容易になります。群れによる狩りも成功率が高くなり、安全が保たれて捕食者から身を守ることができるのです。

 ヒトが繁栄してきたのは、手先が器用なだけでなく、技能を教え合い、情報を交換してきたからです。文化的学習のプロセスは、集団全体に新しい能力を広め、世代を超えて累積されてきました。

 文明と呼ばれる巨大な事業のなかで、複雑ながら平和な社会を築いてきたのは、我々人間です。脳のなかで反応的攻撃性を減らし、社会的なソフトウェアを発達させたことで、比類ないレベルの協力が可能になりました。

エピデミック 流行病

 狩猟採集民は獲物を手に入れると、すぐに処理してその肉を食べました。一方、牧畜民は肉と皮を安定的に供給する方法を確立しました。

 狩猟採集民が手に入れることが難しかった資源を、牧畜民が供給しました。栄養価の高い乳、重い荷物を運ぶ駄獣、犂、四輪車、二輪戦車などは生活を大きく便利にしました。

 しかし、人間と動物が密接な関係を築くと、病原体が進化し、種間のバリアを飛び越える流行病が蔓延しました。インフルエンザは豚やアヒルから、天然痘と結核は牛から、麻疹は犬や牛から人間に移ります。

 疫病は主に軍隊に厳しい犠牲を強いるものでした。例えば、クリミア戦争では赤痢とチフスによって大量の死者が出ました。人口が密集する限界状態では、歴史を通じて疫病が繰り返し発生する事態となりました。

人口統計

 人間の子供を持つ年齢は比較的高いものの、出産の頻度は非常に高いです。伝統的な狩猟採集社会では、出産の間隔はおよそ3年ごとでした。一方、ゴリラ、チンパンジー、オランウータンでは5年ほどの間隔があります。

 人間は育児を手伝う時間を割くだけでなく、食べ物を分け合うことに関しても寛大です。対して、多くの幼獣は自分で食料を探す必要があります。

 人間の赤ちゃんは3歳までに乳離れをしますが、産業化された社会では1歳で母乳をやめることが一般的です。父親や祖父母などは、果物や小動物などを提供して子育てを支援します。また、2人目や3人目の子供を持つと、子育てが少し楽になることが多いです。

 農業社会の発展と共に、人口が密集し、経済的な豊かさが増すことで、子育て環境も改善されました。

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