スマホアプリはなぜ無料?/著者:松本健太郎

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書籍情報

タイトル

スマホアプリはなぜ無料?

10代からのマーケティング入門

発刊 2023年10月20日

ISBN 978-4-309-61760-2

総ページ数 214p

著者

松本健太郎

データサイエンスの重要性を感じ、多摩大学大学院へ入学して学び直した。マーケティングや消費者心理の分析などに取り組みつつ、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌に登場している。

出版

河出書房新社

もくじ

  • はじめに
  • 第1章 どうしてスマホアプリは無料で使えるの?
    • 世の中にはお金を払わず使える「無料」のサービスがある
    • 「無料」なのに億の売上⁉ 誰がお金を払っているの?
    • ビジネス=お金儲けは不正解⁉
    • 買う・買わないを決める「価値」とは
    • ビジネスモデルってなんですか?
    • 無料のサービスを支える3つのしくみ
    • みんなが満足するビジネスモデルを作るのはとってもたいへん!
  • 第2章 価値ってなに?どうやって値段は決まるの?
    • 1万円のコーラ、高い?安い?
    • 値段の「高い」「安い」ってどうやって決まるの?
    • そもそも僕たちはなににお金を払っているんだろう?
    • 価値が高いのに激安⁉価値と値段の不思議な関係
    • 値段の高さを決める「水」の値段が安いワケ
    • 期間限定の商品が欲しくなるのはなぜ?
    • 買いたい&売りたい気持ちを表す「需要と供給」ってなに?
    • スタバのラテが1杯10円だったら「需要」はどうなる?
    • スタバのラテが1杯5000円だったら「供給」はどうなる?
    • どうして大人は「最近、みんなの中でなにが流行ってる?」と聞くの?
    • 安くて大盛りのお店が賞賛される日本、実はかなり特殊
    • 値上げが簡単にできないのはなぜ?
    • 値上げしやすいモノ、しづらいモノ、なにが違うの?
    • メルカリでモノを高く売るなら「価格弾力性」をチェック!
    • 「価値と値段」がわかれば、無料サービスのしくみが見えてくる
  • 第3章 市場ってなに?どうやって欲しい商品は生まれるの?
    • 子どもからお年寄りまで、みんな毎日「交渉」している!
    • どんな市場も最初は0円から始まる
    • 「買いたい」と「売りたい」、どっちが先に生まれるの?
    • 買いたい気持ち(需要)はすぐに消えてしまう
    • 無料サービスでも「見えざる手」って働くの?
    • 迷惑な転売ヤーを誕生させた「市場の失敗」
    • どうして「転売ヤー」は法律で取り締まれないの?
    • 市場の失敗①「独り占め」で失敗
    • 市場の失敗②「それ知ってたら買わなかったのに!」で失敗
    • 市場の失敗③「自分さえよければいい」で失敗
    • 「自分さえよければいい」の失敗は、無料サービスにも影響する
    • 僕たちが失敗の多い市場を利用し続けるワケ
    • 「働く」も市場⁉ 僕たちが供給側になれる理由
    • 「タダ働き」を賢く使えばお金が増える⁉
    • 個人情報などのデータもお金になる
  • 第4章 マーケティングってなに?14歳にもマーケティングが必要なワケ
    • マーケティングってなに?
    • 「もっと仲良くなりましょうよ!」と言いやすくなった世界
    • 「売り場」ではなく「買い場」⁉ お客さま目線は難しい
    • スタバが提供するのは「コーヒー」ではない⁉
    • どんな時代も「お客さま」は気まぐれ
    • 買う理由を探る「マーケター」が求められるワケ
    • エナジードリンクのライバルはラーメン⁉ マーケターの仕事
    • 消費者の本音は行動に表れる
    • 洗脳でも押し売りでもない! 買いたい気持ちになるしくみ
    • 文化祭や生徒会の選挙でも「マーケティング」が使える!
  • 第5章 14歳でも、デジタルを使えば「価値」を作れる!
    • マーケティングで大事なことってなに?
    • 1000円のコーラを買いたくするのがマーケティング⁉
    • デジタルが「体験」をどんどん上書きしていく
    • デジタルが未来の当たり前を変える
    • SF思考を身に付けよう
    • デジタルを使いこなせば、大人だって追い越せる!
    • 14歳でもデジタルで「価値ある体験」が作れる
    • デジタルだからこそできる「効率化」と「超能力」
  • 第6章 つい課金をしちゃうのは「行動経済学」のせい?
    • 人間らしさに着目した「行動経済学」で、無料のしくみがわかる!
    • 夏休みの宿題が計画通りにできないワケ
    • どうして人はわざわざ損をする選択をしてしまうの?
    • 誰もが「天使」と「悪魔」を抱えている!
    • 「失う悲しみ」と「得る喜び」、どっちが強い?
    • ついついアプリで課金してしまうのはなぜ?
    • 課金の裏側にある「アンカリング」とは?
    • 無意識のうちに選んじゃう「ナッジ」というしくみ
    • 人はいつも「自分の意思」で決めているわけじゃない⁉
    • 気づいたら損をしている「スラッジ」に要注意!
    • 僕たちを騙そうとする「スラッジ」を見抜くポイント
    • ナッジとゲームアプリは相性抜群
    • 「役に立つ」と「意味がある」、世界はどっちに傾いている?
    • 「学校の勉強」がのちのち生きてくるワケ
    • 大事なのは「情熱のために学び続ける」こと
  • おわりに

はじめに

 みなさんのスマホにはアプリがダウンロードされていると思います。

 その大半が「無料」で使えるはずです。

 ユーザーに無料で使ってもらうために、アプリを提供する企業が損をしているわけでもありません。XやTikTokは、年に何兆円もの売上があります。

 アプリを提供する企業に、誰が、どんな理由でお金を払っているのでしょうか。

 この質問に答えるためには、「世の中のしくみ」を理解しなければならないでしょう。

 私たちは「お金の使い方」を知らなすぎます。14歳から知っておけば、社会から搾取されず、自分で生きて行けるようになるはずです。

みんなが満足するビジネスモデル

 無料サービスを使っている私たちにしてみれば「タダでいいサービスを使えて良かった」と感じます。

 お金を払っている側にしてみれば、

たくさんの人に広告を見てもらえてよかったな

多くのユーザーにサービスを使ってもらえたので、良かった

課金することで、より良いサービスを受けられて良かった

 となります。こうした、みんなが満足をするしくみをつくるのは簡単じゃありません。本当に難しいことです。

 三者がwin-winになれるしくみを作れなかった企業は、早々に商品・サービスを撤退しています。Xも巨額の赤字を抱えて、一時期は課金のしくみ作りをしていました。

 基本的にユーザーが満足しなければ赤字になってしまうし、ユーザーの代わりに「私がお金を払います」という人が出て来なかったら赤字になります。

 実は、ユーザーから直接お金を払ってもらうビジネスモデルの方が、企業はラクなのです。

「働く」も市場

 市場では、私たちが書いてで、企業が売り手に見えます。

 けれど、私たちが売り手になるケースがあるのです。それが、労働市場となっています。

 労働市場では、企業が買い手として労働力を求めていて、私たちが売り手として労働力を供給しているのです。

 労働市場では無料サービスのビジネスモデルは一応できません。法律で禁止されています。

 しかし、有名な人の付き人に賃金なしでなったとします。代わりに、裏側の映像や取材内容をストリームに流せる条件をとりつけたとしましょう。単純に「時給〇円」という形に落としこまなくても、ストック型の広告収入が見込めます。結果的に得られる報酬も増やせるということです。

デジタルで価値体験が作れる

 理解するだけでしくみを作る側・活かす側になれるわけではありません。「自分の手を動かすこと」が必要です。

 文化祭や地元のフリマで出店して、値付けの難しさを学ぶのもいいでしょう。試しにノーコードを使ってアプリを開発してみたり、AIを開発するのもおすすめです。

 今はプログラミングの知識がなくても使える開発ツールがあります。プログラムの知識であってもオブジェクト指向型なので難しくありません。

 開発ツールはクラウド上で提供しているので、少額のお金で利用できるので、身内の人に相談してみてください。

 それ以外にも、ネット上で自分が描いた絵やイラストを打ってみたり、ストリーミングサービスを使って作曲した曲を配信したり、ポッドキャスト番組を始めてもいいと思います。

 アルバイトができる年齢になったら、デジタルで整備された環境で働いてみるのもおすすめです。

ついついアプリで課金してしまう

 無料アプリのゲームで、50時間かけて育ててきたキャラがあるとします。ここまで無料で育ててきました。ここからは、育成に必要な素材がなかなか手に入りません。しかし、有料であれば比較的簡単に手に入れることができます。

 こうなると、課金して強くしようとする人がそれなりにいるものです。今まで投資した時間、労力といったコストのうち、中止したり撤退したりして戻ってこない分を「サンクコスト」と呼びます。人には、プロスペクト理論が生む保有効果で「なにかを失いたくない」という心理が働く機能があるのです。

 課金モデルは、私たちの「人間らしさ」を利用したしくみになっています。

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