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※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
目次
はじめに
アメリカのメジャースタジオが製作する娯楽映画、いわゆる「ハリウッド映画」を慣習的に見てきた人なら、2020年代に入ってから日本で劇場公開される作品の本数が極端に減少していることに気づいているでしょう。
映画がストリーミング戦争の波に巻き込まれるのは時間の問題でした。専攻するネットフリックスやアマゾンプライムビデオ、Huluに続いて、ディズニー+、HBOマックス、アップルTVプラスを初めとするストリーミングサービスが出そろったのが2020年です。
現状、大手ストリーミングサービスによって配信されるオリジナル映画や、テレビシリーズがそうした昨比にゃ作家の新たな受け皿となっているわけですが、メジャースタジオ作品のように政策予算の中に宣伝費が組み込まれて、作品ごとに世界中で周到なpromotionがおこなわれえることがないので、賞レースなどに絡めない作品は能動的な一部の視聴者にしか届きません。
結果として、シリーズものばかりとなり、観客を呼べるスターたちが主演している作品が中心となっています。
ソニー・ピクチャーズやパラマウント・ピクチャーズは、自社のストリーミングサービスを持つことはないと公言しています。スパイダーマンやトップガンのヒットを産みだした背景は、映画館でしかみられないというものです。
6~7週間後には上映作品のほぼ全ての作品が配信されています、映画で公開して一時収入を得るというビジネスモデルは、もはや自明のものではありません。
書籍情報
ハリウッド映画の終焉
第1刷 2023年6月21日
発行者 樋口尚也
発行 (株)集英社
ブックデザイン
装幀 原研哉
印刷 大日本印刷(株)、凸版印刷(株)
製本 加藤製本(株)
図版レイアウト MOTHER
ISBN 978-4-08-721267-9
総ページ数 237p
宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。
集英社新書
ラスト・ナイト・イン・ソーホー
エドガー・ライトは、『ベイビー・ドライバー』がヒットするまでの10年間報われなかった監督です。『アントマン』を監督することになっていたけれど、降板したことも有名です。ゆえに『アントマン』は比較的、悪ふざけ少なめとなっています。
2021年に『ラスト・ナイト・イン・ソーホー』を公開します。60年代のロンドン・ソーホー地区のけばけばしさといかがわしさの再現性、無類の60s映画マニアを納得させるデザイン、音楽も60年代のポップソングに意味を重ねています。
ライトは『ベイビー・ドライバー』『ラスト・ナイト・イン・ソーホー』によって、ハリウッドの外にいるクリエイターではなく、むしろメジャースタジオが三顧の礼で列をなす側にいる名匠の1人となりました。
『ラスト・ナイト・イン・ソーホー』にはかつて複数の男性から性的被害を受けた女性の幻影、ときが経ってなお復讐に取りつかれる女性が登場し、最後にはとってつけたようなハッピーエンドが用意されています。
エンドクレジットも印象的です。新型コロナウイルスのパンデミックによってロックダウン中の静まりかえったソーホーの町。劇場もパブもすべてシャッターを落として、ポン引きも、娼婦もいない中、ネオンだけが煌々と照らしている様子は、2020年代の映画界のようではないか。
『ジョーカー』からの転換
Image by belkacem hassani from Pixabay
『カモン カモン』(2021年)で「ストレートの白人中年男性」であるジョニーを演じているのが、あのホアキン・フェニックスです。
公開後に世界中でそのフォロワーによる犯罪行為が続発するほどの『ジョーカー』でした。フェニックスに初のアカデミー主演男優賞をもたらしたが、配給のワーナー・ブラザース・ピクチャーズからもファンからも熱望されていた続編の製作に関しては、当初では慎重な姿勢を示さなければならなくなりました。
本人も精神に負担があったようで、そのリハビリとして選んだ『カモン カモン』は2020年代において「ストレートの白人中年男性」を主人公として、いかに未来や希望を描くかというものになっています。
分かり合えない他者と対話できる日がやってくることを切実に願った作品です。
ストリーミングサービスの問題
UnsplashのGrant Daviesが撮影した写真
ディズニープラスが『ブラック・ウィンドウ』を配信公開した際にスカーレット・ヨハンソンがディズニーを訴えたのと同じ権利の問題です。ハリウッド映画、特にギャランティーの高い大物監督やスター俳優が関わった作品では、プロデューサーや監督や出演者は劇場での興行収入の歩合で成功報酬を受けとるという契約が交わされます。劇場公開と配信公開されることによってそれがダイレクトに毀損されてしまうのです。
しばらくすれば、携帯やパソコンで視聴できてしまうとなれば、映画を前提に契約している人たちにしてみたら「話が違う」となるのは当然です。
『TENET テネット』ではノーランが抗議の声を上げた。ワーナー・ブラザースの決定の前になんとか無事に劇場公開まで漕ぎ着けましたが、ノーランの今後のキャリアを根底から脅かすものだったのです。
映画業界の最も著名な映画作家や最も重要な映画スターたちは、最も偉大なスタジオのために仕事をしていると思いながら眠りについた翌朝、自分が最悪のストリーミングサービスのために仕事をしていたとこに気づくことになった。
ノーランの声明より
感想
サイト管理人
ラスト・ナイト・イン・ソーホーは芸術的な映画というホラー作品で、主人公もカワイイし、映画の大きいスクリーンで観ると感動が違うでしょう。家で臨場感タップリに大きなスクリーンでゆったりとストリーミングサービスを堪能できるなら、それに越したことはないと思います。マーベル映画のラブ&サンダーとかふざけたものでも、映画館で観ると面白いのは周りに雑多なものがなく集中できるからでしょうか。マッドマックスにしてもジョーカーにしても、映画館で観たいという映画は今後も出てくるでしょう。
ストリーミングサービスでもいいから観たい、ストリーミングサービスなら観たい、ストリーミングサービスでもう一度観たい、考えてみてもあまり両方の需要が重ならない気もしますが、配信サービスで観れないとなると映画館に足を運ぶこともあるみたいです。これは、思い違いをしていました。
映画は、どんな方向にいくのでしょうか。家で映画を観ると寝てしまうので、観たい映画があれば映画館に行きます。逆に月額で取られる金額くらいに映画を見に行くということはありません。サクッと契約できる割に、ダラダラ観る以外にはサブスクの活用頻度がないため、結構割高だと感じています。古くなって単品300円くらいで視聴できるものを、月額1000円で見放題は高すぎないかと思う。それでも、契約する人がたくさんいて、それでいて映画を配信することに異議がある俳優・監督がいるというのです。映画公開と同時配信くらい、たまにイベントとしてやってあげないと、契約している庶民としては対して使ってもいないのに結構な月額払ってることに納得しないと思います。
シリーズものでいっぱいの動画サービスというのもつまらないですし、期間限定でプレミアム配信というような映画コンテンツでも作られたら良いのになとも思います。
興行収入の歩合で成功報酬+αを受け取りたい俳優・監督と、配信サービスを豊かにしたい企業とで対立はあるでしょう。今回は、俳優・監督といった作品を作成する人側の話です。便利な時代になりつつあるなかで、従来の在り方を擁護するような内容でした。
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