※ 毎朝、5分以内で読める書籍の紹介記事を公開します。
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
目次
はじめに
この料理店は注文を取るホールスタッフは、みんな認知症の状態にある人です。
この店では間違いがいくつも起こりますが、お客様のなかで怒る人は誰一人いません。
むしろ、間違われてラッキー、間違われなくて残念という声を聴きます。
間違えることを受け入れて、間違えることを一緒に楽しみます。
書籍情報
注文をまちがる料理店
のつくりかた
第1刷 2017年12月28日
発行者 宮下研一
発行 (株)方丈社
装丁 鈴木千佳子
写真 森嶋夕貴
印刷 中央精版印刷(株)
取材協力 鈴木靖子
ロゴデザイン 注文をまちがえる料理店実行委員会 (あっかんべーのロゴ)
ISBN 978-4-908925-21-4
総ページ数 355p
小国士郎
普段はテレビ局ディレクター。スマホアプリの企画や「注文をまちがえる料理店」などを手掛け、「あいつの仕事ってなんだっけ?」と言われるようにまでなりました。
方丈社
注文をまちがえる料理店
「注文をまちがえるなんて、変なレストランだな」
きっとあなたはそう思うでしょう。
私たちのホールで働く従業員は、
みんな認知症の方々です。
ときどき注文をまちがえるかもしれないことを、
どうかご承知ください。
そのかわり、
どのメニューもここでしか味わえない、
特別においしいものだけをそろえました。
「こっちもおいしそうだし、ま、いっか」
そんなあなたの一言が聞けたら。
そしてそのおおらかな気分が、
日本中に広がることを心から願っています。
※アレルギーについて心配のある方はご相談ください。
注文をまちがえる料理店より
さまざまなお客様
Image by StockSnap from Pixabay
若い夫婦がいらっしゃいました。3連休の初日に、2人で楽しくランチという軽い気持ちで来たというのです。
認知症という字も使わずに「注文をまちがえる料理店」という名前にしています。チャーミングなロゴまで用意しました。お洒落な内装に、おいしい料理を提供します。
だったら、デート気分のカップルに選ばれるような場所でありたいのです。
外で並ばれてるお客様がいました。しかし、今日の当日席は発売後1分で売り切れてしまいます。残念そうにするご婦人に声をかけてみました。
「2年前に主人を亡くして以来、外でごはんを食べる気持ちになれないくて、ずっとふさぎ込んでいる状態です」
話を聞いた後、受付スタッフに簡単に事情を説明し、1席分、どうしても予約を入れたいと伝えました。
「あしたの午後2時の回に予約を入れられます。いらっしゃいませんか?」
「いいのでしょうか?」困惑した表情を浮かべていましたが、後日、私たちはとても大切なお客様を迎えることになったのです。
スタッフの笑顔が消える
作者: りんく
ホールスタッフとして頑張っていたシズさんが、急に表情をこわばらせ、ホールに立ちたくないと言いました。
見慣れない人たちに、家の鍵が見つからない、店内にいるのはヤクザではないかなど、どんどん不安になっていきます。
福祉サポートスタッフにいわせると、普段と同じで、普通のことなのだそうです。天気が悪かったり、ちょっとでも記憶が欠けていると、急に混乱することがあります。
大雨のなが街に歩き出すシズさんに、介護スタッフが傾聴をしながら寄り添います。
順風満帆で、あまりにも雰囲気がいいので忘れかけていましたが、私たちは認知症の状態にある方と一緒に、仕事をしているのです。
シズさんは、店内を出たり入ったりを繰り返します。そう、これが普通のことなのです。
もうすぐ閉店です
UnsplashのTim Mossholderが撮影した写真
外食サービス業のプロ木村さんは「やりすぎだ」と言われて、ずっと考えてきたのだといいます。
「今回、本当に腹落ちしました。きちんと仕組みをつくっていけば、私らが声をかけなくても、おばあさんたちは本当にしっかりやってくれます。そこを信じきれていなかったのです」
思い返してみれば、今回、木村さんはほとんど前に出ることなく、完全に裏方に徹していました。
ホールスタッフがお客様に水をかけてしまったときは、タオルを渡して、ていねいにおわびを重ねていました。ホールスタッフが傷つかないように裏でこっそりフォローを入れていたのです。
外食サービスのプロだからこそ、つい手を出したくなったり、もどかしいと思う場合はたくさんあったはずです。
だからこそ、ホールスタッフの担々麺の説明に、こんなに喜んでいるのだと感じました。
おわりに
「間違えちゃったけれど、ま、いいか」
そういいあえることって、意外と人が求めていることなのかもしれません。
海外メディアが、日本に行ったら認知症の人が働くレストランがあって間違えがあっても「ま、いいか」と笑い合うんだ。あたたかいよね。…そんな反応をされるといいなと思いました。
「COOL JAPAN」も、もちろん大事だとおもうのですが、これから先は「WARM JAPAN」のようなことも大きな価値になっていくのではないかなと思うのです。
感想
サイト管理人
「あんた、人形を盗んだでしょう」「もう、こんなとこいられない、帰りたい」
また、始まったかと、介護士として働いていたときは対応していました。誰も価値を生みそうにない妙なクマのぬいぐるみを盗まないし、帰りたいっていってもあなたの家だし、とも思うこともありました。
しかし、忘れているのではなく、記憶が欠ける(つまりない)のだから、思い出せないし、どこからの記憶のことをいっているのか分かりません。最近の記憶はとどめておくことができないので、過去のどの時点で止まっているのかは前後します。
一緒に探すふりをしながら、なんとなく隠しそうな場所を探してみると、トイレに用意されているリハパンのカゴの中に隠してありました。隠した記憶を無くしてしまったのでしょう。
見知らぬ人がいると混乱して「カギがない、財布がない」と始まるのは普通のことです。近所の人に「あいつが盗んだ」と言いふらしたり、迷子になりそうなときに家まで案内してもらったりと、意外に周りに迷惑をかけてしまうのが、この病気の厄介なところではあります。けれど、口八丁だったり、欠けていない発達している脳の能力を使って、ホールスタッフとして働けたりとできること多いのです。
すぐに記憶を無くしてしまうけれども、社会欲求や認証欲求はあるようで、買い物したり、疑似的に働いたり、イベントしたりと、カラダを動かすともの凄い笑顔をみせます。
今は芸術家と一緒に作品づくりができる施設や、介護度が低い人で農作業ができる施設、保育園と交流のある施設、変わったような施設が出てきました。市町村の役所で相談して、介護度などを取得し、比較的楽しく過ごせそうな施設を探してみてもいいのではないでしょうか。
本人の性格の相性と親族の許可があれば、隣の喫茶店で働ける施設なんてのもあってもいいかなと、思える書籍でした。
下にリンクを貼っておきますので、本書の購入を検討してみて下さい。
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紙
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