仕事と子育ての両立/著者:矢島洋子、武石恵美子、佐藤博樹

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書籍情報

タイトル

シリーズ ダイバーシティ経営

仕事と子育ての両立

発刊 2024年5月10日

ISBN 978-4-052049281-5

総ページ数 190p

著者

矢島洋子

三菱UFJリサーチ&コンサルティング主席研究員。専門は少子高齢社会対策、ダイバーシティ推進。

厚生労働省・労働政策審議会雇用環境・均等分科会、こども家庭庁・こども家庭審議会基本政策部会、文部科学省・助成の多様なチャレンジに寄り添う学びと社会参画支援事業員会などを兼職としている。

著者

佐藤博樹

東京大学名誉教授、中央大学ビジネススクール・フェロー。専門は人的資源管理。
内閣府・男女共同参画会議、経済産業省・なでしこ銘柄選定基準作成委員会など政府の審議会や研究会の委員会等を歴任。

著者

武石恵美子

法政大学キャリアデザイン学部教授。博士(社会科学)
専門は人的資源管理論、女性労働論。

厚生労働書・労働政策審議会委員、厚生労働省・労働政策審議会人材開発分科会会長など。

出版

中央経済社

もくじ

  • はじめに
  • 序章 企業における仕事と子育ての両立課題とは
    • ダイバーシティ経営における仕事と子育ての両立課題
    • 子育て家庭や社会の変化
    • 「仕事と子育ての両立」を取り上げる意義と主要テーマ
    • 本書の構成
  • 第1章 企業による社員の仕事と子育ての両立支援
    • 起業の人材マネジメントとワーク・ライフ・バランス
    • 社員の構成や価値観の変化とワーク・ライフ・バランス支援
      • 女性の就業意識や労働力構成の変化
      • 企業の人材マネジメントの変化
      • WLB支援の変遷:女性の子育て支援や仕事と子育ての両立支援から男性の子育て参加へ
    • ワーク・ライフ・バランスの土台としての男性を含めた働き方改革:カップルでの子育てを実現できるか
    • 「ワーク・ライフ・バランス支援」から「ダイバーシティ・マネジメント」へ
  • 第2章 仕事と子育ての両立に関する政策
    • 仕事と子育ての両立支援政策
      • 「両立支援」とは何か
      • 国際的な議論
      • 日本の状況
    • 両立支援政策の背景と重点の変化
      • 女性の就業支援策
      • 迫られる少子化への対応
      • 両立支援政策の限界
      • 男性の働き方への問題提起
      • ワーク・ライフ・バランス、働き方改革
      • ダイバーシティ経営とワーク・ライフ・バランス
    • 両立支援政策の概要
      • 両立支援政策
      • 育児・介護休業法
      • ワーク・ライフ・バランス憲章
      • 次世代育成支援対策推進法
      • 保育サービス
    • 両立支援政策の課題
  • 第3章 子育て期の女性のキャリア形成支援
    • 女性の育休取得状況と復職後の働き方
      • 一般化した正社員女性の出産後の就業継続
      • 育休の取得状況
      • 復職後の働き方
      • なぜ短時間勤務が効果をあげたか
    • 復職後の働き方とキャリア形成における課題
      • 両立スタイルの新たな化田ぢ
      • 起業と当事者の受け止め方のギャップ
    • 企業の復職支援の課題
      • 育休取得の支援
      • 企業が取り組む復職支援
      • 復職後の働き方に関する制度
    • 子育て期を通じたキャリア形成
      • 復職後の仕事
      • 期待役割(仕事の配分)
      • 業務上の目標設定と評価
      • 昇格・キャリア形成の考え方
    • 仕事と子育ての両立とダイバーシティ
      • 悪循環を断ち切る
      • 変わる短時間勤務者像
      • ダイバーシティ推進と仕事と子育ての両立
  • 第4章 男性の子育てへの対応
    • 男性の子育ての現状
      • 男性の子育ての前提にある「男性のニーズ・必要性」
      • 男性の子育ての現状
      • 両立支援制度利用の男女差
      • 男性の現状とニーズのギャップ
    • 男性の子育ての背景
      • 経済成長と「父親不在」
      • 男性の子育てへの注目
      • 男性の子育てを規定する要因
    • 男性の子育てはなぜ重要か
      • 男性が望む父親役割
      • 社会的な意義
      • 人材活用面での意義
    • 男性の子育てを促す政策
      • 育児休業の法制化と制度充実のジレンマ
      • 男性の制度利用促進策
      • 男性の取得促進のための育児・介護休業法改正(2021年改正)
      • 育児・介護休業法以外の政策対応
    • 人材マネジメントにおける対応
      • 法対応から人事戦略へ
      • 男性の育児休業取得促進策
      • 働き方改革の推進
      • 男性の子育てに対する意識改革、風土醸成
    • 男性の「子育て」のこれから
  • 第5章 子育て社員が働く職場
    • 両立支援制度と同僚
      • 職場の課題
      • 業務量の問題
      • 緊急時対応の問題
      • 制度設計や制度への誤解が生む問題
      • 職場の働き方に起因する問題
      • 制度利用者の感じる不満・不公平感
    • 同僚、職場の問題への対応策
      • 評価の明確化
      • 働き改革の推進
      • 制度・働き方の柔軟化
      • 制度内容の理解促進
    • 職場の両立支援を円滑に進めるための働き方改革の重要性
      • スタンダードな働き方を考える
      • 長時間労働の現状
      • 柔軟な働き方の選択肢の現状
    • 両立支援が機能する働き方改革
  • 第6章 家庭・地域の子育て支援
    • 子育て支援のニーズ
      • 子育て支援のニーズと現状
      • 働き方の変化と子育て支援ニーズ
    • 変わる女性のライフコースと書いていない役割分担
      • 女性のライフコース選択に関する意識
      • 性別役割分業意識の実態
    • 親族等によるインフォーマルな支援
      • 世帯構成の変化と親族の支援
      • 親族等による支援内容
    • 地域における子育て支援
      • 保育サービスの利用の現状と課題
      • 保育以外の地域の子育て支援
      • 地域と企業の連携

書籍紹介

本書の概要

 本書は、仕事と子育ての両立を支援するための理論と実践を網羅しています。以下のような内容が含まれています。

  1. ダイバーシティ経営の重要性
    • ダイバーシティ経営の基本概念とその意義について解説。多様な人材が活躍できる職場環境が、組織にとってどれほど有益かを示しています。
  2. 日本の現状と課題
    • 日本における仕事と子育ての現状をデータと共に分析。特に働く母親の状況や育児休業制度の課題について詳細に述べられています。
  3. 企業の取り組み事例
    • 実際の企業がどのようにしてダイバーシティ経営を推進し、仕事と子育ての両立を支援しているのか、具体的な事例を紹介。これにより、理論だけでなく実践的な視点からも理解が深まります。
  4. 個人のキャリア形成
    • 働く親がどのようにキャリアを築きながら子育てをするか、具体的な方法やアドバイスを提供。ライフステージに応じたキャリア戦略も提案されています。

本書の魅力

 本書の魅力は、豊富なデータと実践的なアドバイスにあります。例えば、日本企業の育児支援制度の現状とその効果について、詳細な統計データを用いて分析しています。このような具体的なデータは、読者に現実的な視点を提供し、自分自身の状況と照らし合わせることができます。

 また、実際に成功している企業の事例は非常に参考になります。多くの企業がどのようにして働く親を支援し、結果として組織全体のパフォーマンスを向上させているのかを学ぶことができます。これにより、自分の職場でもどのような改善が可能か、ヒントを得ることができるでしょう。

 さらに、個人のキャリア形成に関する章では、具体的なキャリア戦略やスキルアップの方法が紹介されています。特に、子育てと仕事のバランスを取りながら自己成長を続けるための実践的なアドバイスは、働く親にとって非常に有益です。

まとめ

 『シリーズ ダイバーシティ経営 仕事と子育ての両立』は、仕事と子育ての両立を目指すすべての人にとって貴重なガイドブックです。理論と実践をバランスよく取り入れ、多角的な視点からアプローチすることで、読者は自身の状況に合った具体的な対策を見つけることができるでしょう。ダイバーシティ経営の重要性を再認識し、働く親としてのキャリアと家庭生活の両立を目指す方々に、ぜひお勧めしたい一冊です。

試し読み

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

両立支援政策の限界

 女性の就業継続を促進するために導入された育児休業制度は、一定の成果を上げました。しかし、法施行後も育児期の女性の就業率が顕著に向上したとは言えません。

 妊娠・出産後の女性の就業継続率の低迷には、2つの構造的な問題があります。

 1つ目は、両立支援によって出産時や子どもが3歳までの育児期には就業継続が可能となる一方で、その後の長期的な子育て期間を乗り越えられるのかという不安があることです。

 2つ目は、育児休業制度を利用することへの偏見が存在することです。

変わる短時間勤務者像

 短時間勤務制度がなければ、就業を継続するのが難しい層にはいくつかの特徴があります。これらの人々は、仕事と生活のバランスを重視し、常に仕事を第一に考えるわけではありません。例えば、子どもの生活リズムや質を優先し、子どもの食事時間や睡眠時間を大切にしたいと考える人々です。

 これまでの職場は「仕事最優先」「急な残業にも対応可能」という人々を中心に構成されてきました。そのため、このような層に対して適切に仕事を割り振ることが難しいのです。短時間勤務を続ける人々のキャリア展望を描くことも困難です。

 職場によっては、復職後の柔軟な働き方の制度やマネジメントを見直さない限り、女性社員を継続的に雇用することが難しくなります。

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