蜂の奇妙な生物学/著者:光畑雅宏

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書籍情報

タイトル

生物ミステリー

蜂の奇妙な生物学

発刊 2023年8月4日

ISBN 978-4-297-13587-4

総ページ数 271p

著者

光畑雅宏

農業場面における送粉者利用のスペシャリスト。
在来種マルハナバチの実用化について中心的な役割を果たし、その利用技術の確立と作物毎の利用ノウハウの構築に注力。ハナバチや天敵昆虫を利用する農業者へのアドバイスだけでなく、一般の市民や子供たちむけの昆虫観察会、講演など幅広く普及啓発活動も行っている。
専門は、応用昆虫学、送粉生物学、動物行動学

COCO

作家、写真家、漫画化、イラスト描き。
休日は山や川辺へ観察・撮影に、夜はおかずを釣りに海へと出かける書籍挿絵を描く絵描き。

出版

技術評論社

もくじ

  • CONTENTS
  • はじめに
  • 第1章 知ってる?ハチにまつわる基礎知識
    • そもそもハチとは何か?
    • どのようなハチがいるのか?ハチの分類と進化
    • ハチは本当に危険な生物なのか?
    • ハチを食生活から比べてみる
  • 第2章 名建築家!六角形だけがハチの巣じゃない
    • 家は植物のコブの中 タマバチ
    • 壺作りはお手のもの 陶芸家トックリバチ
    • 嫌な臭いで寄せつけません アシナガバチ
    • マイホームはカタツムリの殻 マイマイツツハナバチ
    • 束ねた筒は集合団地 マメコバチ
    • 有名なのはアリだけど…ハチの世界にもいる ハキリバチ
    • アリのように土の中に迷路を作る アカガネコハナバチ
    • 英語の名前は大工バチ クマバチ
    • ウズラの卵、温泉饅頭の積み重ね?相部屋で育つマルハナバチ
    • 六角形の構造は戦車にも使われる ミツバチ
    • column1 2度目は危ない?おしっこが効く?ハチ刺されの迷信
  • 第3章 お世話になってます!あれもこれもハチのおかげ
    • 畑を守る用心棒たち オンシツツヤコバチなど
    • 野菜ハウスにハチの銀行 コレマンアブラバチ
    • 旅は道連れ、風まかせ カマバチ
    • 紙の作り方教えます!アシナガバチ、スズメバチ
    • 見直される伝統食 クロスズメバチの幼虫
    • スポーツ飲料のヒントになったのは幼虫の唾液? スズメバチ
    • リンゴが食べられるのは マメコバチのおかげ
    • トマトが食べられるのは マルハナバチのおかげ
    • イチゴやメロンが食べられるのは ミツバチのおかげ
    • 甘~いハチミツは働きバチが吐き戻した…? ミツバチ
    • column2 世界の野菜や果物はハチなどの昆虫の力を借りて作られている
  • 第4章 知れば知るほど奥深い!ミツバチの世界
    • 年寄りをいたわらない?仕事分担の不思議 ミツバチ
    • 究極のヒモ生活? ミツバチのオス
    • それでも交尾は命がけ ミツバチのオス
    • 人の家に押し寄せて蜜ドロボー ミツバチ
    • 必殺技は「熱殺蜂球」。 スズメバチを布団蒸し ニホンミチバチ
    • 誰が推してた?冷却システム ミツバチ
    • どうしてそんなことするの?レタスを齧る ニホンミチバチ
    • 一度は浴びたい?ウンチの雨 オオミツバチ
    • 凶暴化したのは人間のせい キラービー=セイヨウミツバチ
    • column3 身近だけれど意外と知らないハチミツよもやま話
  • 第5章 面白習性!あなたの知らないハチたちの生きざま
    • もともとハチなのに…失礼な名前をつけられた ハチガタハバチ
    • キノコも一緒に育てましょう キバチ
    • 本当はどっち? アリバチ
    • 入り込んでしまえばこちらのもの エイコアブラバチ
    • 兵隊アリならぬ兵隊幼虫? トビコバチ
    • 世界最小のハチ=世界最小の昆虫 アザミウマタマゴバチ
    • テントウムシを手玉にとる テントウハラボソコマユバチ
    • 子供の成長は運まかせ? エゾマルカギバラバチ
    • 体の7倍以上の長さの尾を持つ ウマノオバチ
    • 水の中を飛ぶように泳ぐ アメンボタマゴクロバチ
    • 育ての親をとことん酷使 クモヒマバチ
    • 漢字で書くと「青蜂」美しいハチの仲間 セイボウ
    • 名前だけだとよくわからない エメラルドゴキブリバチ
    • 寄生者?用心棒?ダニを飼う アトボシキタドロバチ
    • オスにも針がある? オデコフタオビドロバチ
    • 毒グモ タランチュラより強い タランチュラホーク
    • まるでクワガタ?キバで戦う オオキバドロバチ
    • 無駄な抵抗はしません アシナガバチvsスズメバチ
    • 壁をひっかいて腹ペコを知らせる オオスズメバチ
    • 自分で巣作りはまっぴらごめん チャイロスズメバチ
    • 動物界初?太陽光で自家発電 オリエントスズメバチ
    • 世界最大のハチ再発見はウソ? ウォレスジャイアントビー
    • まるでカッコウ? オオトガリハナバチ
    • 幸せを呼ぶ?青いハチ ルリモンハナバチ
    • 身近にいる謎だらけ ダイミョウキマダラハナバチ
    • 眠る時はみんなで整列 フトハナバチ
    • なわばりの侵入者はすべてチェック? クマバチのオス
    • 花にとっては迷惑な存在?蜜ドロボー クマバチ
    • だらしない?下を出したままの シタバチ
    • 子供を抱いて温めて育てる鳥のようなハチ マルハナバチ
    • 「飛ぶはずがない」と言われていた マルハナバチ
    • その名もマネハナバチ。マネをして学習する マルハナバチ
    • 咲かぬなら咲かせてみせよう セイヨウオオマルハナバチ
    • 天然記念物球の希少種 ノサップマルハナバチ
    • 大家族を養うって大変 ハリナシバチの餌取り合戦
    • 針がない分苦労の多い? ハリナシバチ
    • column4 まるでエイリアン?寄生バチの奇妙な世界
  • 第6章 利用し利用され?植物とハチの不思議な関係
    • SOS!救難信号で用心棒を呼ぶ カリヤサムライコマユバチ
    • うらやましい?障害を果物の中で イチジクコバチ
    • 結婚相手はランの花 ハンマーヘッドオーキッド×コツチバチ
    • ぴったりフィット① パッションフルーツ×クマバチ
    • ぴったりフィット② サクラソウ×トラマルハナバチ
    • 花の匂いでプロポーズ ランの花×シタバチ
    • どうしてそんな形を思いついた? クマガイソウ×マルハナバチ
    • さあ、寄ってらっしゃい キンリョウヘン×ニホンミチバチ
    • column5 紫外線を利用した花とハナバチの情報交換
  • 第7章 切っても切れない!ハチに関わる生き物たち
    • 数千個の卵を産むギャンブラー ツチハンミョウ
    • クマバチに規制するクワガタ? ヒラズゲンセイ
    • 寄生した相手のやる気をなくす スズメバチネジレバネ
    • 木の上の覇権争い オオスズメバチvsカブトムシ
    • どうしても入りたくなっちゃう メンガタスズメ
    • 世界のセイヨウミツバチ大ピンチ ミツバチヘギイタダニ
    • マルハナバチの巣に同居するサソリの仲間 カニムシ
    • ウンチと一緒にばらまいてもらう マルハナバチタマセンチュウ
    • ハチが黒いものを攻撃するのはクマのせい?
    • スズメバチ大好き ハチクマ
    • column6 ハチをマネするいろいろな昆虫たち
  • 第8章 お騒がせ?外国から来たハチたち
    • クリを守るために連れてこられた チョウゴクオナガコバチ
    • フランスワインが飲めなくなる? ツマアカスズメバチ
    • 海外でお騒がせ! オオスズメバチ、フタモンアシナガバチ
    • 世界を席巻?勢力拡大真っ最中 オオハキリバチ
    • いろんなところに穴を開けちゃう タイワンタケクマバチ
    • トマト栽培の救世主から悪者にセイヨウオオマルハナバチ
    • column7 世界のマルハナバチ利用と外来種問題
  • 特別寄稿
    • ハナバチの危機とその対策
      • 国立環境研究所 生物多様性領域 生体リスク評価・対策研究室 室長 五箇公一
    • 嫌われ者のスズメバチも生態系にとっては大切な存在
      • 玉川大学学術研究所所長 小野正人
    • ハナバチ研究の面白さ
      • 筑波大学生命環境系助教 横井智之
    • 植物と食べ物とマルハナバチを守るために
      • 東北大学大学院生命科学研究科博士研究員 大野ゆかり
  • 本書およびハチに関する参考図書
  • おわりに

イチゴが食べられるのはミツバチのおかげ

 2009年、日本でちょっとした騒動が起きました。ミツバチの不足により、今年は「イチゴが食べられないかもしれない」という事件があったのです。

 メロンやスイカ、サクランボなど、ミツバチが受粉している果物はたくさんあります。中でもイチゴとメロンは、ほとんどがミツバチの受粉によって実っています。

 国内では多くのイチゴがクリスマス頃から5月頃に収穫できるよう、ハウスを温かく保温して、冬でもイチゴが育つ「促成栽培」を採用しています。冬の時期にハチが飛んでくることはありませんので、養蜂家からミツバチの巣を借りたり、購入したりして、イチゴのハウスにミツバチを導入するのです。

幸せを呼ぶ。ルリモンハナバチ

作者: HAL64

 ハチの色と聞いて、思い浮かべるのは黒と黄色の縞模様でしょう。一般的に警戒色として、私たち人間だけでなく、他の動物たちにも危険を知らせる効果があることが知られています。

 ルリモンハナバチは「ブルービー」と呼ばれ、とても美しい瑠璃色の斑紋が体中にちりばめられています。見つけた人をラッキーな気分にさせるその姿から、「幸せの青いハチ」として人気があるようです。

 このルリモンハナバチは「労働寄生」という変わった習性があります。土の中に作られた、全く別種のスジボソフトハナバチの巣にこっそり忍び込み、スジボソフトハナバチが苦労して集めた花粉団子に自分の卵を産みつけて、ちゃっかり幼虫を育ててもらい、あとは知らん顔です。美しい容姿と裏腹な習性を隠しています。

ハチミツよもやま話

 ミツバチが集めてくる植物によって、ハチミツの効能などに違いが出ます。ショ糖が多いもの、果糖が多いもの、ブドウ糖の割合が高いもの、様々です。花の種類によって三つの糖濃度も異なります。匂いもや色も異なるのです。日本でも最近はいろいろな花の蜜が販売されるようになりました。タリーズコーヒーでは、季節ごとにブルーベリーやコーヒーなど少し変わったハチミツなどが並んでいることもあります。

 日本では党の摂取には砂糖を利用することが多く、ハチミツはまだまだ嗜好品的な扱いで消費量が多い国とは言えません。ハチミツの国内自給率は6%程度で、中国からの輸入に頼っているのが現状です。

 日本養蜂協会ではハチミツ以外の蜜蜂、ハナバチの魅力を身近に感じてもらうための企画「蜜蜂サミット」などのイベントも開催されています。ぜひホームぺージを覗いてみて下さい。

海外でお騒がせ

 2019年カナダのバンクーバー島にあるナナイモという町でオオスズメバチが見つかりました。また同時期に、アメリカ合衆国のワシントン州でも、オオスズメバチが見つかっています。ブリティッシュコロンビア州を中心に、オオスズメバチの巣の発見事例は急速に増加中です。遺伝子解析の結果、日本と韓国から侵入していることがわかっています。

 また日本からニュージーランドに侵入したと考えられるフタモンアシナガバチも、遺伝子解析中とのことです。

おわりに

 ハチも子どものときは苦手でしたが、昆虫のことを研究していると「生物多様性」の重要性が解明されていくので、彼らとともに地球で暮らしていなかければならないとわかってきます。

 彼らがいなければ、農作物はおろか植物の繁殖そのものが成立しなくなり、緑の地球は維持されません。光合成によって酸素を生み出さなければ、我々人間が生きていけません。

 生物多様性は、世界で損なわれつつあり、ハチの生息数や多様性を減少しています。また「ミツバチ郡崩壊症候群」や、時期によってはハチミツを蓄えられないことによる巣の崩壊など、巣を維持できない状況も増えています。

 本書を通じ、多様なハチの生活を垣間見ていただくことで、生物多様性の重要性にまで思いを巡らせてほしいと思っています。

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