Newton 2024年No.4

発売日 2024年2月26日

ページ数 144p

ISSN 0296-0651

もくじ

  • FOUCS
    • 海王星の青色は薄かった
    • 万有引力の法則がなりたたない現象
    • 母乳育児は子の肥満リスクを減らす
    • 別の銀河から来た星を発見
    • 水を注ぐと音がする理由
    • 地球内核でおきるぐらつきの原因
    • SNSをきっかけに新種のホヤを発見
    • 光量子コンピューターの実用化に前進
    • きびしい寒さが農耕開始を遅らせた
  • FOUCS Plus
    • 月探査機SLIMが日本初の月面着陸に成功
  • 緊急特集 能登半島巨大地震
  • 特集 減量の新常識
  • 第2特集 核融合アップデート
  • スマートフォンの未来
  • 太陽系の月図鑑
  • 火山の島_アイスランド
  • 実は恐ろしい植物
  • 星ごよみ 3月の星ごよみ
    • Newton Information
    • 協力者略歴
    • LETTERS
    • 次号予告
    • 編集後記

Focus

SNSをきっかけに新種のホヤを発見

By Naohiro Hasegawa and Hiroshi Kajihara – https://www.jstage.jst.go.jp/article/specdiv/29/1/29_SD22-16/_article, CC BY 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=145556563

ジャンル:生物学

出典
Graveyards of Giant Pandas at the Bottom of the Sea? A Strange-Looking New Speies of Colonial Ascidians in the Genus Clavelina (Tunicata: Ascidiacea),

Species Diversity, 2024.2.1

 ホヤは海底の岩などに付着して生活する動物です。植物のような見た目で、ヒトなどの脊椎動物に近い生き物となっています。

 2017年、パンダの顔のような模様とあばら骨をユニークなホヤがSNSで紹介され、「ガイコツパンダホヤ」の愛称で人気になりました。

 北海道大学の大学院生長谷川尚弘氏らが調査を行いツツボヤ属の一種だと判明したのです。学名はラテン語で「骨のパンダのツツボヤ」を意味するクラヴェリナ・オッシパンダエと名付けられました。

 沖縄県を含む南西諸島ではホヤに関する調査が進んでいませんでしたが、SNSの投稿を研究者が目にしたことで、今回の発見につながったのです。日本中の誰もが新種の発見者になりうる可能性が示されました。

きびしい寒さが農耕開始を遅らせた

ジャンル:人類学

出典
Population genomics of post-glacial western Eurasia,

Nature,2024.1.10

 デンマーク、コペンハーゲン大学のアレントフト博士らは、ヨーロッパ周辺でみつかった約1万1000年前から約3000年前にかけての317人の人骨を対象に遺伝情報の解析を行いました。

 その結果、黒海からバルト海にかけての地域を境界線にして、東西で遺伝的な特徴に大きな差が見られたのです。

 西側は農耕が始まっていたが、東側は狩猟民の遺伝的な変化は見られません。東ヨーロッパや西シベリアでは、農耕の開始が西ヨーロッパより約3000年も遅れたであろうと、博士らは述べています。

Focus Plus 月探査機SLIMが日本初の月面着陸

ジャンル:宇宙探査
執筆者:荒舩良孝

日本ではじめて月面着陸に成功した

 2024年1月20日午前0時20分、SLIMは月面軟着陸に挑戦し、無事に成功したことが認識されました。

 世界では旧ソ連、アメリカ、中国、インドに次ぐ5か国目の快挙です。SLIMに搭載されていた超小型月面探査ローバー「LEV-1」と超小型変形型ロボット「LEV-2」を着陸する直前に放出することに成功したことも確認されています。

高精度でのピンポイント着陸に成功

 月面着陸時の飛行データなどを分析した結果、SLIMが目標地点から55メートルはなれた場所に着地していることがわかりました。

 メインエンジンを1基失った影響で目標地点よりも東側に流されていたものの、誤差100メートル以下の精度というピンポイント着地は達成されていたのです。

 エンジントラブルがなければ、誤差10メートル以下で着陸に成功していた可能性があります。

核融合発電の実用化へ期待が高まる

執筆者:福田伊佐央

プラズマの生成に成功

 2023年10月23日、JT-60SAの装置でプラズマの生成に初めて成功しました。核融合発電の実用化に向けた大きな一歩です。

「重水素」と「トリチウム」の原子核を融合させ、1億℃をこえる高温のなかで衝突させます。このときに原子核と電子が分離して動き回る状態が「プラズマ」です。

 プラズマ生成の成功は、ヨーロッパ、アメリカ、ロシア、韓国、中国、インドに、発電の実用化に向けた「説得力」が増したと言えます。

核融合は暴走しないエネルギー

 核融合発電の燃料は海水などから得られるため、石油のように、限られた地域でしか得られないエネルギーではありません。

 また、原理的に決して暴走しないという点も大きなメリットです。核融合発電は、燃料の供給を止めると、必ず核融合反応も止まるようになっています。

 放射能廃棄物は発生しますが、非常に低レベルのものだそうです。

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