美術でよみとく京都の庭園/著者:布施英利

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書籍情報

タイトル

美術でよみとく京都の庭園

発刊 2024年2月26日

ISBN 978-4-7678-3244-9

総ページ数 229p

著者

布施英利

美術批評家。
学術博士。

美術批評、解剖学、文学など、著書は70冊ほど。

出版

株式会社エクスナレッジ

もくじ

  • ⅰ 京都の庭園を〝耳〟で味わう
    • 寂光院 音に満ちたクンカント静寂のコントラスト
    • 詩仙堂 静寂の中に響く音
    • 醍醐寺三宝院 音によってつくられる世界
    • 再び、寂光院へ 庭は地球のミニチュアである
  • ⅱ モダンの庭─昭和の作庭家・重森三玲
    • 瑞峯院 伝統的であり現代的、昭和の庭
    • 東福院 重森三玲衝撃のデビュー作
    • 光明院 アニミズムを感じさせる庭
    • 重森三玲庭園美術館 大地に描いた絵画
  • ⅲ 思想の庭─哲学を込めた夢窓疎石
    • 夢窓疎石 京都の庭のパイオニア
    • 永保寺 自然の岩山をいかした庭
    • 瑞泉寺 閉鎖空間から広がる世界へ
    • 西芳寺 京都の庭園のルーツ
    • 天龍寺 遙か昔に遠近法を用いた庭
  • ⅳ 月の庭であり、宇宙の庭 桂離宮
    • 桂離宮 月を見るための装置
  • ⅴ 悟りの感覚を空間で体現する 龍安寺
    • 龍安寺石庭 問いかけてくる庭
  • ⅵ 京都の庭園から現代アートへ
    • イサムノグチの庭 ニューヨークの京都
    • 李禹煥の庭 人類1万年史とつながる美の世界
  • クレジット

書籍紹介

どんな本か

 京都の庭園を美術の視点から紐解いています。この本では、伝統的な日本庭園の美学やデザインを、アートや建築の観点から理解し、歴史的背景とともに解説しています。

京都の庭園の魅力

 特に京都には、禅寺の枯山水庭園や茶庭など、日本庭園の多様なスタイルが存在し、各庭園が独自の美を持っています。本書では、その一つ一つの庭園がどのようにして今の形に至ったのか、また、それが芸術的にどのような意図や意味を持つのかを探究しています。

日本庭園の深い洞察

 美術評論家としての豊富な経験をもとに、庭園の造形美に対する独自の洞察を提供しています。この本を読むことで、京都の庭園が単なる観光名所としてだけでなく、どれほど緻密に構築されているか、そして日本文化の深い精神性を反映しているかを理解することができます。

どんな人にオススメか

 庭園愛好者や美術愛好者だけでなく、京都の歴史と文化に興味を持つすべての人にとって、興味深い一冊と言えるでしょう。

試し読み

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

モダンの庭

※AIのイメージ図

 昭和の作庭家・重森三玲が手がけた庭園、京都の大徳寺にある瑞峰院の庭を訪ねてみましょう。

 波打つ白砂を目にしたとき、昭和の時代にこれほど古風な京都の庭が作られたのかと感嘆しました。

 北側の裏庭は「キリシタンの庭」と言われ、大友宗麟に関連する庭です。7つの石が建物に対して斜めに配置され、十字架を形作っています。一見しただけではその十字架に気づかないところが、「隠れキリシタン」らしい特徴です。

 正面の南庭には、白砂が波のように広がり、小さな空間に無限の広がりを感じさせる心地よさがあります。庭の右手には陸を表現した緑色の苔があり、白砂と交じり合って「湾」や「川」を連想させる光景が広がっています。そこから正面の庭の「大海」へと、風景が広がっています。特に晴れた日には岩の影が白砂に落ち、荒波を表現した白砂をよりダイナミックに見せる演出が、なんともモダンな印象です。

遠近法を用いた庭

※AIのイメージ図

 天龍寺の庭は、美しく、不思議な造形美に満ちています。

 嵐山は、近くを桂川が流れ、竹林の美しい寺院も多く、京都の観光スポットとして知られています。お土産屋が立ち並び、賑やかな雰囲気です。一方、天龍寺はその賑わいとは対照的に、静かで荘厳な空気に包まれています。

 広い芝生に腰を下ろして庭を眺めてみましょう。庭には曹源池と呼ばれる大きな池があり、その向こうには森が広がっています。春には新緑が、秋には紅葉が美しく映えています。

 売店の横の階段を上がると参拝受付があります。チケットは2種類あり、庭を歩くだけのものと、庭に面した大方丈に入るものがあります。後者は、大方丈から庭を眺めた後に、庭を散策することができます。

 この庭の楽しみ方は、大方丈の左端と右端に立ち、それぞれから見える景色の違いを探ることです。左端に立つと池が近くに見え、嵐山は小さく見えます。右端に立つと池が遠くに見え、嵐山が大きく見えるのです。

 この錯覚の秘密は池にあります。手前に見える池が大きくなったり小さくなったりすることで、嵐山の大きさが逆転して見えるのです。実際には池の大きさが変わっているのですが、山の大きさが変わっているように錯覚するのです。

月の庭

※AIのイメージ図

 桂離宮は「月の庭」として知られています。ここでは、月波楼から昇る月を眺め、月見台から南天の月と池に映る月を楽しむことができます。また、手水鉢に映る「切り取られた空」に浮かぶ月を見上げ、庭を移動しながら西の空に沈む月まで、一晩中月を愛でることができる場所です。

 ただし、桂離宮に入れるのは昼間だけです。庭を一周しながら、そこに隠された月の美しさを想像するしかありません。想像力を働かせれば、南の空に高く昇る月、新御殿の月見台、池と手水鉢に映る月、匠の技が光る建築や灯籠などが思い浮かぶでしょう。夜を通してさまざまな月の姿を堪能できるのが、桂離宮の魅力なのです。

日本庭園と石

※AIによる玄武岩(花崗岩)のイメージ画像

 日本庭園にとって、石は重要な素材です。

 枯山水の場合、大きな岩と白い砂が使われます。京都の庭園では、白川砂と呼ばれるクリーム色の砂が使われ、岩には様々な種類の岩石が用いられます。

 重森三玲は、庭の石に四国産の片麻岩を使いました。彼は渓谷に出かけ、片麻岩特有の層状の模様が気に入ったものに印をつけて、業者に運ばせていました。

 イサム・ノグチは、花崗岩をよく使用します。花崗岩は火成岩で、石英や長石が多く含まれており、白い岩に黒い斑点が混ざった特徴があります。イサム・ノグチの作品には、石を「彫る」「磨く」「割る」といった作業の美的な快楽があります。ザラザラやツルツルといった表面の対比を楽しめるのです。

 重森三玲は石に手を加えず、そのまま採取したものを庭に配置します。一方、イサム・ノグチはノミやハンマーで石を加工し、磨き上げ、「彫刻」として提示します。彼の造形作品も、日本庭園と深いつながりがある芸術なのです。

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