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目次
書籍情報
Mine! 私たちを支配する「所有」のルール
発刊 2024年3月20日
ISBN 978-4-15-210317-8
総ページ数 382p
マイケル・ヘラー
コロンビア大学ロースクールのローレンス・A・ウィーン不動産法担当教授。
所有権に関する世界的権威の一人
ジェームズ・ザルツマン
カリフォルニア大学ロサンゼルス校
ロースクールと、カリフォルニア大学
サンタバーバラ校ブレン環境科学経営大学院で、環境法学の特別教授を務める
早川書房
- 序章 誰が・何を・なぜ
- 第1章 遅い者勝ち
- 第2章 占有は一分の勝ち
- 第3章 他人の蒔いた種を収穫する
- 第4章 私の家は私の城……ではない
- 第5章 私の身体は私のもの……ではない
- 第6章 家族のものだから私のもの……ではない
- 第7章 所有権と世界の未来
- 終章 幼児の所有権ルール
紹介
マイケル・ヘラーとジェームズ・ザルツマンによる鋭い洞察と豊富な事例に基づいた、所有権に関する興味深い探究です。この本は、私たちの日常生活における所有権の概念を根底から見直し、それがどのように社会的・経済的な関係に影響を及ぼしているかを明らかにします。
所有権とは何か、それが個人の自由、社会の秩序、そして経済の効率性にどのように貢献しているのか、著者たちはこのテーマを深く掘り下げています。また、所有権のルールがどのようにして競合する利益のバランスを取り、公正な資源の分配を促進するのか、具体的な事例を交えながら説明しています。さらに、所有権のルールが時には不合理な結果をもたらすこともあり、それに対する解決策を提案しています。
所有権のルールが単なる法律や規則にとどまらず、人間関係や社会のあり方に深く根差したものであることを示しています。この本を通じて、読者は所有という概念を新たな視点から見ることができ、私たちの行動や選択がいかにこれらのルールに影響されているかを理解することができます。
経済学、法学、社会学など様々な分野にわたる深い知見と、生活の中で出会う具体的な事例を組み合わせることで、『Mine! 私たちを支配する「所有」のルール』は所有権についての我々の理解を一新します。所有権が如何に私たちの思考と行動に影響を及ぼし、社会全体の構造を形成しているかを知ることで、読者はより公平で持続可能な未来を目指すための洞察を得ることができるでしょう。この本は、所有権に関する議論を新たな次元へと引き上げ、読者に深い思考のきっかけを提供します。
ディズニーのファスパス+
ディズニーでは、長い行列が楽しいはずの体験を多くの来園者にとって不快なものにしていました。
この問題に対する解決策として導入されたのが「ファストパス+」です。これは、希望するアトラクションやショーを最大3つ選び、事前にパスを取得できるシステムです。パスは無料で提供されますが、指定された時間枠内での使用が必須です。このパスを利用することで、待ち時間を大幅に短縮し、時間を有効に活用して楽しむことが可能になります。
ファストパス+の真の魔法は、来園者がパーク内で過ごす時間を延長し、その結果、通常の列に並んでいる時よりも多くのお金を消費させる効果にあります。
アトラクション間の待ち時間は約1時間から2時間で、アトラクションどうしはかなり離れています。その移動中に、子供たちの欲望を刺激するように巧みにデザインされた店舗が配置されています。
公明正大に盗む
マリ・クレールやコスモポリタンなどの女性誌は、ファッションデザインの不正コピーについて定期的に取り上げています。
例えば、バレンシアガの795ドルのスニーカーは、ザラで35.9ドルのコピー品として販売されています。また、テイラー・スウィフトが着用していたリック・オーエンスの2675ドルのライダースジャケットのコピー品が、H&Mで37.8ドルで売られていると報じられています。
これらのコピー品は完全に合法で、コピーされたデザイナーはまるで略奪や窃盗に遭ったかのような気持ちになることでしょう。アメリカでは、ファッションデザインの成果は法的に保護されていません。ファストファッションブランドのザラやH&Mは、グローバルに展開し、流行の商品を迅速にコピーして安価に販売するビジネスモデルで成功を収めています。ファッション業界では広く、デザインの模倣は一般的であり、単なる模倣と盗みは区別されます。
知的労働に所有権を全面的に認めれば、必ずしもミッキーマウスのような経済効果を生み出すわけではありません。コメディアンのネタには著作権が認められておらず、スポーツの監督が考案した戦術や料理のレシピにも著作権は存在しません。これらが著作権で保護されないことで、新しいアイデアや創造物が次々に生まれるのです。
競合避止条約
多くの雇用主は、雇用契約に競業避止条項を当然のように盛り込んでいます。これは、そのような条項が法的に無効とされる州であっても同様です。
多くの人々は、違法な契約に署名してしまえば法的に拘束されると誤解しています。企業はこの心理的な弱みに付け込み、従業員が自身の権利を主張するのを妨げています。従業員が違法であることを知らないため、法的な強制力のない制限条項で何年も縛りつけ、より高賃金の仕事を求めることや高圧的な上司から逃れる試みを阻止しています。
しかし、この風潮は変わりつつあり、競業避止条項に反対する声が強まっています。大企業も方針を転換せざるを得なくなっており、例えばアマゾンは倉庫スタッフに対して退職後18か月間の競合他社への転職を禁じる条項を設けていましたが、この条項の削除に同意しました。
カリフォルニア州では、アップルやグーグルが重要な人材の拘束を試みましたが、最終的には失敗に終わりました。
共同経済では富は形成されない
共有経済は、実際に物や財産を共有しているわけではなく、所有権の技術が進化した結果です。この進化は、私たち市民および消費者としての行動に変化をもたらしました。
モノを所有する生活から、借りては返す生活への転換がコストを伴うことは意外かもしれません。共有経済が禅のような質素な生活を促進するわけではなく、一つの物やサービスが安価になればなるほど、より多様な物やサービスを消費する傾向にあります。
その結果、共有経済の下では富は形成されにくく、多くの人々が富を消費する側に回ります。家、車、宝石、サブスクリプションサービスなど、あらゆるものの所有権を確保するために計画的にお金を使う規律が失われていきます。
共有経済においては、生活様式をクリックひとつで選択しています。手元に物はあるものの、本当に自分のものとは言えない状態です。実際、婚約指輪を他人に貸すことや、愛犬を日貸ししたいのでしょうか。何も持たない友人に何をプレゼントすれば良いのでしょうか。