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目次
書籍情報
世界と人間を操る
お金の学校
発刊 2023年10月10日
ISBN 978-4-8470-7342-7
総ページ数 239p
渡邉哲也
作家・経済評論家。
貿易会社に勤務した後、独立。救数の企業運営に携わる。欧米危機を警告し大反響を呼んだ。内外の経済・政治情勢もリサーチや分析に定評があります。
ワニブックス
- はじめに
- 1.お金の基礎知識
- Q.そもそもお金って何?
- A.国家の「信用=国力」で成り立っている〝共同幻想〟です
- Q.金利と利子は違う?
- A.「利子(利息)」は金額であり、その利率が「金利」です
- Q.リコースローンとノンリコースローンの違いは?
- A.住宅ローンと不動産担保ローンの違いです。日本では全社が一般的で米国は後者が多いです
- Q.商品の値段は誰が決めているの?
- A.需要と供給のバランスで決まります
- Q.そもそもお金って何?
- 2.マクロ経済は国家の視点
- Q.価格と物価は同じ?
- A.「価格」はミクロ経済、「物価」はマクロ経済だから次元が違います
- Q.デフレとインフレって何?
- A.物価が継続的に上がるのが「インフレ」、下がり続けるのが「デフレ」
- Q.デフレスパイラルが銀行に与える影響をもう少し詳しく
- A.資産価値の落下と景気の悪化が連鎖する「バランスシート不況」に陥ります
- Q.よく使われる「名目」と「実質」って何?
- A.名目は額面通りの金額で、実質h物価の変動の影響を取り除いたものです
- Q.価格と物価は同じ?
- 3.金融商品と銀行
- Q.債券の金利はどう決まる?
- A.通貨の誘導金利+リスクプレミアム(付加金利)です
- Q.株式の返済順位はなぜ低い
- A.経営に関与しているということで責任が大きいからです。その代わり金利は高くなっています
- Q.手形と小切手の違いは?
- A.大きな違は手形は約束をもとに支払いを先延ばしにできることです
- Q.銀行とは?
- A.個人から集めた預金を貸し出すことで金利差を稼ぐビジネスです
- Q.「手数料ビジネス」が拡大している
- A.銀行にとってはおいしいからですが、二重手数料であり、かつハイリスク商品。買うべきではありません。
- Q.債券の金利はどう決まる?
- 4.中央銀行の戦い
- Q.「金融ビッグバン」で何が変わった?
- A.金利の自由化、為替の自由化、金融商品を解禁し自由な市場を拡大しました
- Q.「金融政策」って何?
- A.国債を売買することで資金量の調整を行い金利を誘導することです
- Q.「為替の自由化」で何が変わった?
- A.銀行や取扱業者により為替レートが変わるようになり、円も国際通貨となりました
- Q.「マイナス金利政策」は非常識?
- A.世界各地でも同様の政策がとられています
- Q.金融政策と財政政策の違いは何?
- A.財政政策は政府が相当、増税や財政出動により景気をコントロールします
- Q.MMTは正しいか?
- A.MMTを持ち出すまでもなく従来の金融政策で説明できます
- Q.国債の価格が下がると金利が上がるのはなぜ?
- A.額面の金利は変わらないため、実質的に金利が上昇するからです
- Q.日銀の「独立性」とは?
- A.通貨の信用を担保するために財銀分離原則にのっとった地位で、完全に独立しているわけではありません
- Q.「金融ビッグバン」で何が変わった?
- 5.国家vs.国家、為替戦争
- Q.円安と円高、どっちがいい?
- A.デフレでは円安のほうが有利なことが多いでしょう
- Q.外国為替市場の役割は?
- A.異なる通貨を交換する世界最大の金融市場です
- Q.円安と円高、どっちがいい?
- 6.国際金融の仕組み
- Q.SWIFTとは何?
- A.海外への送金を可能にする世界最大の国際決済網です
- Q.「国際金融のトリレンマ」って何?
- A.世界経済で必ず知っておいたほうがいい法則です
- Q.人民元が国際通貨になる可能性は?
- A.自由な資本取引を制限している以上、難しいでしょう
- Q.中国主導のAIIBはどうなっている?
- A.仕組みが昨日せずADBの〝下請け〟と化しています
- Q.世界最大の機関投資家「GPIF」が株価に与える影響は?
- A.あります。しかしなるべく市場に影響をあたえないようにしています
- Q.SWIFTとは何?
- 7.国家vs.グローバル企業
- Q.暗号資産って何?
- A.2種類あって、ドルなどの裏付けのある安全なものもあります
- Q.メタの「リブラ」構想はなぜつぶされたのか?
- A.通貨発行権の侵害という国家の逆鱗にふれたからです
- Q.暗号資産って何?
- 8.通貨覇権とウォール街vs.シティ
- Q.そもそも「基軸通貨」って何?
- A.世界中で使うことができる国際通貨で、戦後は「米ドル」です
- Q.ドルが基軸通貨となった「ブレトンウッズ体制」とは?
- A.米ドルだけが金と交換できる「疑似的金本位制=ドル本位制」です
- Q.なぜドルは暴落しないのか
- A.ドル支配体制は世界諸国にとってもメリットがあるからです
- Q.ウォール街とシティは対立しているの?
- A.対立も協調も。ウォール街を凌駕する取引も少なくありません
- Q.そもそも「基軸通貨」って何?
- 9.金融危機のメカニズム
- Q.銀行がつぶれるときはどんなとき?
- A.責務超過ではなく〝取り付け騒ぎ〟です
- Q.投資信託とヘッジファンドの違いは?
- A.投資信託は初心者向け、ヘッジファンドは富裕層向けです
- Q.金融危機はなぜ起きるのか?
- A.「フェイクマネー」が膨張し、信用バブルが崩壊するからです
- Q.バブルを膨張させた資産の「証券化」とは?
- メリットも大きいが、複雑化するにつれ危機の元凶になりました
- Q.銀行がつぶれるときはどんなとき?
- 10.強欲資本主義の崩壊
- Q.「金融資本主義」の問題とは?
- A.「強欲資本主義」とも批判され、超格差社会を生み出しました
- Q.どうしてグローバル金融機関はそんなに貪欲なのか?
- A.富の収奪を目的とする〝植民地会社〟がその正体だからです
- Q.「金融資本主義」の問題とは?
- 11.バブル崩壊後の行方
- Q.なぜバブルは弾ける?
- A.膨れ上がった資産価格が臨界点となる「ミンスキーモーメント」を迎えるからです
- Q.不動産バブル崩壊が終わるとどうなる?
- A.不動産価格が適正化され新たな買い手が生まれます
- Q.なぜバブルは弾ける?
- 12.利上げ、リスクの構造
- Q.なぜFRBは〝利上げ〟をするのか?そのリスクは?
- A.コロナ禍の世界異次元緩和によるインフレの後始末をするためです
- Q.利上げに対する各国の対応は?
- A.新興国のデフォルトに備え新興国が協調して通貨の安全保障体制を整えています
- Q.世界の金融商品リスクは?
- A.「資産担保証券(ABS)」やデリバティブを利用した仕組債などです
- Q.なぜFRBは〝利上げ〟をするのか?そのリスクは?
- 13.金融制裁の威力
- Q.ドル支配体制の金融制裁を教えて
- A.IEEPA法やその対象となった人が載るSDNリストなど様々なリストがあり、取引が禁止されます
- Q.シティの金融制裁は?
- A.保険・再保険市場から排除され航空も航海も完全麻痺です
- Q.金を大量に購入すればドル支配から脱せられるのでは?
- A.不可能です。金本位制は過去の遺物にすぎません
- Q.ドル支配体制の金融制裁を教えて
- 14.日本経済のリスクとチャンス
- Q.日本はインフレ?
- A.コストプッシュインフレです。デフレから脱却するカギは賃金とエネルギー
- Q.コロナ後の財テクは?
- A.安いときに買って高く売るのが財テク。バブル期には手を出さないほうがいいでしょう
- Q.日本はインフレ?
- おわりに お金を学ぶということ
はじめに
お金はうそをつきません。お金は正直です。現代社会において現金という信用によってつくられたお金が動いています。
多くの人はコンビニやスーパーでスマホ決済をし、インターネットサイトやクレジットカードで決済しています。これも信用でつくられたフェイクマネーであり、これを可能にしているのが金融なのです。
資源はお金に換算できます。そして、お金という道具を使うには知識が必要です。
お金とそれを動かすシステムについて、わかりやすく「Q&A形式」で解説した一冊です。
円安と円高、どっちがいい?
もちろん、円安、円高、それぞれにメリット、デメリットはあります。しかし、世界的に量的緩和が進むなかで日本だけが超円高に進んでいた当時は、デメリットのほうが大きかったのです。
けれど、自国通貨安は、他国へ輸出している日本製造業にとってはプラスとなっています。大量の外国資産や海外での売り上げがある日本企業にとっても、円安のメリットは大きいです。
安部政権誕生後の急激な円安により、為替差益が埋めれることで、多くの日本企業が倒産を免れました。
人件費もドル建てなどの外貨で支払うわけではないで、自国通貨が高くなるほど人件費が膨らみ、人件費の安い他国でつくられたものに売り負けてしまいます。これが、通貨があがると国際競争力が低下するという経済現象の基本原理です。
それに加え、消費者が日本の安全な食材を求めていることが、国内回帰を後押ししています。家電商品なども日本向けの製品が国内生産に切り替わってきました。円高下で日本の製造業は深刻な生産の空洞化に陥りました。
これに対して円安は、輸出はもちろん、内需向けに様々な産品をつくっている国内製造業にとっては大きなプラスです。
円安倒産したことがニュースになりましたが、超円高時代には、製造業やアパレル産業にかぎらず農産品や水産品に至るまで海外から安い商品が大量に流入し、国内の生産者が厳しい状況に立たされたことを想起するべきでしょう。
なぜドルは暴落しないのか?
イギリスから経済覇権を奪ったときは、アメリカは巨額の債権国家でした。それが、今は世界一の政務国家に成り下がっています。覇権を失ってもおかしくないのに、なぜドルは暴落もせず基軸通貨の位置をキープできているのでしょうか。
ドル基軸通貨の恩恵を最大限享受してきたのは、アメリカ一国でなく西側自由主義国や日本も受け取ってきたからです。
石油や穀物取引の決済に抜け穴をつくると、日本のようにドルによって大きな恩恵を受けている経済圏にとってもマイナスです。ドル建てで石油を買わなければならない日本の購買力も低下していくことを意味します。
ドル基軸体制には、ある国に融資した資金の回収が難しい場合にドルで決済するシステムがあります。それが「国際決算銀行(BIS)」です。
BISが既存の金融システムを守る立場にあり、G7はドル基軸通貨体制の恩恵を受けてきた国の集合体ともいえます。中国もアセアン諸国も、アメリカ人の莫大な借金による消費に支えられて成長してきたのです。
未曾有の量的緩和によるドルがあふれているため、ドルペッグしている国の通貨もじゃぶじゃぶ刷ることができます。
いわば、中国とアメリカというよりも、中国共産党とグローバル企業がもっとも恩恵を受ける構造になっていて、その需要を支えていたのがアメリカ国民ということです。これが現在の世界におけるマネー構造となっています。
アメリカのドル基軸に挑戦しているように見える中国でさえ、ドルペッグによって自国通貨人民元の信用を担保・発酵しています。世界最強の米軍と石油に支えられたドル基軸通貨体制は、今も変わらずに世界の金融マーケットを支配しているのです。
金融危機はなぜ起きるのか?
金融が信用によって成り立っています。銀行は信用創造によって、預金以上のの貸し出しを行えるのです。
中央銀行が発行する「真水」のお金に対し、その信用をもとに膨れ上がった資金を「フェイクマネー」と呼びます。金融商品が組成されていき、それによって、フェイクマネーがどんどん膨らみ、結果的に真水のお金の70倍程度まで世界の資金量が増大したといわれています。
それが2008年9月に起きたリーマンショックによってフェイクマネーは一気に消失し、35倍程度まで急速に縮小しました。投資家が追証を入れられれば、株を持ち続けることができますが、そうでないと強制決済され、市場から資金が消えることになるのです。それに連動して、換金や利益確定売りが頻発し、さらに株を押し下げて市場全体の資金量を減らすという負の連鎖が起きるのです。
手元資金確保のために、株式、債券、不動産、商品など様々なものが投げ売りされれば、信用創造でつくられたお金であるフェイクマネーが消えていきます。これが「バブル崩壊」のメカニズムです。
いったん消えた信用はなかなか戻りません。負の連鎖が起きてサブプライム問題発生前の4倍弱まで真水の資金を増やす必要に迫られました。
日本はインフレ?
バブル以降の長期的なデフレから、日本はインフレに変化しているといっていいでしょう。
しかし、今回のインフレは、原材料費などコストの上昇が原因で発生する「コストプッシュインフレ」であり、「悪性インフレ」であるともいえます。
2023年8月15日の内閣府の発表によると4~6月期の実質GDPは年率6.0%増と大きく伸びていますが、外需による要因が大きく、国内消費が減退してしまっています。
なので、これ以上のインフレは望ましくないということです。輸入物資による上昇が大きな要因となっています。
日銀は金融政策転換を議論しています。国民負担を減らし内需を拡大する必要があるからです。
日本の雇用制度は海外のように簡単に解雇できない反面、賃上げがし難い特徴があります。日本は賃金の大幅変動が起きにくい労働市場なのです。
しかし、非正規のパートやアルバイト市場では賃金が大きく上がっています。これまで中国に進出していた企業が日本に回帰していることがプラスに働いているのです。
したがって、上振れした利益を起業は給与に与えて、人手が確保できない状態を今のまま継続されることが望まれています。人手不足を一人ひとりの生産性を高めることが重要です。
特に今は何もしなくていい状況です。安易に移民政策などで海外から安価な人材を受け入れると、国内の賃金が上がらずデフレに後戻りします。海外の安い人材を雇えば経営者は喜ぶだけで、景気(信用)を刺激しません。
人手を補う電力も日本では高く問題視されています。経済的には、原発の再稼働や高効率の石炭タービンなどの置き換えを勧めたほうがよいでしょう。
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