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目次
はじめに
科学的に「正しい答え」を出す研究はとても素晴らしく、感銘を受けるものもたくさんあります。けれど、生々しい現実に置き換えたときに「そういうことじゃないんだ」というのを感じたのです。
スマートフォンがある今、私の眼前には「武器」があり、戦術や戦略があります。それらの武器でなぎ倒されたあとに残るのは、一筋縄で解決できない組織や壁や政治、文化、慣習などでがんじがらめになった「都合の悪い問題」ばかりです。
見えない問題、向き合うのが難しい問題、技術で一方的に解決ができない問題である「適応課題」をいかに解くか―それが、本書でお伝えする「対話」です。
書籍情報
他者と働く
―「わかりあえなさ」から始める組織論
第1刷 2019年10月4日
発行者 佐々木紀彦
発行 (株)ニューズピックス
装幀 川添英昭
本文DTP 朝日メディアインターナショナル
印刷・製本 中央精版印刷(株)
営業 岡本小夜
編集 中島洋一
事務 中野薫
イラスト 玉井真由子(MORNING GARDEN inc.)
校正 鷗来堂
本文デザイン 田中正人(MORNING GARDEN inc.)
ISBN 978-4-910063-01-0
総ページ数 197p
宇田川元一
経営学者。埼玉大学経済経営系大学院准教授。
ニューズピックス
- はじめに
- 第1章 組織の厄介な問題は「合理的」に起きている
- 兄弟経営者の対話「兄は経営者にふさわしいのか?」
- 道具としての関係性からいかに脱却するか
- 一方的に解決できない4タイプの「適応課題」
- 経営危機に瀕したスターバックスの変革
- 誰しもが持つ「ナラティヴ」とは何か
- [コラム]語りと物語とナラティヴ・アプローチ
- 第2章 ナラティヴの溝を渡るための4つのプロセス
- 「溝に橋を架ける」ための4つのプロセス
- 対話のプロセス1.準備「溝に気づく」
- 対話のプロセス2.観察「溝の向こうを眺める」
- 対話のプロセス3.解釈「溝を渡り橋を設計する」
- 対話のプロセス4.介入「溝に橋を架ける」
- 「上司が無能だからMBAに来た」というナラティヴ
- よい観察は発見の連続である
- よい解釈には「相棒」を求めよ
- 曖昧な問題をいかに明確な問題に捉え直すか
- 介入というアクションが、次の観察の入り口でもある
- 対話のプロセスは繰り返す
- 私とは「私と私の環境」である
- 対話を通して「反脆弱的」な組織
- [コラム]新たな現実を作ることが最高の批判である
- 第3章 実践1.総論賛成・各論反対の溝に挑む
- 総論賛成、各論反対を生き延びる
- 共通の成果を設定する
- 検証が二巡目の対話へつながる鍵となる
- ナラティヴに招き入れる
- [コラム]自身のナラティヴの偏りと向き合うこと
- 第4章 実践2.正論の届かない溝に挑む
- 上司から部下へと連鎖する適応課題
- フラットになれる場を設定する
- 弱い立場ゆえの「正義のナラティヴ」に陥らない
- つながりの再構築で孤立を解消する
- [コラム]インテルはなぜ戦略転換できたのか
- 第5章 実践3.権力が生み出す溝に挑む
- 現場を経営戦略を実行するための道具扱いしない
- 仕事のナラティヴの中で主人公になるには
- 権力の作用を自覚しないとよい観察はできない
- マネジメントスタイルを組織のナラティヴに合わせて変える
- 回避型における対話のポイント
- [コラム]対立から対話へ
- 第6章 対話を阻む5つの罠
- 気づくと迎合になっている
- 相手への押しつけになっている
- 相手と馴れ合いになる
- 他の集団から孤立する
- 結果が出ずに徒労感に支配される
- [コラム]落語とナラティヴ
- 第7章 ナラティヴの限界の先にあるもの
- ナラティヴ・アプローチの医療の研究から
- 自分を助けるということ
- おわりに 父について、あるいは私たちについて
- 謝辞
- 参考文献
対話のプロセスは繰り返す
UnsplashのKenny Eliasonが撮影した写真
準備段階が不足したまま状況をうまく観察することができません。解釈がずれてしまっていると、介入しても効果がない場合があります。
準備→観察→解釈→介入のプロセスを回すことで、自然と新しい組織内の関係性が構築されていくとこが望ましいのです。
相手にとっても自分にとっても、お互いが意味のある存在として、物事に取り組める関係性に変化させなければなりません。
今までのように上からものを言ってこなくなった、今までよりもじぶんたちの声を反映してくれるようになった、そういう変化が実感できた大きな世界といるのではないでしょうか。
フラットになれる場を設定する
「勉強会」というフラットな場を設けた企業では、参加していた部長に新しいサービスを展開してはどうかと掛け合うことが多くなったそうです。
勉強会の開催は、観察をするという観点から有効な方法であると言えるでしょう。
実際は、さまざまな理由をつけて参加しなかった上司がいるようです。参加しなかった上司は、部下が何に対してわからないのか、どんな関心があるのか、どんなリスクを感じているか、人間関係を築くポイントを探ることができていません。この上司と掛け合うことには失敗したと言えるでしょう。
対話のプロセスを繰り返すと、部長との面談という介入を介して、業務改善の実施へとこぎつけることもできます。対話のプロセスを回すためにも、数回の勉強会は有効であったと言えるでしょう。
回避型における対話のポイント
Image by Vicki Hamilton from Pixabay
権力を振りかざし、人を従わるような「リーダー」は、それ以外の方法がわかりません。上に立つ人間が鈍感であり気がつくことはよりむずかしいのだということを心に留めておく必要があるでしょう。
従業員には「リーダーシップ」の不快さがどこか残されていることも知っています。部下を「正しい言葉」で平手打ちしたときの不快感、上に立つ人間なのだから自分は特別であるという違和感、理論的に正しくても私たちに常に語りかけてくるものです。
不快感、違和感に向き合い、人間関係を育てていくことで、道が見えてきるはずです。
私たちがわかっていないことに目を向けることで、不安を持っていることを認めると信頼が得られるでしょう。
上に立つ人には対話に挑んでいただきたい。
対話の罠
作者: illustB(AI)
罠ポイント
①気づくと迎合になっている
②相手への押しつけになっている
③相手と馴れ合いになる
④他の集団から孤立する
⑤結果が出ずに徒労感に支配される
対話が迎合(ないし忖度)になってしまうと、相手に隷属したままになってしまい、問題が渡ったまま帰ってこないのです。
また、押しつけになってしまうと、権力が対話を妨げて関係性が変わってしまいます。相互に情報を交換することができないでしょう。
慣れ合って、変革が滞ってしまうことも問題です。限られたチーム内で行っていると、これも変革が起きないと思います。
今いる世界で精一杯努力することは大切ですが、世界の全てではありません。相手とのコミュニケーションに疲れ果てるほど躍起なる必要はないのです。「私だけ努力している」とか「面倒だから言うとおりにしておこう」という思考に支配されてしまうのは、かなりのリスクとなっています。
与えることに喜びがあると良く言われます。哲学者エーリッヒ・フロムの言葉で言うならば、他者に与える自由があることに目をむけておきたいものです。
おわりに
父が亡くなったときには、父がいた組織の人間に恨みを持ったりもしたが、彼らは悪人ではないのです。
そのことに気づき、弱い人間が生きていけるように、よりよい関係性を築いていけるかについて、父にそのミッションを託されたと思っています。
感想
サイト管理人
組織の中でやっていきたいなら、共通の話題を喋れる必要もあるかもしれないし、指摘されたことを受け入れてミスをしないように気をつける必要もあります。
教えている新人が端的な返事しかせず、わからないこと聞かず、同じミスを繰り返すとあれば、ヤバい奴だと思って周囲に注意を促すためにも、悪者を演じて指摘することもあるでしょう。非常に面倒です。常に怒っている上司ならともかくとして、そうでないなら怒られている人の方がヤバイ可能性が高いと思います。
「なるほど」「わかりました」「はい」「ありがとうございます」と言われて上司が思うのは、「どこが解っていなのだろうか」とか「間違って解釈していないだろうか」ということです。
人は変わらないことのほうが多いので、部下を理解することに努めるとともに、適度に逃げることも忘れないようにしましょう。
コミュニケーションを主題とする本で、耳障りの良い言葉を選んでいるような書籍ではありません。答えのある本ではありませんが、ちゃんとした仕事中の他者の向きあい方について学べるのではないでしょうか。
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