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目次
書籍情報
データ活用で災害リスクを減らせ!
発刊 2023年7月24日
ISBN 978-4-274-23080-6
総ページ数 173p
稲田修一
総務省近畿総合通信局長、大臣官房審議官などを歴任、モバイル、セキュリティ、情報流通などの政策立案や技術開発・標準化業務に従事。東京大学先端科学技術研究センター特任教授、IoT/データ活用になるビジネス確信や価値創造について研究。一般社団方針情報通信技術委員会事務局長、標準化のマネジメント業務に従事。2019年より早稲田ファイ学研究センター教授。そのほか現在、総務省「異能 vation」プログラム評価委員、地区防災計画学会最高顧問、スマートIoT推進フォーラムIoT価値創造推進チームリーダーなどを兼職。
- プロローグ
- 2025年9月X日、超大型台風の襲来
- もし災害がはっせいしたら・・・をシミュレーションする
- 望ましい未来の姿から対応を考える
- 迅速で正確な気象予報を目指せ
- 年々強まる雨
- 気象観測データ
- 数値予報モデル
- 気象予報の精度向上を図る
- 海洋内部の熱エネルギー量
- 洪水被害を減らせ
- 年々高まる洪水リスク
- 流域治水への転換
- 田んぼダム
- 洪水リスクの可視化
- 河川情報の提供
- 洪水発生の予測
- 洪水発生予測の早期化と制度向上に挑む
- 洪水シミュレーション
- 未来の洪水被害防止
- 土砂災害被害を減らせ
- 年々高まる土砂災害リスク
- 土砂災害リスクの可視化
- 土砂災害の予測
- 土砂災害予測の早期化と精度向上に挑む
- 土砂災害被害を減らす
- 地震被害を減らせ
- 地震予知は困難
- 地震と津波の発生メカニズム
- 地震・津波の観測
- 地震情報の配信
- 津波予報
- 津波予報の精度向上を図る
- 地震リスクの可視化
- 地震被害を減らす
- 地震被害を推定せよ
- 地震被害の推定
- 個々の建物被害の推定
- 被害状況を迅速に知れ
- 被害業況の把握
- ドローンの活用
- スマートフォンアプリやSNSなどの活用
- 望ましい避難を実現せよ
- 避難情報
- なぜ避難しないのか
- 避難行動の現実に向けて
- 想定外の事態への対応
- 国や自治体の計画を知れ
- 防災計画の役割
- 防災基本計画
- 東京都地域防災計画
- 東京都足立区地域防災計画
- 自分たちで防災計画をつくれ
- 地区防災計画制度
- 国などの支援作成の校用
- 実際に計画をつくる
- 地区防災計画の例
- 住民主体の防災活動を推進しよう
はじめに
災害対応に大きく貢献する技術革新が起こりつつあります。今後、さまざまなデータを活用した災害リスクの評価が進展するでしょう。洪水、土砂災害、高潮、津波などのハザードマップの作成・公開も進んでいます。
過去のデータをAIで解析した災害予報がより正確になり、スマートフォンを活用した避難誘導システムができて、救助支援のドローンが活躍するといった未来が期待されています。また、ソフトウェア的な対策にも注目が集まっているようです。
それらを有効に活用することが、コロナ禍や人口減少などの負の要素に打ち勝ち、より的確な災害対応を実現するうえで不可欠です。
洪水発生予測の早期化と精度向上に挑む
センサやカメラの発展で、多くの地点からたくさんの水位データを収集することができています。すでに危機管理型水位計など河川の水位を計測する安価なセンサが利用されているのです。これにより、リアルタイムで状況を把握することも可能になっています。
河川の水位予想は、数時間先の予測が限界とされてきましたが、今後、最新のAIとモデルの改善により24時間以上先まで予測はできるようになるだろうと期待がもてるのです。
予測雨量から河川の予測水位を測るモデルでは、現時点(2023年7月ごろ)で、10分ごとに6時間先までの予測水位を随時算出できます。
いろいろな河川水位を予測するデータを活用することで、避難指示を出すタイミングや対象地区などの意思決定を迅速化・正確化することができると期待されているのです。データが蓄積されてくれば、正確な予測が可能となり、AIの出番が増えるでしょう。
地震リスク可視化
地震の発生を予知することは困難です。しかし、地震のリスクを示すことはできます。
地震調査研究推進本部の地道な努力により、リスクを示す地震動予測地図の公表がされるようになりました。防災科学技術研究所の「地下ハザードステーション(JーSHIS:Japan Seismic Hazard Information Station)」サイトで公開されています。今後30年以内に各地点が震度6以上の揺れに見舞われる確率などを調べられるのです。
このサイトでは他にも、地震被害マップ、液状化マップ、地盤被害マップ、建物被害マップ、火災被害マップなどJ-SHISにない情報を国土交通省の「わがまちハザードマップ」で見ることができます。こちらは、データを整備し公開しているのは一部の地方自治体にとどまっており、データベースの整備は道半場です。
ドローンの活用
被害情報を収集に苦労しますが、この仕組みが従来と大きく変わりつつあります。
ドローンは、風が強いと飛行が困難になる場合があり、長時間飛行が難しく、通信状況を踏まえた運用などの制約はあるものの、運行経費が格段に少ないのが利点です。徐々に利用が広がっています。
日常的にも使えて災害時の対応にも役立てることができるのです。実際に長野県伊那市は買い物難民を救済するために、注文した商品の配送をドローンにしています。山林、田畑などの見回りを兼ねての運用です。日常的に使えるシステムで防災時にも活用するのが災害対策の基本となっています。
地方公共団体と情報を共有する仕組みをつくり、ドローンを操作できる人や団体などと平常時から連絡がとれる体制を構築することが不可欠です。災害時を状況を想定した訓練も必要でしょう。
ドローン活用を支援するシステムはいくつかあります。ドローンのパイロットと現地スタッフの位置情報などを地図上でリアルタイムに共有することを可能にするサービスなどがあげられます。
ドローンの眼と地図情報を組み合わせることで、広範囲の状況が正確に把握できます。本部と現場のコミュニケーションが円滑になるのです。
住民主体の防災活動を推進しよう
地区防災計画学会は、一般の学界とは異なり、多くの地域コミュニティ空民がさんかされており、産学官民からなるユニークな組織です。
同学会は、地域住民・事業者主体の防災活動を推進していくため、年3回程度、地区防災計画の専門誌『C+Bousai』を発行しています。Cには市民や会社といった頭文字の意味が込められているようです。
防災活動を地域住民、事業者、行政、ボランティア、NPOなど多様な主体が一体となって取り組みことで、より良い街づくりにつなげることを示しています。
noteやFacebookにページを解説して、SNSでの活動も積極的に行っています。
おわりに
市街分野ではさまざまなデータ活用が進んでいます。1984年の世田谷局ケーブル火災、1995年の阪神・淡路大震災、2011年の東日本大震災などに行政の立場からかかわりました。情報通信の観点からずっとフォローしていたからです。そして、現在は地区防災計画学会として、研究者の立場で災害と関わっています。
ハザードマップをはじめ、さまざまな情報が掲載されるようになり、それらを体系的にまとめる必要性が生じています。データ活用という新しいツールの本質的な役割に関する理解が進み、世の中におけるデータリテラシーの向上に役立つのです。1人ひとりの要望に個別に答える情報提供を可能にする技術開発も着実に進んでいます。
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