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目次
書籍情報
昆虫絶滅
発刊 2023年12月10日
ISBN 978-4-15-210289-8
総ページ数 292p
オリヴァー・ミルマン
英国ベッドフォードシャー州出身のジャーナリスト。ガーディアン紙では専属記者として配属し、米国で環境問題の報道を担当。現在はニューヨーク在住。
早川書房
- プロローグ
- 精妙なダンス
- 勝者と敗者
- ゼロ・インセクト・デイ
- 殺虫剤のピーク
- 迫りくる気候変動のもとで
- ミツバチの苦役
- 君主の旅
- インアクション・プラン
- 人類の緊急時代
プロローグ
食料供給が崩壊しました。世界の農作物の三分の一は、その受粉を数千種類のハナバチや、蝶、ハエ、蛾、カリバチ、甲虫などに頼っています。
受粉を媒介とする昆虫がいなくなると、世界中の食料生産のベルトコンベアが音を立てて停止し、広大な果物や野菜の畑は朽ちるにまかされてました。
スーパーから消え始めたリンゴ、ハチミツ、コーヒーは高価な贅沢品になり、チョコレートの供給も途絶えています。
こうした喪失を憂い、うつ病や不安にさいなまれる人が急増するのです。
殺虫剤のピーク
英国の緑に満ちた田園風景は美しいが、人間の美的感覚に偏ったものです。整然と暗くされた麦畑や、木立まで続くきちんと刈り込まれた緑の芝生は人間の目に秩序立って映り、魅力的でさえあります。
風景を整える満足は、昆虫たちに与えている破滅的な影響を覆い隠しているのです。昆虫たちが繁栄できるのは、私たちが、むさくるしく乱雑だとみなす植生の中にあります。手入れされていない草原や藪の混沌とした状態は、昆虫にとってバイキングのレストランです。
田園風景を整えるために除草剤が開発されました。便利な反面、思いもよらなかった、ミツバチへの影響を起こしたのです。殺菌剤のしよとミツバチの減少に有意な相関関係があり、ミツバチに寄生するコロニーをよわらせるノゼマ原虫を流行させてしまうことが判明しています。
今では、ネオニコチノイド系殺虫剤は、農薬から世界で広くしようされる殺虫剤になりました。
ミツバチの苦役
カリフォルニア州には約50万個のミツバチの巣箱しかありません。不足分は、故郷を追われたミツバチが杉の箱に詰まってトラックで輸送されます。
世界最大の受粉イベントであり、自然界をひざまずかせて、人間のリズムに合わせようとする驚異的な作戦です。養蜂家たちの間では「養蜂界のスーパーボウル」と呼ばれています。
こうしたミツバチの多くは、再びトラックに載せられて国中をめぐり、フロリダ州、ペンシルヴェニア州、メイン州などの受粉を担うことになっています。
人類の危機
機械の音しか聞こえない農村地域のわびしい姿は、昆虫の小さな帝国の崩壊を心に留めなかった場合に直面する、良い方のシナリオでしょう。
ハナバチの減少は、リング、ブルーベリー、サクランボなどの主要な食用作物の供給にすでに影響をきたし始めています。
世界中の多くの昆虫の個体数が毎年1~2%ずつ減少していることを確認が取れています。この状況はさらに悪化することはほぼ間違いないでしょう。
大惨事はある種の底に落ちてきましたが、まだそこに至ってはおらず、私たちは下り坂を滑り落ちています。
感想
サイト管理人
ちょっと過激な環境保全思考の本です。ミツバチをはじめとした昆虫を題材としていて、それなりに捻くれています。
身近な虫の減少から、最悪のシナリオを思い浮かべてみるのも、悪くないかもしれません。