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目次
書籍情報
なぜオスとメスは違うのか
性淘汰の科学
発刊 2023年11月20日
ISBN 978-4-469-26971-0
総ページ数 179p
マーリーン・ズック
ミネソタ大学 生態・進化・行動科学・教授。性淘汰の研究をしている。
リー・W・シモンズ
西オーストラリア大学 生物科学部 進化生物学分野・教授。生活史の生活と性淘汰のモデルを、脊椎動物と無脊椎動物で検証している。
大修館書店
- 第1章 ダーウィンのもう1つのアイデア
- メスの選り好みをめぐる論争
- 性淘汰と進化の総合説
- 個体の好みの重要性
- 第2章 配偶システム_相手の数と期間
- ハゴロモガラスと婚姻
- 交尾相手の独占競争
- 極端な一夫多妻とレック
- 一妻多夫
- 1足す1は2
- ルール、例外、つがい外交尾
- 応用的側面
- 第3章 メスの選り好み
- よいものを提供する相手の選択
- 感覚バイアス
- セクシーさん sexy son(魅力的な息子)仮説
- よい遺伝子の指標を選択
- 遺伝子の相性
- ヒトの配偶者選択
- 第4章 性の役割とステレオタイプ
- 控えめなメス、積極的なオス
- 性の役割が逆転している場合
- 2つの役割を持つ場合
- さまざまな役割が混在する場合
- ヒトにおける性の役割
- 第5章 交尾後性淘汰
- 精子はなぜ小さく数が多いのか?
- 精子競争のゲーム
- 精子競争が精巣を進化させる
- 戦略的な射精
- 精子競争の回避
- 隠れたメスの選り好み
- 第6章 性的対立
- チェイスアウェイ性淘汰
- 交尾をめぐる性的対立
- 交尾後の性対立
- 雄雌間に見られる拮抗的共進化の普遍性
- 第7章 種の存続と性淘汰
- 種の形成
- 食と性のどちらが重要か?
- 鍵と鍵穴の関係
- 動物も似たもの夫婦
- 性淘汰と多様性の進化速度
- 行動が種形成に与える影響
- 性淘汰は絶滅を防げる?
- 第8章 結論と今後の展望
- 図版リスト
- さらに学習したい読者のための参考文献
- 索引
交尾相手の独占競争
最初に配偶システムの分類を行った、生物学者のスティーブン・エムレンとルイス・オーリングは、一方の性の個体が交尾相手を得る機会をどれだけ独占できるかだと述べました。
エムレンとオーリングの考えでは、交尾機会がどれくらい独占しやすいかによって、交尾相手が1個体になるか、多数になるかが決まります。
食物が環境中に散らばっていたとしたら、交尾相手が食物にありつくのを制限するのは難しいため、このような状況では一夫多妻はめったに見られないと予想されるのです。
食物が偏って存在していたら、オスは食物を囲い込むことができるので、食物を求めてくるメスを独占することができます。
控えめなメス
ダーウィンの有名な表現に、性に関してメスは「控えめ」で、オスは「積極的」というものがあります。
1972年ロバート・トリヴァースの論文では、控えめ・積極的の代わりに、メスとオスで、資源と労力を次世代に費やすかの差異を重視しているようです。
メスにとって重要なのは、どれだけの数の子をうまく育て上げられるかです。できる限り質の高い子を作ることが自分の遺伝子を最大限次世代に残すことになっています。どのようなオスと交尾するからも非常に重要でしょう。
オスにとっては、可能な限り多くのメスを受精させることが、自分の遺伝子を最大限次世代に残すことにつながります。
隠れたメスの選り好み
メスは精子競争に対し、より積極的なかかわり方をすることが可能です。オスの精子が卵と受精するかの最終決定権を握っているのはメスとなっています。
どれだけの数の卵を放出して受精させるか、卵や子にどれだけの資源を与えるかを、父親になるオスの特徴に基づいて決定していることがあります。これらのメカニズムを、隠れたメスの選り好みと呼ばれるものです。
メスにとって魅力的なオスの形質や、メスの繁殖への投資に対し大きな見返りを与えてくれるようなオスの形質が進化します。