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目次
書籍情報
連星からみた宇宙
超新星からブラックホール、重力波まで
発刊 2021年1月1日
ISBN 978-4-06-521354-4
総ページ数 248p
鳴沢真也
日本の天文学者。近接連星系を構成する脈動変光星の化学組織の研究により博士(理学)。兵庫県立大学自然環境科学研究所専任講師。
日本におけるSETI研究の第一人者。
講談社 BLUE BACKS
- はじめに
- 第1章 あれも連星、これも連星
- 連星とは「重心のまわりを公転しあう星」 連星をなす星は恒星である
- 全天でもっとも明るい星は連星だった! 連星には「主星」と「伴星」がある
- 2つの星の組み合わせはさまざま 北極星は3つの星が回りあっている!
- 3重連星も組み合わせはさまざま 4重連星、5重連星もある!
- いたい何重連星まであるのか 多重連星は「階層構造」になっている
- 第2章 連星はどのようにしてできたのか
- 一方から飛び出してできた?分裂してできた? 捕獲されてできた?
- 星は生まれたときから連星だった 連星のできかた①円盤が分裂する
- 連星のできかた②分子雲コアが分裂する 「捕獲」でできることもある
- 太陽にもかつで「兄弟」はいた? 「蒸発」して逃げ出す星もある
- 相手をチェンジして「サバイバル」する星も!
- 第3章 なぜ連星だとわかるのか
- 「二重性」は「たまたま」か「連星」か 二重星のほとんどは連星だった!
- 1つの星にしか見えない「食連星」 食連星の発見は「周期的な減光」から
- 光の波長を調べてわかる「分光連星」 実視連星・食連星・分光連星の関係
- 第4章 連星が教える「星のプロフィール」
- 連星の「質量」を教えてくれる方程式 2つの星の「質量比」を知りたい!
- 質量比は公転速度の比率からわかる! 分光連星では「軌道傾斜角」がわからない
- 軌道系射角は食連星からわかる! アルゴルの2星の質量が求められた!
- 「質量光度関係」から単独星の質量もわかる 星の質量から「寿命」もわかる
- 「異常小質量短周期連星」の発見
- 第5章 「新しい星」は連星が生む幻か
- 突然、空に出現する「新星」 新星の正体は連星だった!
- 「星の死後の姿」白色矮星とは 白色矮星の表面で起こる新星爆発
- 「赤い新星」は2つの星の衝突で起こるのか はぐれた星のミステリー
- 第6章 ブラックホールは連星が「発見」した
- ロケットで観測されたX線 X線源を探せ! 日本が発見「さそり座X-1は星だった」
- さそり座X-1 は連星だった! 「超巨星」が「超新星爆発」を起こし「中性子星」ができる
- はくちょう座X-1のX線源はブラックホールだった!
- なぜブラックホールがX線源となるのか ブラックホールは単独星では発見できなかった
- 第7章 連星が暗示する「謎のエネルギー」
- 太陽の何億倍も明るく輝く超新星爆発 白色矮星が爆散する「la型超新星」
- なぜ宇宙が膨張しているとわかるのか la型超新星を使えば銀河までの距離がわかる
- 宇宙の膨張は加速していた! 膨張速度を加速させる「謎エネルギー」
- 第8章 連星が解いた「天才科学者最後の宿題」
- 重力波は「空間の伸び縮み」をひかりの速さで伝える 間接的な検出をもたらした連星
- 直接検出の気が遠くなる困難さ 初の重力波はブラックホール連星から届いた
- 「消えた質量」が重力波になった! 中性子星どうしの衝突では電磁波も出る
- 21世紀天体物理学の「勝利の日」 36億光年を飛んできた「高速電波バースト」
- 重力波がダークエネルギーも解明する
- 第9章 連星のユニークな素顔
- 2つの星がくっついてしまった連星がある! 「ひょうたん星」がさらに進化すると?
- 星の中を星が回っている天体がある ひょうたん星の表面は「ほくろ」だらけ
- 低温度の近接連星で起こる激しい磁場活動
- 第10章 連星も惑星を持つのか
- 続々と見つかっている系外惑星 「連星の惑星」には2つのタイプがある
- 一人ぼっちで浮遊している惑星もある
- 「ハビタブル惑星」となるための複雑な要件 太陽系外にも見つかったハビタブル惑星
- 連星にもハビタブル惑星が見つかった 「プロキシマ・ケンタウリ」の衝撃
- 4重連星にもハビタブル惑星がありそうだ
- 第11章 連星は元素の合成工場だった
- 最初に水素が、次にヘリウムができた 星の内部でつくられるのは鉄まで
- 超新星爆発でできる鉄より重い元素 超新星爆発は宇宙の物質を循環させている
- 中性子星どうしの合体でできる元素もある キロノバが証明したプラチナや金の合成
- 「X線バースト」による元素合成 「理論上の天体」で予言される元素合成
- ソーン・ジトコフ天体は実在するか
- 第12章 もしも連星がなかったら
- 連星が終焉を迎えるシナリオ 連星同士の衝突・合体もある!
- 連星がなければ私たちは存在できなかった? 歴史はまったく違っていた
- 天文学者や物理学者が困る 連星がない宇宙はつまらない!
- あとがき
はじめに
宇宙に存在する星々のおよそ半数は、連星であると考えられています。恒星はみな1人ぼっちで存在していると思っている人のなんと多いことでしょう。
連星があるおかげで、星の質量がわかり、星のプロフィールを推測することができます。また、アインシュタインの最後の宿題とも呼ばれた「重力波」の発見にも深く関わりがあります。連星に関連する大発見の多くが、当然のようにノーベル賞に輝いています。
連星を知ることは、宇宙を知ることと同じ意味なのです。
寿命がわかる
星の質量がわかると、星の寿命がわります。
星は質量が大きい(重い)ほど、早く進化して寿命が短くなります。
星の質量が大きいということは、核融合反応に使える水素ガスが多いということですから、寿命が長くなりそうですが、星は質量が大きいほど中心部の温度が高くなり、核融合反応が激しくなって水素ガスをあっという間に使ってしまいます。
星の寿命は、星の重さの2~3乗程度に反比例すると考えられています。
太陽の質量の星の寿命は、約100億年と考えられています。太陽は約46億歳なので、一生の半分の半分の質量の星は、800億年ほども輝きつづける計算になっています。
星の質量を求めることは、星の研究にとって非常に重要な意味をもっているのです。
重力波の観測
重力波の観測は、宇宙膨張という最先端の宇宙論雄分野にも貢献することが期待できます。
連星の合体時に検出される重力波の波形分析から、この現象が起きた場所の距離が正確にわかります。キロノバやショートガンマ線バーストが起きた銀河が遠ざかる速度が計測できるので、宇宙の膨張の様子が詳しくわかるのです。
重力波と電磁波、ガンマ線バーストで放出されると予測される素粒子ニュートリノなどを同時に観測する「マルチメッセンジャー天文学」は、21世紀の天文学の花形分野になるでしょう。
星の衝突から金ができる
重い元素がつくられる過程があります。プラチナ、金、ウランといったものは、中性子星どうしの連星が衝突・合体するときに瞬時につくられるのです。実は、かなり最近になってわかりました。
2017年に観測されたキロノバ(中性子星どうしの爆発)で、放出される光の特徴から、プラチナや金、ウランなどが中性子星どうしの合体でできていたと証明されました。
今後も、連星をなす中性子星どうしの衝突が次々と観測されて、そのメカニズムが解明されていくはずです。
私たちは存在できない
星の誕生の段階で連星は自然に形成されてしまいますので、「もしも、宇宙に連星がなかったら?」という問い自体に無理があります。
あえて、もしもを仮定すると、もしも連星がなかったら、私たちは存在していない可能性があるのです。
硫黄、カルシウム、鉄などは、Ia型超新星爆発の時に合成されます。これらの元素は重力崩壊型超新星爆発のときにもできますが、Ia型超新星爆発のときが主です。
これらの物質は、人間を含めて生物の体内に存在します。連星がなければ、生命は存在できたのでしょうか。
あとがき
まだまだ、触れていない連星の話があります。またいつぞやの日にお話しできればと思っています。
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