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目次
書籍情報
少女人身売買と性被害
「強制売春させられるネパールとインドの少女たち」その痛みと回復の試み
発刊 2024年6月7日
ISBN 978-4-910457-05-5
総ページ数 237p
長谷川まり子
認定NPO法人ラリグラス・ジャパン代表。
ノンフィクションライターとして世界の社会問題を取材する過程で、インド・ネパールの越境人身売買問題を知りライフワークにした。
新聞、雑誌、書籍、テレビドキュメンタリーを通じてリポートするとともに、1997年に「ラリグラス・ジャパン」を立ち上げ、その代表として活動を続ける。
泉町書房
- はじめに
- 第1章 人身売買被害者を救うために
- 第2章 インドの売春宿、その歴史と現状
- 第3章 救出された少女たちの社会復帰
- 第4章 保護されても救われなかった女性たち
- 第5章 コロナ禍と人身売買
- 第6章 エカトラ・新しい回復のプロジェクト
- おわりに
書籍紹介
ネパールとインドでの少女人身売買という深刻な社会問題を取り上げたノンフィクションです。本書は泉町書房から出版され、現地の現実を知るための貴重な資料となっています。
本書の内容
著者である長谷川まり子氏は、ジャーナリストとしての視点からネパールとインドの現地調査を行い、被害を受けた少女たちや支援団体の活動を詳細に記録しています。彼女の文章は非常にリアルで、読者は少女たちの苦しみや希望を肌で感じることができます。
背景と原因
本書は、少女人身売買がどのようにして起こるのか、その背景にある貧困や社会的な問題についても詳しく説明しています。ネパールやインドの一部地域では、家族が生計を立てるために少女を売ることがあるという現実が描かれています。
回復への道のり
『強制売春させられるネパールとインドの少女たち』は、単に問題を告発するだけでなく、被害者たちがどのようにして回復への一歩を踏み出しているのかも紹介しています。現地のNGOや支援団体が提供するカウンセリングや教育、職業訓練プログラムなどの取り組みが取り上げられ、それによって再び未来への希望を見出す少女たちの姿が描かれています。
彼女たちのために何ができるか
本書を読み終えた後、読者は少女人身売買の問題に対する認識を新たにし、彼女たちのために何ができるのかを考えさせられます。特に、現地での支援活動がどれほど重要であるかを理解することができるでしょう。
試し読み
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
変わりゆく性産業
一世紀以上にわたりインド最大の売春街として栄えたカマティプラに、10年ほど前から変化が見られます。
2000年代、インドは中国と同じく8~10%の成長を遂げ、アジア有数の新興国へと発展しました。毎年デリーやムンバイを訪れるたびに、メトロの開通や次々と建設される瀟洒なインテリジェントビルに目を見張るばかりです。
ムンバイの中心部にあるカマティプラも、都市開発計画に組み込まれ、新たな街づくりが始まりました。大型ショッピングモールが建設され、カマティプラの売春宿は次々と閉店し、猥雑な雰囲気から近代的な街へと変貌を遂げています。
しかし、悪質な性産業が完全になくなったわけではありません。ムンバイの郊外に拠点を移し、今も営業を続けています。アダル・カナルという国民IDによる不正防止策がとられていますが、偽造IDカードを持たせられた女性たちは、摘発の際に「自分の意思で働いている」と証言させられているのです。
救出された少女の社会復帰
売春宿に売られた少女たちは、10年余りの青春を奪われます。彼女たちが解放されるのは、リンチ覚悟で脱走するか、HIVに感染したときだけです。それ以外は、年齢を重ねて人気がなくなるまで酷使されます。
放り出された後の彼女たちに残された道は、格安の路上コールガールになるか、ネパールの山村から少女を連れ去る役割を担うか、売春宿を経営するおかみになるしかありません。
運よく調査員の協力を得て保護されたサリタは、母国ネパールに送還されました。幸いにもHIVに感染しておらず、他にも目立った疾患はありません。売春宿での2年間で受けた心の傷を癒すために、カウンセリングが行われました。
心が落ち着いてきた頃、サリタはビーズアクセサリー作りや縫製技術などの職業訓練を始めました。保護先で2年間スタッフとして働いた後、お金を借りてイスラエルでメイドの仕事に就きました。
彼女の夢はマイホームを持つことです。イスラエルに渡った1年後の2004年末には、借金も返済し終わっています。
エカトラ・プロジェクト
雇用創出を目的としたエカトラ・プロジェクトは、2020年9月に正式に開始されました。ボランティアの講師がオンラインでつながり、現場の指導役を担うトレーナーと共に運用されています。
裁縫や美容、ダンスなどの専門的なスキルを、講師が毎日指導しています。これらのスキルを学び、専門的なトレーナーを目指して努力する女の子たちは多くいます。
プロジェクト発足から4年目を迎えた現在、当初の目標を超える成果を上げています。業界や地元企業とのパートナーシップを確立し、トレーニングの機会を提供できるようになりました。今後は企業への雇用促進を目標としています。