忍者の誕生

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※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

はじめに

 忍者はいったい何者なのか。基本は史書や忍術書という史料から接近するべきでしょう。しかし、忍者の活動は記録が少なく実際に知ることが難しいのです。また、史実よりも想像によって作られた部分があります。

 忍者は、その強靭な精神が関心を引いているようです。主人に対して忠実さを示す一方で、江戸時代的な道徳に反する行為を厭わず、不思議な術をつかい、ひそかに任務を果たすことから、その反社会的、脱俗的な存在とみなされ、興味を持たれている人も多いでしょう。

 忍者研究では、忍びの実態、忍術書の内容を明らかにして世界に発信していくことがふかけつです。けれど、同時に世界の忍者文化の独創性を許容し、その価値を認めていく態度をとりたいと思います。

 くノ一と呼ばれる女性の忍びは史実には存在しません。しかし、アニメ・漫画・ゲーム・小説・映画などで活躍するくノ一がいない世界は考えられず、尊重すべきなのです。

書籍情報

タイトル

忍者の誕生

第1刷 2017年3月27日

編者 吉丸雄哉、山田雄司

発行者 池嶋洋次

発行 勉誠出版(株)

装丁 荻原睦(志岐デザイン事務所)

組版 一企画

印刷・製本 (株)太平印刷社

ISBN978-4-585-22151-7

総ページ数 305p

出版

勉誠出版(株)

兵法書の中の忍術

 南北朝時代以降になると、中国から伝来した日本独自の兵法書が流行しました。

 兵法書には、出陣の際の作法とともに、「闇夜明眼ノ秘術」「隠身ノ秘術」「飛行自在霧鞭之大事」「兵法九字ノ大事」といった修験道的要素を伴っていることが目につきます。

 個人的な戦い方について記しており、真言が記されたり記しが描かれるなど呪術性が強いものです。当時武力集団をかかえた大寺院において編纂され、強訴の際に用いられたものでしょう。

 呪術性の強い中世的世界を反映しており、また武力を有した寺院に伝えられたため、宗教性が強かったようです。

 印を結んで呪文を唱えるという忍者のイメージは、何の根拠もなく創造されたものではありません。現代人から見れば信じられないことではありますが、中世においてはある程度信じられて行われていたのです。

忍者の認識

 1592~98年壬辰戦争の際に韓半島で狭義の忍者が活躍したことが文献に記載されています。17世紀前に成立した小瀬甫庵の『太閤記』には明確な忍者の活躍が描かれているのです。その後の近世日本の文献群においては、忍者に関する記述があいまいになっていきます。

 『太閤記』を継承する林羅山・守勝父子の『豊臣秀吉譜』には、「伊賀の忍び」という表現が「物見・諜・斥候」という言葉に変わっていて、スパイを意味する認識にとらえられます。言葉づかいとしては、『太閤記』よりも忍者の認識があいまいなのです。

くノ一

 「くノ一」が女を指すのは、「く」「ノ」「一」を合わせると「女」になるからという説があります。また、「九ノ一」で婦女子という隠語を指すと様式并其語集にあります。いずれも根拠はありません。

 用例で古いものには『枕草子』二九九段を念頭におく句で、「くノ一」は清少納言を指します。諺語辞典の『譬喩尽』には「くノ一は女の字義」という説明があります。

 いずれにしても「くノ一」は女を指す隠語であり、女忍者の意味はありません。

 「忍び」で「くノ一」といえば、『万川集海』巻八の「くノ一の術」が有名です。「くノ一」が忍者と結びついたのもここからでしょう。

 くノ一の術と云は三字を一字としたる者を忍に入るを云也。たぢからは入難く思の時、此術を可用也。

 男では潜入しにくい際に、かわりに潜入する術を「くノ一の術」というようです。

 ちなみに「隠蓑の術」は、「くノ一」が奥方に宿に預けてある木櫃を取り寄せるといって、二重底になった木櫃をつかって人を邸内に潜入させる術です。

 「くノ一」=「女」をつかった術であって、女忍者がいたという意味では、残念ながらない。

NARUTOにおける忍者と動物

 江戸の文芸に登場する妖術使いは、動物の力を借りてさまざな妖術を使います。『白縫譚』では、武家に恨みを抱く蜘蛛の精霊が、その武家に父を殺された娘に呼びかけて復讐心をあおり、妖術を伝授します。『善知鳥安方忠義伝』では、地上を魔界にする野望を抱いているガマの精霊が若武者に謀叛を促し、妖術を伝授します。動物が人間と対話し、人間を導き、利用しようとする構図があります。

 『NARUTO』における忍者と動物のかかわり方も、これらと通じることろがあるように思われます。動物が忍者を支配したり、動物と忍者とが対話・協働したりするのです。動物は、人間の一方的な支配下に置かれているわけではありません。動物はその力において人間より優位にあり、畏怖の対象としてとらえられています。

 江戸の文芸にあった日本古来のらしさが、動物観という視点からも『NARUTO』に見いだせると言っても良いかもしれません。

感想

サイト管理人

サイト管理人

 忍者は農民だったと知っている日本人からすると、外国人が思い描く忍者観は草です。同時に外国人の思い描く忍者が大好きだったりします。

 想像力が働くのでしょうか。かなりユニークなものになっています。動物と掛け合わせた日本文化がミュータントタートルズになってしまうのだから独特と言わざるを得ないでしょう。

 日本の漫画も古い文芸からアイデアを得ていることに気づかされました。色んなところから絞り出して、面白いものが生まれているのだなと感じています。この漫画での忍者も間違いなく日本文化でしょう。

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