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目次
書籍情報
社会学史
発刊 2019年4月1日
ISBN 978-4-06-288449-5
総ページ数 640p
大澤真幸
社会学博士。千葉大学助教授、京都大学教授を歴任。
KODANSHA
シリーズ:講談社現代新書
- 序 社会学に固有の主題
- 第1部 社会学の誕生――近代の自己意識として
- 1.古代の社会理論 アリストテレス
- 2.社会契約の思想 社会学前夜
- グロティウス/パスカル/ホッブズ/ロック/ルソー/スミス
- 3.社会科学の誕生
- コント/スペンサー
- 4.マルクス――宗教としての資本主義
- エンゲルス/カント/フォイエルバッハ/ヘーゲル/フィヒテ
- 第2部 社会の発見
- 1.フロイト――無意識の発見
- 2.デュルケーム――社会の発見
- 3.ジンメル――相互行為としての社会
- 4.ヴェーバー――合理化の逆説
- 第3部 システムと意味
- 1.パーソンズ――機能主義の定式化
- トマス/パーク/マートン
- 2.〈意味〉の社会学
- ミード/シュッツ/ブルーマー/ガーフィンケル/ゴフマン/ベッカー
- 3.意味構成的なシステムの理論――ルーマンとフーコー
- レヴィ=ストロース/デリダ/ブルデュー/ハーバーマス
- 4.社会学の未来に向けて
- ボードリヤール/リオタール/ギデンズ/バウマン/トッド/メイヤスー
- 1.パーソンズ――機能主義の定式化
- おわりに
アリストテレス
社会学とか、政治学なども含めて、社会科学系の最初の一歩を踏み出した人だと言われます。
アリストテレスの段階から、人間は社会的であったり、政治的であったりすると言っているわけです。
たしかに、アリストテレスのうちに、社会学的なものの始まりと思えなくもないものも存在します。
アリストテレスの「個人と個人の関係」に対応するのが倫理学です。
アリストテレスの「個人と全体社会の関係」に対応するのが『政治学』です。
都市国家以前の部族社会だとしたら、アリストテレスのような思考がでてこないでしょう。
フロイト
フロイトは社会学者の中には入れません。心理学や先進医学の歴史ならまだしも、社会学の歴史にフロイトは登場しないでしょう。
フロイトは、無意識なるものの無意識性を真に自覚し、それ自体を学問的な対象として取り出して理論にしました。
「隠れた思考」のようなものと考えている人がいますが、あからさまに表面に表れている「無意識」のことをフロイトは説いています。先の貨幣や商品の価値への執着のことを思えばいいのです。
臨床をしながら、親にDVを受けた子は、自分の子に対してもDVをしてしまう傾向があるという、シンプルな神経症やヒストリーの原因について考えていました。
このフロイトの考えが、社会学の基本テーマ「社会秩序はいかにして可能か」という問いに繋がっていきます。
人間における規範や道徳の起源への問いは、フロイトが考えるコンプレックスの問いと結びつく重要な仮説なのです。
ジンメル
ジンメルは、広い意味での分業を「分化」ととらえています。
一つの人生の中でさまざまな役割を担うことを、社会の中の時間的な分化であると考えるのです。
社会は、多様な役割に分化しており、役割の変遷があります。こうした結果をもたらす原因は、都市的経験です。
概念的に捉えると、個人の「社会圏」の拡大となっています。
集団よりも広い意味合いで、境界線やメンバーシップがはっきりしていなくても、利害とか目指すところが共有されているという意識がある人間の集団全体を社会圏と呼ぶわけです。
社会圏の拡大というのが、近代の減少の特徴です。一番わかりやすい様相が都市化に表れています。
失敗を通じての社会変革
へーゲルの『精神現職学』に、「誤ることへの恐怖こそが誤りそのものに他ならない」という言葉があります。同じことが社会変革に言えるのです。
現実の偶有性を信じることができないので、失敗を恐れます。
しかし、根底からの偶有性を、基本的な前提、絶対に実在に等しい前提として組み込む社会学理論を作ることができたらどうでしょうか。
このとき、わたしたちは、おそらく、独特のひねりをともなったかたちで、実践のための指針をも獲得するはずです。
失敗することへの勇気のようなものをもたらす理論が現れると思います。