エクス・リブリス/著者:ミチコカクタニ

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書籍情報

タイトル

エクス・リブリス

発刊 2023年10月10日

ISBN 978-4-08-773521-5

総ページ数 411p

著者

ミチコ・カクタニ

ワスントン・ポスト、タイム誌を経て、ニューヨーク・タイムズに入社、ピューリッツ賞などを受賞し、2017年に独立。

出版

集英社

もくじ

  • まえがき
  • アメリカーナ
  • この世を照らす光_回想録
  • モハメド・アリの本
    • ムハマッド・アリ
    • カリスマ_神に最も近づいた男モハメド・アリ
    • モハメド・アリ_その闘いのすべて
    • トリビュート_モハメド・アリ(1942~2016)
  • 経験_回想録
  • ワインズバーグ、オハイオ
  • 全体主義の起原
  • 侍女の物語
  • オーデン詩集
  • 大陸漂流
  • ソール・ベローによる本
    • オーギー・マーチの冒険
    • ハーツォグ
    • 埋み火
  • 幻影の時代_マスコミが製造する事実
  • 伝奇集
  • ザ・モスで語られた心を打つ物語_知られざる事実と向き合う
  • ペスト
  • 権力の移行_リンドン・ジョンソンの時代 第四巻
  • 幸福の追求_ハリウッドの再婚喜劇
  • もう少し愉快な話はないのかね?
  • ブルース・チャトウィンによる本
    • パタゴニア
    • どうして僕はこんなところに
  • 夢遊病者たち_第一次世界大戦はいかにして始まったか
  • 外交政策と世界についての本
    • 西洋リベラリズムの後退
    • 混迷する世界
  • 愛するものたちへ、別れのとき
  • アンダーワールド
  • オスカー・ワオの短く凄まじい人生
  • ジョーン・ディディオンによる本
    • ベツレヘムに向け、身を屈めて
    • 60年代の過ぎた朝_ジョーン・ディディオン集
  • 驚くべき天才の胸もはりさけんばかりの奮闘記
  • デボラ・アイゼンバーグ短編集
  • 荒地
  • ジョセフ・J・エリスによる本
    • ファウンディング・ブラザーズ
    • アメリカ合衆国の創設
    • 革命の夏
    • アメリカン・ダイアローグ
  • アメリカ民主主義の立役者たち
    • ザ・フェデラリスト
    • ジョージ・ワシントンの辞任挨拶
  • 見えない人間
  • 死の床に横たわりて
  • ナポリの物語 シリーズ
  • デイヴィッド・フィンケルによる本
    • 兵士は戦場で何を見たのか
    • 帰還兵はなぜ自殺するのか
  • 同時多発テロと対テロ戦争についての本
    • 倒壊する巨塔_アルカイダと「9.11」への道
    • そして戦争は終わらない_「テロとの戦い」の現場から
    • テロの解剖_ビンラディンの死からイスラム国の台頭まで
  • グレート・ギャツビー
  • グールド魚類画帖_十二の魚をめぐる小説
  • フローベール書簡集
  • シナトラ!歌こそは君
  • 百年の孤独
  • 世界の技術を支配する ベル研究所の興亡
  • ペリフェラル
  • 人生に聴診器をあてる_見失った自分を取り戻す道案内
  • シービスケット_あるアメリカ競走馬の伝説
  • アメリカ政治におけるパラノイド・スタイル
  • オデュッセイア
  • ラボ・ガール
  • うそつきくらぶ
  • 希望の記し_マーティン・ルーサー・キング・ジュニア著者・演説集
  • 書くことについて
  • チャイナタウンの女武者
  • 第三帝国の言語<LTI>_ある言語学者のノート
  • 民主主義と暴政に関する本
    • 暴政_20世紀の歴史に学ぶ20のレッスン
    • 民主主義の死に方_二極化する政治が招く独裁への道
    • 自由なき世界_フェイクデモクラシーと新たなファシズム
  • 6度目の大絶滅
  • その名につなんで
  • ジャロン・ラニアーによる本
    • 人間はガジェットではない_IT革命の変質とヒトの尊厳に関する提言
    • 万物創生をはじめよう_私的VR事始
    • 五次元世界のぼうけん
  • エイブラハム・リンカーンの本
    • エイブラハム・リンカーン演説・著者集
    • リンカーンの三分間_ゲティスバーグ演説の謎
    • リンカーン_ある著述家の伝記
    • リンカーンの剣_大統領職と言葉の力
  • 極北の夢
  • ブラッド・メリディアン
  • 贖罪
  • 白鯨
  • 階段の門
  • トニ・モリスンによる本
    • ソロモンの歌
    • ビラヴド
  • ウラジーミル・ナボコフによる本
    • ウラジーミル・ナボコフ全短編
    • 記憶よ、語れ_自伝再訪
  • テヘランでロリータを読む
  • ビスワス氏の家
  • トレバー・ノア_生まれたことが犯罪⁉
  • バラク・オバマの本
    • マイ・ドリーム_バラク・オバマ自伝
    • 変わるのは私たちだ_バラク・オバマ演説集
  • ゼアゼア
  • 1984
  • 映画狂時代
  • メイスン&ディクスン
  • ライフ_キース・リチャーズ自伝
  • ピカソ
  • 仕事と職業に関する本
    • シック・イン・ザ・ヘッド_人生とコメディについてのインタビュー集
    • いい意味でクレイジーチームワークとリーダーシップといちかばちかのイノベーション
    • 羊飼いの暮らし_イギリス湖水地方の四季
    • 脳外科医マーシュの告白
  • ハウスキーピング
  • アメリカン・パストラル
  • ハリー・ポッターのシリーズ
  • サルマン・ルシュディによる本
    • 真夜中の子供たち
    • ムーア人の最後のため息
  • オリヴァー・サックスによる本
    • 妻を帽子とまちがえた男
    • 火星の人類学者_脳神経科医と7人の奇妙な患者
  • かいじゅうたちのいるところ
  • ドクター・スースによる本
    • ぞうのホートンひとだすけ
    • キャットインザハット_ぼうしをかぶったへんなねこ
    • いじわるグリンチのクリスマス
    • みどりのたまごとハム
    • ロラックス
    • きみの行く道
  • ウィリアム・シェイクスピアの戯曲
  • フランケンシュタイン
  • リトル・フェイリャ
  • ホワイト・ティース
  • 私が愛する世界
  • 心が終わるところにある椰子の木_歌と戯曲
  • ゴールドフィンチ
  • アメリカのデモクラシー
  • 指輪物語
  • フィンセント・ファン・ゴッホの手紙
  • 地上で僕らはつかの間きらめく
  • デレク・ウォルコット詩集_1948-2013
  • インフィニット・ジェスト
  • すべて王の臣
  • エデュケーション_大学は私の人生を変えた
  • 地下鉄道
  • 昨日の世界
  • 日本語版参考文献
  • 訳者あとがき

まえがき

 子供の頃の私にとって、本は避難所であり聖域でした。夜は毛布をかぶって懐中電灯で読んだほどです。車では後部座席を陣取り、車酔いに苦しみながら本を読みました。

 私の場合、多くのことをまず本で学び、後から実際に経験したのであって、その逆ではなかったのだが、そういう読者は少ないのではないでしょうか。

 今回は、多くの読者を得るのにふさわしい、一読の価値がある本を紹介します。

 一人の本好きとして書きました。何らかの隠された意味を説明しようとか、文学史の位置づけを考察しようとするつもりはありません。ただ、皆さまにこれらの本を読んでほしいのです。

そして戦争は終わらない

デクスター・フィルキンス
そして戦争は終わらない
NHK出版

 戦場を活写したノンフィクション作品です。ニューヨークタイムズ紙の特派員である著者がイラクとアフガニスタンを現地取材した戦場ルポが基になっています。

 悲惨な現状を伝える喫緊の必読書に仕上がっているのです。フィル金子の精力的な取材活動と、歴史的背景への鋭い感性に加えて、人間の悲哀と戦争の耐えがたさを小説のように肌で感じさせる筆力が集結しています。

 この書籍には逃げ場もなく武装勢力の標的にされる民間人、アメリカ軍の爆撃で廃墟と化した家々や地区、防御のために張り巡らされた鉄条網や防爆壁、イラクとアメリカの政治家の嘘についてもページを割いています。バクダッドでのスンニ派の原理主義者の取材もリアルです。

 フィルキンスは、イラクにいると「宇宙カプセルに乗って地球の周りをまわっているような気になる」と書いています。遠くにいる彼らのことなど無視して幸せにやっていながら、哀れなほど情報に飢えているとの表現です。

ピカソ

ピカソ 第一巻 神童、 第二巻 キュビストの反乱、 第三巻 意気揚々
ジョン・リチャードソン

 ピカソは恋人や愛人ですら、作品に利用する芸術家です。神のようなものも、実のところ一人の芸術家にすぎないと考えています。

 ピカソはやりたい放題の天才芸術家であり、自己神格化するミノタウロスです。努力でこの世界を再定義できると確信していました。

 この書籍で、ピカソの家族、隣人について詳しく語り、確かな資料を基に、これまでピカソという人物を何層にも取り巻いていた神話、噂、憶測のたぐいを剥がしてみせています。

脳外科医マーシュの告白

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脳外科医マーシュの告白
ヘンリー・マーシュ
NHK出版

 英国でもっともすぐれた脳神経外科医が、自分の仕事について余すところなく語った本です。この仕事の怖さというものがわかる読み物になっています。

 若いころは、手術がうまくいくたびに高揚感によう知れたという気分になれたそうです。しかし、いくつかの失敗を経て、わずかな失敗が頭から離れないようになっていきました。

 外科医が強いられるリスク計算や、手術の日の朝に患者と話をするのが苦手ということにも触れています。

 患者との間に一定の距離を保つ必要があると強調していますが、患者に親身になっていることは伝わってくる書籍です。

リトル・フェイリャ

リトル・フェイリャ
ゲイリー・シュタインガート

 これまでに読んだ回顧録のなかでいちばん笑えます。

 1980年代のニューヨークで移民として育った作者自身の体験で、感動的で心温まるかと思うと、不遜で真剣で鋭い観察による記録で、ストーリーテリングの豊かな才能と言葉への熱い思いにあふれています。

 突然アメリカで生きていくことになった少年が、「敵国」と教えられてきた国に適用しようと四苦八苦する様子で、じつに面白おかしく語られています。

 高校での成績がふるわず、両親は息子のつく職業に悩むようになったようです。「移民の子供が目指すべきものは法律か医学、あるいは〝コンピューター〟とかいう妙な新分野しかないというのは周知のことだった」と書かれています。

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