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目次
書籍情報
わが投資術
市場は誰に微笑むか
発刊 2024年3月1日
ISBN 978-4-06-535035-5
総ページ数 320p
清原達郎
野村證券に入社し海外投資顧問室に配属。
MBA取得後、86年に野村證券NY支店に配属。
91年、ゴールドマン・サックス証券東京支店に転職。
KODANSHA
- 第1章 市場はあなたを見捨てない
- 間違っても損をするとは限らない 正しかったら儲かるとは限らない
- 投資のアイデア=株価に織り込まれていないアイデア
- 投資の第一歩は「常識を疑う」こと
- 「教科書に書かれているから正しい」と思うな
- すべての情報にはバイアスがかかっている
- バイアスを味方にする
- 情報収集に金をかける必要はなし
- 情報収集のための「投資クラブ」
- 投資家は相場に勝てるのか_効率的市場仮説
- パッシブ運用vs.アクティブ運用
- 第2章 ヘッジファンドへの長い道のり
- 概略
- 野村證券入社_抱いた「強烈な違和感」
- 損をする個人投資家のパターン
- 海外投資顧問室_北尾吉孝氏に救われる
- 軍曹
- 野村證券NY支店_「腐れ玉」の行方
- 転換社債・ワラント買い、株式空売りの裁定取引
- Tiger Managementとの出会い
- GS東京支店入社_「ロング・ショート運用」の夜明け
- ヘッジファンドをスタート
- ヘッジファンドって何?
- ジョージ・ソロス
- この章の最後に_新しい野村證券について
- 第3章 「割安小型成長株」の破壊力
- 「割安」ってどういう意味?
- 「適正PER」とは
- 実は役に立たない「PBR」
- ネットキャッシュ比率
- キャッシュニュートラルPER
- キャッシュニュートラルPERの問題点
- 成長率、金利から適正PERを導く
- 「1段階モデル」は低PER株に有効
- 金利が上がると、高PER株は不利?
- 株安株を買うと儲かるの?
- 割安小型成長株投資の「破壊力」
- 小型株が割安である理由
- 「イメージの悪い業界」こそチャンス
- 小型株の成長性は「経営者」が9割
- 株式投資に「才能」などない
- 「成長株投資」と「バリュー投資」の違い
- マザーズ(グロース)は「最悪の市場」
- バリュー投資家の”あるべき姿”とは?
- 「トレンドフォロワー」と「コントラリアン」
- 「ボトムアップアプローチ」と「トップダウンアプローチ」
- ボトムアップアプローチ信者
- 株式投資と確率論
- ベイジアン的発想
- 第4章 地獄の沙汰は持株次第──25年間の軌跡
- K1ファンドの運用スタイルの変遷
- ファンドのパフォーマンス
- 1998年7月_1999年9月
- 「パーティーが始まったら我々は帰ろう」
- 小型株投資は運用資金が少ないほうが有利
- 1999年9月_2000年2月
- ITバブル_テック株ショートで大損害、「やけくそ」
- 2000年2月_2005年10月
- REiT、不動産投資顧問会社で大躍進
- 2005年10月_2007年12月
- 小型株暴落、外国人買いでショート壊滅、「股裂き」で大損害
- 2007年12月_2009年2月
- リーマンショックの地獄絵図、弱り目に祟り目
- 2009年2月_2018年2月
- アベノミクス相場、日銀ETF買いで大儲け
- 2018年2月_2020年3月
- パンデミックで暴落。メガバンク株大量買い
- 2020年3月_2023年6月
- メガバンク株高等、株全面高
- 株価指数先物の裁定取引残高について
- 第5章 REIT──落ちてくるナイフを2度つかむ
- まさかのIPO「20億円分」当選
- リーマンショックとREIT暴落
- 第6章 実践のハイライト──ロング
- HSホールディングス
- オリンパス
- UTグループ
- プレサンスコーポレーション
- 第7章 実践のハイライト──ショート・ペアートレード
- 考人投資家には個別銘柄のショートは勧められない
- ショートの分散投資はおろかな行為
- ユニクロ
- 日経225指数の闇
- ようやくわかったショートの勝ち方
- ショートの成功事例
- ファナック、ブラザー
- アインホールディングス
- 安川電機
- イオン
- 日本M&Aセンターホールディングス
- レーザーテック
- 日本風力開発
- ペア―トレード
- アコムvs.アイフル
- 東京三菱vs.UFJ
- 第8章 やってはいけない投資
- ESG投資はナンセンス
- 日本企業のガバナンス
- AIJ投資顧問詐欺事件
- 未公開株は決して買ってはいけない
- 金融商品の手数料にはご用心を
- 第9章 これからの日本株市場
- 10年以内に起きる破壊的リスク
- 今後の日本株を取り巻く環境「8」の予想
- 縮小を続ける内需
- 日本人の英語下手は危機的なレベル
- 経営統合がキーワード
- 日本株ショーテッジ時代の到来
ヘッジファンドをスタート
日本株に特化した新しいヘッジファンドが次々と設立されていますが、日本人が運用するファンドは見当たりませんでした。
「もしかしたら、私にもヘッジファンドを運用する機会があるかもしれない」と考えるようになりました。
ただ、ファンドを立ち上げる場合でも、裁定取引を主軸とするヘッジファンドは、GS(ゴールドマン・サックス)などの投資銀行によって圧倒されてしまうでしょう。GSの日本株アナリストたちの分析を毎朝確認していますが、彼らは非常に優秀です。直接的な競合ではないものの、彼らを上回る能力がなければ市場で成功するのは難しいでしょう。
そのため、私は小型株に目を向けました。時価総額が小さい企業は、GSのリサーチ対象外であることが多いのです。独自に企業訪問を行い、リサーチを始めました。徐々に自分で小型株を購入し始めると、銘柄の発掘が楽しくなり、この仕事が自分に合っていると実感しました。
「イメージの悪い業界」こそチャンス
かつて「菱和ライフクリエイト」というマンションデベロッパーが存在しましたが、社長が不可解な理由で逮捕され、辞任に追い込まれました。私たちは大株主として一時的な損失を経験しましたが、株価が割安だったため、その後の株式公開買い付け(TOB)で利益を得ることができました。結局、社長は無罪であることが判明しましたが、この一連の逮捕劇は極めて不合理でした。
社長が愛人のマンションで薬物を使用している現場を警察に踏み込まれ逮捕されるケースや、暴力団への資金提供が発覚し辞任に追い込まれるケースもあります。また、不動産市場の悪化により中小企業が倒産することもあります。こうした事態により、不動産業界全体の株式市場における評価は著しく低いです。そうだとしても、株価が安すぎます。
不人気なセクターを代表する中小不動産会社についてお話ししましたが、イメージが悪い業界には魅力的な投資機会が潜んでいることがあります。例えば、かつては人気のなかった家具販売企業「ニトリ」も、そうした企業の一例です。
悪魔超人小川社長
割安小型成長株だった牛丼チェーン店の「すき家」の小川賢太郎社長は、非常にユニークな経営者の一人です。このファンドは開始して間もなく上場されましたが、当初は全く人気がありませんでした。
社長は、非常に鍛え上げられた体をしており、「ポパイ」や「キン肉マン」を思わせるような風貌です。インタビューでは、一方的に「牛丼の優れた点」について熱弁を振るっていました。さらには、「牛丼を食べていれば日本は戦争に負けなかった」とまで言い切っています。
特筆すべきは、5年後の利益計画とその時点でのPER(株価収益率)及び株価予想が含まれている、非常に珍しい中期経営計画であることです。
また、帰り際にエレベーター前で部下が「実は私もジムで鍛えています」と余計な発言をした際、社長は明らかに不快に感じたようです。「おい!胸をかせ!」と言って部下にラリアットをかましていました。こんな愉快な社長はどこを探してもいないと思います。
これからの日本株市場
10年以内に起きる破壊的リスク
- 核戦争
- 東海・関東大震災
- COVID-19以上のパンデミックが起きる
- 地球温暖化の加速、あるいは急速な寒冷化
通常兵器による戦争がどこで起きようと日本の株式市場にはほとんど影響はないと思っています。しかし、深刻な災害が今後起きないという根拠がゼロではないです。
とんでもないことが起きて株価が暴落するリスクはあります。だからといって、新NISAのような制度ができたのに株式にまったく投資しないのではもったいないのです。「暴落した時だけ安く買う」のではなく、「暴落した時も株に投資する」ことで良しとしなければなりません。
今後の日本株を取り巻く環境の予想
- 日本経済の実質GDP成長率は良くて0%
- 日本の人口は減り続け超高齢社会となる。外国人労働者の数は大きくは増えず労働人口は半永久的に減少が続く
- 日本のインフレ率はそのうち0から2%の間に収まる。日本ではスパイラル的なインフレは起きない
- 日本の金利はわずかしか上がらない。短期金利は上昇しても最大1%まで。長期金利(10年国債)は最大2%まで
- 為替は120円/USドルへと円高が進む
- 上場企業の企業収益の成長率は全体としてはインフレ率程度。つまり年率0から2%成長
- 増配、自社株買いは今後も続く
- 新NISAで個人投資家激増。政府は株式市場にネガティブな政策は取りにくくなる
介護費用や医療費などはこれからも増えていくでしょうし、実感ではマイナス成長になると思います。米国の金利が多少低下することを前提とするなら、このくらいの円高が想定できるでしょう。
多かれ少なかれ、先進国ならどこでも同様の問題を抱えますが、日本は不法移民の問題が極端に小さいため安定した住みやすい社会だと思っています。