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目次
書籍情報
クリエイティブジャンプ
世界を3ミリ面白くする仕事術
発刊 2024年3月15日
ISBN 978-4-16-391810-5
総ページ数 301p
龍﨑翔子
ホテルプロデューサー、株式会社水星代表取締役CEO。東京大学経済学部卒。東京大学経済学部卒。
2015年、在学中にが武士機会社L&G グローバルビジネス(現・水星)を設立し、北海道・富良野でペンション運営を開始。
ホテルシリーズを展開し、湯河原、層雲峡をはじめ全国各地で宿泊施設の開発・経営を行う。
文藝春秋
- はじめに クリエイティブジャンプの旅へ
- 第1章 クリエイティブジャンプとは何か 非連続な思考が生み出す課題解決の力
- ひのき棒と布の服で旅を始めよう
- 原動力はどこからやってくるのか
- アメリカ横断旅行で見つけた「渇き」と「夢」
- ホテル経営との邂逅
- ”意識高い系”の呪い
- 「スモールスタートでいこう」
- 試される大地、北海道
- クリエイティブジャンプとは課題解決である
- クリエイティブジャンプの5つの要素
- 本質をディグる アセットの再定義
- 空気感を言語化する 文脈の理解
- インサイトを深掘りする 顧客心理の観察
- 異質なものとマッシュアップする アイディアの交配
- 誘い文句をデザインする UGCを生む仕掛け
- 「持たざる者」の武器としてのクリエイティブジャンプ
- Column 起業のリスクヘッジ
- 第2章 本質をディグる アセットの再定義で価値を生む
- 事業の本質をディグる
- アセットを再定義する
- 4つのアプローチ法
- そもそも法
- 謎かけ法
- 顧客ウォッチング法
- シティハンティング法
- ポジティブな予定不調和を生むホテル
- ソーシャルホテルの思惑
- OTAとホテルの甘い共依存
- 「指名買い」されるホテルを目指す
- 選ぶ意味のあるホテルブランドを
- メディアとしてのホテル
- ゲストと人をつなぐ:ポジティブな予定不調和を生む場所
- ゲストを土地をつなぐ:土地の空気感を織り込んだ場所
- ゲストを文化をつなぐ:ライフスタイルを試着する場所
- 第3章 空気感を言語化する 世の中のムード・土地のセンスを読み解く
- 空気感の言語化とは?
- 時代のムードを嗅ぎ取る方法
- 比較し相対化する
- 象徴的なキーワードをつかむ
- 時代の変遷を踏まえて解釈する
- 土地の空気感を言語化する
- 「良さ」ではなく「違い」は何か?
- 街の歴史を深掘りする 大阪・弁天町の色気
- 街の空気感を宿泊体験に織り込む
- 似たジャンルの他の土地と比較する
- 景色や地名から連想する
- 「最果ての旅のオアシス」が生まれるまで
- 京都とはどんな街か?
- 東九条とはどんな街か?_
- ホテルとは何か?
- シビックプライドを高めるエリアブランディング
- Column 空気感を言語化することの功罪
- 第4章 インサイトを深掘りする 消費者の心理を刺しにいく
- なぜ消費者心理をつかむのか
- インサイトとは何か
- インサイトとニーズの違い
- インサイトをつかんだマーケティング事例
- インサイトの掘り起こし方
- 行動シーンを想像する
- 行動の背景を言語化する
- なぜ? を問いなおす
- 湯河原の温泉旅館を救ったインサイト
- シャープにターゲット像を設定する
- インサイトの特定が生んだ『卒論執筆パック』
- 予想を上回る大反響
- 「自分の無意識」を言語化しよう
- Column インサイト発掘のためのSNS活用法
- 第5章 異質なものとマッシュアップする 常識を裏切るアイディア発想法
- インサイトとプロポジション
- 寝転がれる台湾料理店
- 良いアイディアは掛け合わせでできている
- カテゴリー分け[変数]の思考法
- 日常生活の中でヒントを探し続ける
- [定数×変数]で生まれた事業例
- [ホテル×〇〇]が切り拓く地平
- [ホテル×美術館]という発想
- コロナ禍での[ホテル×社会福祉]
- 強いアイディアは、常識を裏切る組み合わせから
- 第6章 誘い文句をデザインする 人口に膾炙する物語の生み出し方
- 「どう発信するか」から「どう発信していただくか」へ
- 実在価値から社会関係資本価値の時代へ
- イノベーター理論と人間心理
- 人は模倣する生き物である
- 誘い文句をデザインする
- UGCの方程式
- UGCを生む、レコードのあるホテル
- 再発信を呼び込む情報発信
- 「知られたくない人に知られない」ためのPR戦略
- 起点は半径3メートル圏内に
- Column Web発信・簡単チェックマニュアル
- 第7章 感覚的なものをどう宿らせるか 五感・時間・世界観の仕立て方
- クリエイティブジャンプの筋道
- 思考を「発酵」させる
- 思考する機会を増やす
- 思考を言語化する
- 適切に忘れ適切に思い出す
- スモールラグジュアリーホテル『香林居』
- 香林坊のテロワール「桃源郷」
- 「蒸留」と無色透明の宿泊体験
- ビジュアルでイメージを醗酵させる
- 世界観のビジュアル化
- 曼荼羅イメージマップ
- 妄想メディア記事
- 桃源郷と精神世界
- 見えざる糸で空間と時間をつむぐ
- 第8章 ユートピアの作り方 クリエイティブジャンプのその先へ
- 選択がアイデンティティを削り出す
- 「最もパーソナルなことが、最もクリエイティブである」
- 社会課題という課題はない
- 新しいホテルのプラットフォーム『CHILLNN』
- 未来の自分を救えるのは、今の自分しかいない
- パラレルワールドの自分を救う事業開発
- 「問い」を検証する4つの視点
- ユートピアは人の手でつくる
- あとがき
紹介
創造性を引き出し、イノベーションを生み出すための具体的な方法を提供します。この本は、あらゆる分野のプロフェッショナルが直面する創造的な課題に対処するためのインスピレーションとガイダンスを読者に提供することが目的です。
才能を活かし、新たなアイディアを形にするための思考法や、ブロックを乗り越えるための戦略など、読者が自身のクリエイティブなポテンシャルを最大限に引き出すための具体的なアドバイスが満載です。科学的研究と実践的な事例研究を融合させ、創造性の発展を助けるためのプロセスとテクニックを紹介します。
- 環境の影響
- 創造性を高めるための環境を整える方法や、創作活動に最適な空間の作り方。
- 多様な視点の採用
- 他文化や異分野からのアイデアを取り入れ、固定観念を打ち破る手法。
- ブロックを乗り越える戦略
- 創造的な停滞やブロックを解消するための心理的アプローチや実践。
- コラボレーションの重要性
- 物事を組み合わせることでアイデアを豊かにする方法。
- 世界観の仕立て方
- 感覚的に思考したものを、ビジュアル化する方法。
- 社会課題からの創造・選択
- 社会課題に解決すべく、消費者、経営者、メディア、業界の目を持って創造的に考えたり、行動を選択する方法 など
アーティスト、デザイナー、ライター、ビジネスリーダー、教育者、学生など、あらゆるジャンルでクリエイティブなスキルを高めたいと考えている人々に最適です。『クリエイティブジャンプ』は、創造性という跳躍を可能にするための、信頼できるガイドブックとなるでしょう。
“意識高い系”の呪い
猛勉強の末にたどり着いた東大は、思ったよりも窮屈な場所でした。東京は混雑していて、なんだか居心地が悪かったのです。
学生のうちに起業しようと決意したものの、「ホテル経営はどう始めたらいいのか?」という難題に直面することになったのです。
アルバイトするも収入のなさに絶望し、自分で事業をしようと赤ちゃん用のおむつを香港に輸出しようとしたり、海外の旅行代理店に営業にいったりしましたが、いずれもうまく事業として形にできません。
時代は”意識高い系”という言葉に蝕まれ、いつしか「意識が高い」というまなざしを他者からむけられることに怯えるようになりました。
「ホテルを経営する」ということに背を向けて、自暴自棄になって自堕落に友達の家に入り浸ってしまったのです。
最果ての旅のオアシス
京都・東九条でホテルを営むことの意味を言語化するのは骨が折れました。この複雑な問いを因数分解して考えてみることにしたのです。
- 京都とはどんな街か?
- 東九条とはどんな街か?
- ホテルとは何か?
京都は、貴重な文化遺産が人々の生活圏に多く残る街です。若者たちがつくるユースカルチャーにも溢れ、独特なモラトリアムな空気感、音楽、芸術があります。
東九条は、京都駅から烏丸通を南に徒歩10分の場所にあります。ここにはオフィスビルはなく民家や店舗がまばらに配置されているのです。京都の少し外れから京都タワーを北に見上げるような街となっています。
ホテルは、世界最古の職業のひとつだといわれています。旅先で宿に泊まり身体を休めるというのは、人類の原初的な営みからもしれません。
そんな思考を経て、幼少期のアメリカ横断の旅で目にしたハイウェイ沿いのロードサイドモーテルの光景と重なり合うような気がしました。そうしてHOTEL SHE, KYOTOは「最果ての旅のオアシス」というキャッチコピーに、たどり着いたのです。
日常生活でヒントを探す
自身や自社にとってのベストを更新し続けながらアイディアを探求するには、日常生活のあらゆる場面でヒントを探し続ける不断の努力が大切だと思っています。
自分の人生を捧げられるような事業軸を持ち、日々ネクストワンを探しながら世の中を見る習慣をつけることで、他の人よりも圧倒的に多くの思考訓練が積み重るのです。自然とアイディアの引き出しも増えます。
自分が世界から受ける刺激を何らかの形でホテルに活かせないか、というまなざしで世界をみており、思いついたアイディア([定数×変数])を、必要なタイミングで取り出しているにすぎません。
事業家としての執念を持って世界をまなざすところから始まるのです。
閃きの正体
アウトプットの質に影響するのは、インプットに伴う思考の量と、いかに思考を醗酵させるかがカギとなっています。
- 思考する機会を増やすこと
- 思考を言語化すること
- 適切に忘れ適切に思い出せるようにすること
第一に思考が生まれるトリガーとなる機会を多く取り入れることが大切です。
自分の世界を広げる体験をしたら、その経験をどれだけ思考に落とし込むことができるかが重要となってきます。言葉を与えて輪郭を規定することで、漠然とした感覚を取り扱えるようになるのです。
最後に、ある課題について悩ませている状態でいったん「思考から離れる」ことが大事になってきます。思考の発酵は、無意識の中で行われますので、無意識の時間を意識的に設けることが必要です。