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目次
書籍情報
チョコレートを食べたことがないカカオ農園の子どもにきみはチョコレートをあげるか?
発刊 2024年5月15日
ISBN 978-4-8451-1882-3
総ページ数 231p
木下理仁
オンライン・ワークショップのコーディネーターとして活動中。
青年海外協力隊(スリランカ)
かながわ国際交流財団職員
かながわ開発教育センター事務局長
東京外国語大学ボランティア・コーディネーター
東海大学国際学部非常勤講師の経歴あり。
旬報社
- 第1章 “豊かさ”って、なんだ?
- 1 チョコレートを食べたことがないカカオ農園の子どもにチョコレートをあげるか?
- 2 親しくなったストリート・チルドレンの頼みを聞き入れるべきか?
- 3 学校に行かずに働いている少女が作った服を着るか?
- 4 貧しい村を発展させるために水道・電気・道路のうちどれを選ぶか?
- 第2章 “ともに生きる”って、なんだ?
- 5 ブラジルから来た転校生のエレナに校則違反だからと耳のピアスを外させるべきか?
- 6 災害にあった外国人のために避難所の貼り紙をどう書き直すか?
- 7 フィリピンから来た小学生の愛子さんをきみはどうやって助けるか?
- 第3章 出会うことに意味がある
- ルワンダで義足を作る ルダシングワ真美さん
- 外国ルーツの子どもたちをサポートする 出口雅子さん
- 地域でフェアトレードを進める 磯野昌子さん
- シエラレオネの子どもたちの教育を支援する 下里夢美さん
書籍紹介
カカオ農園の現実に迫る
この本は、私たちが何気なく食べているチョコレートの背後にある現実に迫るものであり、カカオ農園で働く子どもたちの厳しい生活や労働環境を描いています。木下さんは、自身の取材をもとに、現地の状況を詳細に報告しており、その描写は非常に生々しく、胸に迫るものがあります。
タイトルが問いかける倫理的な問題
タイトルにある「チョコレートをあげるか?」という問いは、一見シンプルに思えますが、実は非常に深い倫理的な問題を含んでいます。カカオを生産する子どもたちが自分たちの作ったチョコレートを口にしたことがないという事実は、世界の貧困や不平等の象徴と言えるでしょう。この問いを通じて、私たち消費者がどのように世界と関わり、他者と連帯するべきかを考えさせられます。
チョコレート産業の裏側
本書では、チョコレート産業の複雑な仕組みを分かりやすく説明し、その中で働く人々がどのような状況に置かれているかを浮き彫りにします。また、フェアトレードの重要性についても触れており、私たちがどのような選択をすることで、世界を少しでも良くすることができるのかについて具体的な示唆を与えてくれます。
消費者としての責任
本書を読むことで、私たちは自分の消費行動がどのような影響を持つのかを改めて考えさせられます。普段何気なく購入しているチョコレートが、どのような過程を経て私たちの手元に届いているのかを知ることで、私たちはより意識的な消費者になることができるでしょう。木下さんの情熱的で真摯な筆致が、読者に強く訴えかけてきます。
まとめ
『チョコレートを食べたことがないカカオ農園の子どもにきみはチョコレートをあげるか?』は、社会問題に関心がある方、そしてチョコレートが好きな全ての人に読んでいただきたい一冊です。この本を通じて、世界の現実に目を向け、自分たちの行動がどのように影響を及ぼすのかを考えるきっかけにしてみませんか?
それでは、皆さんもぜひこの本を手に取って、木下理仁さんの描く現実に触れてみてください。そして、チョコレートを味わうたびに、その背後にある物語を思い出していただければ幸いです。
試し読み
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
道路か電気か水道か?
東アフリカのタンザニアにある小さな村に住んでいる村人として聞いてほしいのですが、この村の生活を改善するために意見を集めています。村には多くの不便があり、外国の援助団体が最初の3年間だけ技術と資金の協力をしてくれることになりました。しかし、協力してもらえるのは1つのプロジェクトに限られます。「水道」「電気」「道路」の中で、まずどれを整備すべきでしょうか。
「都会で仕事をしている人はみんなパソコンを使っています。IT教育が不可欠なので、ぜひ電気を通してほしいです」
「私が今一番欲しいのはオートバイです。オートバイがあれば、自分が育てた野菜を町まで売りに行けます。町まで楽に行けるように、道路を作ってほしい。物を売ることで現金収入が増え、この村の生活も良くなるはずです」
「水道を作ってほしいです。水汲みは女性の仕事です。この村の女性たちは毎日、20リットルの水を10回も井戸まで汲みに行っています。とても大変なんです」「清潔な水があれば病気も減るでしょう」
「発展」や「豊かさ」とは何でしょうか。一概に答えるのは難しいです。この村に本当に必要なものは、「水道」でも「電気」でも「道路」でもなく、他の何かかもしれません。
ブラジルからの転校生
両親の仕事の都合で、ブラジルから転校生がやってきました。彼女はまだ日本語があまりうまく話せません。
少女A「この学校では、ピアスや指輪をつけてはいけないというルールがあります。外してください。」
転校生「いやです。私はピアスをつけます。」
少女B「私も前にピアスをつけて学校に来たとき、先生に怒られたんだから。」
こういった状況になったとき、あなたならどうしますか?一緒に考えてみましょう。
ブラジルでは、女の子がピアスをつけるのは一般的で、生まれたときに幸せに生きられるようにと母親から贈られるものだと言います。赤ちゃんのときからピアスをつけているので、ピアスを外すことなど考えられないのです。
ピアスなら小さな問題で済むかもしれませんが、文化の違いという点では「タトゥー」が問題になることがあります。温泉旅館の浴室の入り口に「刺青お断り」の紙が貼ってあるにもかかわらず、外国人が浴室に入ろうとしているのを見かけたら、どうしますか?
自分が知らないものに対して、反射的に拒否してしまうかもしれません。しかし、それを理解することによって、違いを乗り越えていくことができるはずです。
ルワンダで義足をつくる
ルダシングワ真美さんは、夫のガテラさんと共に「ムリンディ/ジャパン・ワンラブ・プロジェクト」というNGOを立ち上げ、アフリカのルワンダで義足を作っています。
ルワンダでは、1994年に民族間の紛争が起き、100万人以上が命を落としました。その際、多くの人々が手足を失いました。
真美さんは、日本で義肢装具士の修行を積み、その経験を活かして、そうした人々に義足や義手、装具、車いすなどを無償で提供しています。
一方、夫のガテラさんは、人を見捨てることができません。ある人がペンキを買ってきてほしいとお金を渡したところ、そのままどこかへ行ってしまったことがありました。しかし、数か月後にその人が戻ってきて「また働きたい」と言ったとき、ガテラさんはその人に再び仕事を与えました。
ルワンダで物乞いをしている子どもに出会ったとき、私はお金を渡すことに躊躇してしまいます。というのも、そのお金でご飯を買うのではなく、シンナーやボンドを買うからです。しかし、ガテラさんはお金を渡します。実際、ルワンダの街でお金を渡すのは圧倒的にルワンダ人が多く、外国人はほとんど渡しません。
ただ、何かを手伝ってくれた子どもには、お駄賃としてチョコレートをあげることがあります。