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目次
書籍情報
本を読む
3000冊の書評を背景に
発刊 2024年5月7日
ISBN 978-4-7942-2722-5
総ページ数 153p
中沢孝夫
福井県立大学名誉教授。経営学博士。
経営組織論、中小企業論、ものづくり論、人材育成論を専門とする。2000社以上の企業から聞き取りをし、研究活動を行いながら各新聞社への書評をなどを寄稿している。
草思社
- まえがき
- 第1章 本を読む楽しみ
- 本を読む楽しみ、本屋に通う楽しみ
- 読書はときに苦役
- 45歳で立教大学に入学
- 書評の始まり
- 書評を書くときの基本姿勢は「自己の抑制」
- ほめるための紹介か?
- 本を読むことは楽しいこと
- 近年の書評の事例
- 選択肢としての書評
- 第2章 本の読み始め
- 本を読む習慣
- 本で大人の世界を垣間見る
- ほったらかしだったことの幸い
- 読書環境の重要性
- 吉本隆明・高坂正堯・マルクス
- 文学学校のこと
- 労組の専従時代の経験と出会い
- 書き手になる
- 本の良し悪しの基準
- 大学教師のスタート
- 大学の現実に愕然
- 「紙の情報」の意味と他者の好意
- 第3章 書評について
- 時代の変化と書評
- 自己啓発本と神谷美恵子などとの違いについて
- 知の広がりは基礎知識が支えとなる
- 楽しみで読む本の事例
- 書評の対象は古典ではなく、新刊書
- 書評の作法、選本について
- 第4章 本と教養
- 本とは「言葉」
- 代表的な英語による本と知られざる本
- 著者杉本鉞子について
- 「暮らしのため」本を書くということ
- 被引用率のこと
- 何をどう読むか、「人間の顔とは何か」
- 池田潔と小泉信三のこと
- 書評の真髄
- トランプ大統領の登場の意味
- 第5章 書評の事例
- 終章 本を読む意味
- あとがき
書籍紹介
読書好きなら誰しも、読んだ本の感想を共有したり、新しい本との出会いを楽しんだりする喜びを知っています。この本は、まさにその喜びを凝縮した一冊です。
著者について
中沢孝夫さんは、長年にわたり多くの書評を書いてきた書評家として知られています。その数はなんと3000冊に上ります。これだけの膨大な書評を背景にしているからこそ、彼の視点や分析は非常に深く、鋭いものがあります。
本書の概要
本を読みんで得られた各書籍についての感想だけでなく、それらの本がどのように中沢さん自身の思考や人生に影響を与えたのかについても語られています。
本書の魅力
この本の最大の魅力は、中沢さんの豊富な読書経験に基づく多様な視点と深い洞察です。書評を始めたことで、その後の人生にどんな影響があったかなどの知れます。読者は単に本を読むことのより深い理解と、新たな視点を得ることができるはずです。
さらに、中沢さんの文章は非常に読みやすく、親しみやすいスタイルで書かれているため、読書初心者から熟練の読書家まで、幅広い層の読者が楽しむことができます。
読書の楽しみ
「本を読む 3000冊の書評を背景に」は、読書の楽しみを再発見させてくれる一冊です。本を通じて新しい視点や知識を得たい、深い洞察を持ちたいと思う方には特におすすめです。中沢さんの豊かな読書経験を追体験することで、自分自身の読書ライフをより豊かに、充実したものにしてくれるでしょう。
最後に
読書は私たちの心を広げ、世界を深く理解する手助けをしてくれる素晴らしい行為です。「本を読む 3000冊の書評を背景に」を手に取って、あなたもその楽しみを存分に味わってみてください。きっと新たな発見と感動が待っていることでしょう。
試し読み
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
本を読むことは楽しいこと
一般的に、書評を読んで「この本を読みたい」と思った場合、まず「はじめに」や「序」、そして「あとがき」を読んでみると良いでしょう。これにより、選んだ本が自分に合っているかどうかを確認する手助けとなり、選書の失敗を減らせます。
仕事で読む本と、休日に楽しみで読む本には大きな違いはありません。どちらも、知識を広げ、語彙力や表現力を豊かにするという点で共通しています。
しかし、本を読む際に必ずしも明確な目的意識を持つ必要はありません。興味を引かれる本を読めば、それだけで自分に必要な知識が自然と身につくものです。
人間にとって大切なのは、新しいことを考える力を養うことです。
読書環境の重要性
本を読む習慣は、子どもの頃に身のまわりに本があったかどうかに左右される部分があるように思います。高校を卒業して郵便局で働き始めたとき、社宅が偶然にも東大農学部の近くにありました。当時、東大前には都電が走っていて、片側には新刊書店と古本屋が立ち並んでいました。住むには理想的な場所でした。
雑誌「展望」(筑摩書房)が次々と刊行され、それが私の物の見方や考え方に大きな影響を与えました。その一方で、常に読んでいたのは司馬遼太郎の作品でした。特に繰り返し読んだのは『アメリカ素描』で、この本は「文化」と「文明」の違いを明確に教えてくれました。
「文化」は他と異なることを意味し、「文明」は様々な文化を包含しているという違いです。このことを学生に説明すると、大いに喜ばれたことを覚えています。
書評の対象は古典ではなく、新刊書
どんな本が出版されていて、どの本がどのような理由で注目に値するのかを紹介するのが、書評の基本です。
私が最も多く書評を書いたのは「日本経済新聞」です。2004年4月から2021年12月までの17年間、3週間に1回の頻度で連載していました。
日経で取り上げた本は1回につき3冊です。楽しい本、読みやすい本、ビジネスパーソンにとって価値のある本などを私の主観で選びました。時には不得手な分野の本も取り上げましたが、自分の勉強も兼ねて、様々な分野から選ぶようにしました。
書評はそれぞれの新聞で配信されていますが、共通しているのは、翻訳書も含めてすべて新刊であることです。
なお、書評を行うのに特別な資格は不要です。そして、自分の本について書評を迷惑だと思っている著者は見当たりません。悪口を書く書評者もいますが、編集部に「抗議」があった事例はありません。沈黙する以外に態度を示す方法はないでしょう。メディアも反論や異論を認めないわけではありません。言論・表現の自由とはそういうものです。
本を読む意味
本書は、これまで読んできた本の記録です。いつ、どのようにして読んできたかを明らかにするため、各新聞社に寄稿した書評を多数再掲しています。必ずしも5年、10年といった長期間の生命力を持つ本ばかりではありません。
そのような本を紹介する背景知識として、それまでにどのような本を読んできたかが問われることがあるため、「本の読み始め(きっかけ)」を明らかにしました。
最初は手塚治虫などの漫画でした。学校の図書館はあまり利用せず、教科書と同様に百科事典や偉人伝などもつまらないと感じていました。
上京して給料をもらうようになると、自分で本を買うようになりました。薄給だったので、宝前、本屋さんの店頭で選ぶときは慎重に選びました。若い頃は時間があり、神田などの古書店を巡っていました。職場の先輩から文学学校を紹介され、通ってみるととても楽しく、他人がどのような本を読んでいるかを知ることができ、急速に読む本の領域が広がりました。
休日は貴重な読書の時間となり、太宰治、山本周五郎、有吉佐和子、三島由紀夫などを片端から読みました。集中して読むことの良さを体験的に知ったのはその経験があったからです。