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目次
書籍情報
ビジュアルアトラス
世界のユートピア
理想郷を求めた人類の野望と夢
発刊 2023年10月16日
ISBN 978-4-86313-580-2
総ページ数 253p
オフェリー・シャバロシュ
ジャン=ミシェル・ビリウー
日経ナショナル ジオグラフィック
- 序文_ローラン・ビネ
- ユートピアの世界地図
- 理想の場所を求めて
- ユートピア島
- アトランティス
- 黄金郷(エルドラド)
- ワカンダ
- パルマノバ
- アルケスナンの王立製塩所
- ファミリステール
- 新世界
- エリス島
- パビヨン・デ・レーブ
- 風水
- 完全無欠のユートピア
- アレクサンドリア
- ヒッポダモス方式
- テオティワカン
- ニューハーモニー村
- クリスチャニア
- オーロビル
- アマラーバティー
- アーコサンティ
- シンガポール
- ブラジリア
- ブズルジャ
- コンクリートユートピア
- アブラクサス
- 世界を再構築する
- マゼランの革命
- あるユークロニア
- 庶民の蜂起
- リバタリア
- 1793年憲法
- 世界の広場
- 指揮官同士の一騎打ち
- 五月革命(68年5月)
- バンセンヌの森
- 新しいライフスタイル
- 性の解放
- 国民総幸福量
- 男女同一賃金
- ファディウート
- ユートピアの実験室
- ウユニ塩湖のリチウム鉱床
- アースシップ
- YUKA
- 未来の食材
- 廃棄物ゼロの都市
- フランスの社会保障制度「セキュ」
- アイスランド
- バーニングマン
- ウィキペディア
- サンパウロ・コリンチャンス
- パレスチナのキブツ
- ポンテシティー
- 貧困という宝
- ゲドロン城
- タージ・マハル
- 科学とフィクション
- ツリーハウスシティー
- シテ・デ・メリアン
- 世界の空中都市
- 火星移住計画
- 住居可能な惑星
- 人体冷凍保存
- 人間拡張
- 死との決別
- 空飛ぶ自動車
- ソーラーインパルス
- ラブロボット
- ダイマキシオン
- ユートピアの牽引役
- スパルタクス
- レオナルド・ダ・ヴィンチ
- シモン・ボリバル
- エルネスト・チェ・ケバラ
- ローザ・バークス
- ルドビコ・ザメンホフ
- フェルディナン・シュバル
- ジョーン・バエズ
- ジェーン・グドール
- ポール・ワトソン
- ワンガリ・ムタ・マータイ
- マララ・ユスフザイ
- ミシェル・ジョウエン神父
- エドワード・スノーデン
- フランスの理工科学生たち
- マルコス副司令官
- トーマス・サンカラ
- ジュリアン・アサンジ
新世界 信仰の自由を求めて
米国の歴史は2つの偉大なユートピア建設から始まります。
宗教的迫害を受けて栄光を離れるしかなかった清教徒と、クェーカー教徒がそれぞれ築いたユートピアです。
清教徒が上陸したのはニューイングランドの沿岸でした。1620年にメイフラワー号から下船したピルグリム・ファーザーズに続いて、大迫害を逃れた2万人が到着しました。英国人たちの手本となるべきユートピア「丘の上の町」を建設し、他人と違うことをしたり、反抗したりすることは許されていません。時に1692年のセーラムの魔女狩りをはじめとする清教徒の歴史に影をおとしています。一方で、タウンミーティングの導入や1636年のハーバード大学創設などに貢献しています。
クェーカー教徒は清教徒の分派です。ウィリアム・ペンはチャールズ2世よりペンシルベニアに自ら植民地を建てる許可を得ました。ペンは平和主義者で、アメリカ先住民を尊重し、ほかの分派の人々も受け入れています。
古代ギリシャ語で「兄弟愛」を意味するフィラデルフィアは、ロンドンに次ぐ英国領最大都市となりました。こうして米国は、信教の自由の象徴となり、希少な模範例となっています。
貧困という宝
インドネシアの都市マランで、2010代の終わり頃、医学生だったガマル・アルビンサイドは、3歳の少女が下痢で亡くなったことを知りました。人口半分が1日2ドル以下で生活するこの国では、特に珍しくもない悲劇です。
都市部でも最も貧しい層は、ゴミに埋め尽くされた不潔な場所に住んでいます。その生活を逆手に取って、廃棄物を財源に変えるプロジェクトをガマル・アルビンサイドは考えたのです。リサイクル業者に数キロ分の廃棄物を売ると、低所得者はマイクロ医療保険に加入し、最低限の医療措置を受けることができる仕組みとなっています。
そのプロジェクトと同じころ、マランのスラム街ジョディパンでも、住民に形だけでも希望を持ってほしいという願いから、あばら家の外壁を鮮やかな色で塗り、壁画を描き、3Dアートで飾ったのです。メディアがにぎわすと、大勢の観光客がやってきて収入をもたらしています。マラン発の取り組みはインドネシアの他の町にも真似されるほどです。
人体冷凍保存
コメディ映画のように人体を凍結して冬眠させる処置をクライオニクスと言いますが、昨今ではフィクションの中の話ではなくなってきています。
米国やロシアの専門民間企業へ委ね、未来が来るのを待つという技術です。精子や卵子の冷凍保存で実用化されていますが、遺体を蘇生させて、重要臓器を再始動させる方法はまだ確立していません。肉体を諦め、脳だけのガラス化を選択する人もいます。
今のところ、完全に未来の先端技術に賭けた形で成立している技術です。その結果しだいで、時空を超えて生きられるようになるかもしれません。
フェルディナン・シュバル
1879年4月、フランス、ドローム県の田舎で郵便配達をしていたフェルディナン・シュバルは石につまずきました。石の形があまりに風変りだったので、彼はこれを使ってひそかに思い描いていた宮殿を自宅に造ろうと決意したのです。
以後33年間、郵便配達で石を集めては手押し車に載せました。
この素朴で学のない男の手が生み出した壮大な宮殿には、モスク、クメール神殿、中世の城、山小屋の断片が隣り合って建っています。タコやゾウ、巨人、妖精、神話の生き物が、階段や地下のグロッと(洞窟)に置かれ、「これは芸術だ。夢だ。活力だ」と書かれています。
当時は、彼を変人だと見ていた人も多かったが、芸術家たちはこの理想宮の価値をみとめ、アンドレ・マルローは1969年に歴史的建造物に指定しています。