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目次
書籍情報
おみくじの歴史
神仏のお告げはなぜ詩歌なのか
発刊 2024年1月1日
ISBN 978-4-642-05983-1
総ページ数 272p
平野多恵
成蹊大学文学部教授。
吉川弘文館
- おみくじの謎 プロローグ
- おみくじの謎
- おみくじって何?
- 誰がつくってる?
- くじ・みくじ・おみくじ
- 年始に引く
- 何度引いてもいい?
- 意志を貫くために
- 待ち人って何?
- なぜ結ぶ?
- おみくじの起源
- ルーツと分類_和歌・漢詩・その他
- おみくじの旅へ
- おみくじのルーツ 神仏のお告げ
- 占いからおみくじへ
- 古代の占い 亀ト・太占
- 自作のくじを引いて占う
- 天皇や将軍を決める
- 神仏の前で引く
- 僧侶とのかかわり
- 夢や託宣の真偽を知る
- 仏教のおみくじ
- 三度鬮
- 俳諧の確率とくじ
- 一・二・三の数目
- 御祓鬮
- おみくじの平等性
- 漢詩みくじの伝来と展開
- なぜ漢詩?
- 観音菩薩のおみくじ
- 観音籤のルーツ_中国宋代の『天竺霊籤』
- 小松寺所蔵の正本
- 元三大師との結びつき
- プロデューサー天海の霊夢
- 名所案内・俳諧の中のみくじ
- 僧侶の開設
- みくじ本の流行
- 注と挿絵の変化
- おみくじを引く作法
- おみくじが当たらない時間
- 易占とのかかわり
- 元三大師御籤の展開
- みくじ本のパロディ
- 法華経御籤・関帝霊籤
- 神詠から歌占、和歌みくじへ
- 和歌の起源_スサノヲの「八雲立つ」
- 住吉明神の歌
- 和泉式部と貴船明神
- 神詠の時代_祟る紙から応じる神へ
- 巫女の神がかり
- 鳥羽法皇の歌占
- 高僧の歌占
- はやりの歌
- 古歌による歌占
- くじ形式の誕生_能の「歌占」
- 伊勢国北村家
- 伊勢の託宣と神歌
- 神おろしの呪歌
- 夕占の作法
- 占いの前の呪歌
- 神と人をつなぐ歌
- 占いからおみくじへ
- 和歌で占う ひろがりと変化
- 江戸の歌占
- 七夕の恋の歌占
- 風雅な占い
- 歌占本の誕生_龍門文庫蔵『歌占』
- 歌占の方法
- 同じことを二度問うべからず
- 歌占本の共通点_呪歌・六十四首・神の歌
- ルーツとしての易占_算木・六十四掛と六十四首
- 神のお告げから歌占本へ
- 歌占本の系譜
- 百人一首の歌占本
- 大伴の刷り物
- 三数字の歌占_『天満宮歌占』と『せいめい歌占』
- 阿部晴明ゆかりの『せいめい歌占』
- 陰陽師のかかわり
- 『天満宮歌占』_観音籤の影響
- 易占とのかかわり
- 天地人の歌占と神国の易
- 広告欄からわかること
- 天神のおみくじ
- 弘法大師と金比羅大権現
- 宝暦四年の占書刊行
- 源氏物語の歌占_源氏香図・易占
- 都々逸との結びつき
- 和歌みくじ明治維新
- 日本神話の和歌みくじ_『神代正語籤』
- 教派神道の神占
- 明治維新の影響_『神籤五十占』『神国歌占鑑』
- 戸隠神籤の変遷
- 幕末・明治・大正の和歌みくじ
- 消えた歌占
- 和歌みくじの創出と漢詩みくじの継承
- 江戸の歌占
- おみくじ今昔
- 扁額のおみくじ
- 文化遺産として扁額
- 眼力稲荷の「目」の歌
- 奉納という文化
- 江戸の歌占本とのかかわり
- おみくじは生きている
- 明治・大正・昭和のおみくじ収集_新城文庫『おみくじ集』
- 消える和歌・変わる和歌・変わる和歌
- 変わる挿絵と変わらない詩歌
- 現代の漢詩みくじ
- 漢詩みくじの分類
- 観音籤
- 法華みくじ
- 妙見堂のおみくじ
- 伝近松門左衛門作の妙見みくじと易占
- 北野天満宮の漢詩みくじ
- 中国のおみくじ
- 関帝霊籤・天上聖母霊籤
- 変わらない漢詩と変わる解説
- 現代の和歌みくじ
- 和歌みくじの分類
- 日本神話の歌_『神代正語籤』
- 戸隠神社御神籤
- 神の教訓歌_『神籤五十占』
- 女子道社
- 大正時代の神占
- 「神占」「~ごとし」
- 祭神の歌
- 教訓的な歌_明治神宮「大御心」
- 自然を詠んだ歌
- 有名歌人・歌集・物語等の古歌
- 住吉大社
- 上賀茂仁者
- 文学ゆかりのオリジナルみくじ_万葉集・源氏物語・百人一首
- 有名歌人の恋歌
- その他のおのないおみくじ_天祖神社歌占
- 多様化するおみくじ
- おみくじの分類
- 水占
- 瓢箪山稲荷神社辻占
- たのしさ・かわいさ・ありがたさ
- おきもの系
- ご当地系
- お守り系
- 限定性と特別性
- 扁額のおみくじ
- いつもそばに、おみくじ エピローグ
- 明治時代の投書
- 震災後に、おみくじ
- 凶の減少
- 大大吉・大福・福福福
- おみくじをつくる
- 心の記録 おみくじ帖
- 神仏のお告げはなぜ詩歌なのか
- おみくじの可能性
- あとがき
書籍紹介
神社や寺院で引かれるおみくじの歴史とその背景にある文化的・宗教的意味を探る一冊です。本書は、古代から現代までのおみくじの進化と変遷を詳細に解説し、なぜ神仏のお告げが詩歌形式で表現されるようになったのかを丁寧に紐解いています。
書籍の概要
本書は、おみくじという一見単純な文化的現象が、実は深い歴史と豊かな文化的背景を持つことを明らかにします。おみくじがどのようにして日本の宗教文化に根付いたのか、その起源から現代に至るまでの変遷が詳細に描かれています。また、詩歌の形式でお告げが伝えられる理由についても、文学的、宗教的視点から解説されています。
興味深いポイント
- 歴史的背景:
- 平野氏は、おみくじの起源を奈良時代や平安時代に遡り、その当時の社会や宗教的背景とともに解説しています。例えば、平安時代の貴族たちが神仏に対してどのような信仰を抱いていたのか、またその信仰がどのように日常生活に反映されていたのかが語られます。
- 詩歌の形式:
- おみくじのお告げがなぜ詩歌形式であるのかについて、平野氏は日本の文学伝統と結びつけて考察しています。詩歌は日本の古典文学において重要な役割を果たし、神仏のお告げが詩歌として伝えられることによって、その神聖さや重みが増すという観点が紹介されています。
- 現代との繋がり:
- 本書は、現代のおみくじのあり方についても触れています。特に、どのようにして伝統が維持されているのか、また新しい形のおみくじ(例えば、デジタルおみくじ)についても考察されています。
神仏の文化を理解したい方へ
『おみくじの歴史 神仏のお告げはなぜ詩歌なのか』は、神社や寺院を訪れる際に何気なく引いているおみくじの背後にある深い歴史と文化的背景を理解するための貴重なガイドとなるでしょう。平野多恵氏の緻密な研究と分かりやすい解説により、おみくじという一見日常的な行為が、実は深遠な宗教的・文化的意義を持つことが明らかにされます。本書を通じて、日本の伝統文化に対する理解が一層深まることでしょう。おみくじの詩歌が持つ意味を知ることで、その一言一句に込められた神仏のメッセージをより深く受け止めることができるようになるはずです。
試し読み
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
夢や信託の真偽を知る
13世紀、日本では春日明神の託宣の真偽を確かめるために、神仏の前でくじを引く習慣がありました。律宗の叡尊も、弟子たちの修行の場所や袈裟を縫う順番を決めるなど、教団の秩序を保つためにくじを多用していました。
神仏のお告げは夢を通して伝えられることも多く、夢想や夢告に対する信仰もありました。明恵が生涯にわたって夢を記録し続けたことはよく知られています。叡尊も宗教体験として夢を重視していましたが、奈良の西大寺に教団を確立してからは、夢よりもくじを重視するようになりました。
仏前でのくじは、夢よりも客観的で公平だと考えられていました。明恵や叡尊が仏教僧でありながら神前でくじを引くことに驚く人もいるかもしれません。しかし、当時の日本では神仏習合が一般的であり、仏教にはくじに関する経典もあるため、僧侶にとってくじはなじみ深いものだったのです。
恋占い
『萩の八重垣』は江戸後期に流布した歌占本です。書名の「萩」は女性との恋の行方にたとえられ、「八重垣」はスサノオノミコトによる最古の歌「八雲立つ出雲八重垣……」を想起する語であることから、おそらく恋占として楽しまれたものでしょう。
片思いの人の家の近くで萩を見つけ、その葉と葉を結ぶと恋が叶うとされます。藤原定頼と紫式部の娘の和歌のやりとりから、定頼が恋心を抱いて萩の葉を結ぶおまじないをしたことが知られています。
意外にも恋占の歌は天皇も書写されていました。歌占は天皇や貴族が楽しむ風雅な遊びでもあったのです。
現代の漢詩みくじ
漢詩みくじは江戸時代に普及した観音籤が現在も主流ですが、それ以外にもさまざまな種類があります。ルーツがはっきりしないものも多いけれど、漢詩に着目すると系統が見えてきます。
分類 | 寺社 |
---|---|
観音籤 | 延暦寺、寛永寺をはじめとする全国の寺院 |
法華みくじ | 最上稲荷、長國寺、身延山久遠寺など日蓮宗寺院 |
妙見みくじ | 龍口寺、広済寺 |
菅原道真の漢詩みくじ | 北野天満宮 |
七言四句の漢詩みくじ | 道明寺天満宮、祐徳稲荷神社 |
中国の成人や神の漢詩みくじ | 関帝廟、媽祖廟、孔子廟 |
現在の和歌みくじ
和歌みくじは神社に多いです。神のお告げの歌をルーツとします。かなり種類が多いけれど、典拠となる本や内容の違いで分類することができます。
歌の内容 | 典拠 | 寺社 |
---|---|---|
日本神話 | 神代正語籤 | 戸隠神社、杭全神社、天河神社 |
神の教訓 | 神籤五十占 | 廣田神社、王子神社、吉田神社、松尾大社、安井金刀比羅宮など |
自然の風景 | 女子道社 | 全国各地 |
祭神のことば | 各祭神の詠歌 | 明治神宮、太宰府天満宮、湯島天満宮、二宮報徳神社、宗忠神社、乃木神社、梨木神社 |
有名な古歌 | 勅撰和歌集、百人一首、物語などの古典作品 | 外賀茂神社相生社、東京大神宮、石山寺、三室戸寺、伴林氏神社、近江神宮、今宮神社、鎌倉宮、武蔵野坐令和神社など |
その他 | 江戸の歌占本など | 最上稲荷、笠間稲荷、ときわ台天祖神社、よみうりランド妙見堂 |